世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

ヴィンセント

2015-11-06 03:59:36 | ちこりの花束

 種野は、ゴッホが精神を病んでいたと単純に見ることはできません。いくつかある彼の自画像を見ていると、その眼差しのあまりに澄んでいることに、呆然としてしまうからです。こんなに純粋な精神がこの現実の世に生きていたら、どこかできしみを起こさずにはいられないだろう。そう思います。
 この世界に埋もれている真の美しさを感じてそれを表現するためには、それ相応に澄んだ魂の持ち主でなければいけないと思う。しかし澄んだ魂の感性というのは、本質をあまりにそのままに受け入れて表現してしまうため、周囲のだれもがそれを理解できない場合が多い。その根本的なズレから起こるきしみに、精神異常とレッテルを貼るのは、私は少しアートというものの本質からずれていると思うのです。
 神さまの目から見れば、狂っているのは彼ヴィンセントではなく、真実を感じ取る感性の鈍い私たちの方かも知れないと、彼の痛々しいまでに澄んだ瞳の前で、私は思わざるを得ないのです。


(2002年11月ちこり26号、通信欄)






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