「刺青の少年」
昔彼は、ある、緑の山に囲まれた静かな河のほとりに、小さな集落を作って住む、古い民族を導いていた。
彼らは、先祖から伝えられた美しい知恵を守り、尊い神への敬意を表すための、整った儀式を行い、花に似た不思議な文字を書き、薫り高い文化を育てていた。
しかし、彼らの先祖の知恵の中には、戦うことと、奪うことについての知恵が、多くは書かれていなかったため、やがて彼らは、大量に流れ込んできた異民族たちによって、住んでいた土地を奪われ、あっけなく、滅びてしまった。彼らの村も、祭りも、文化も、先祖の知恵も、すべては消えてしまった。
希望をとりえと語る少年も、時に悲哀の風に吹かれる時がある。自分は、まちがっていなかったのか。もっと、彼らに、戦うことと、奪うことの意味を、教えておくべきではなかったか。そうすれば、彼らが、滅びることはなかったのではないか…。
少年が、いまだに、頬から刺青を消さないのは、今は滅びてしまったその民族が、忘れられないからだ。
ある、深い山の奥に、せまい洞窟がある。彼は密かに、魔法の結界をはり、誰もそこに近づけないように、その洞窟を守っている。なぜならそこには、その民族が、地上にただ一つ残した、小さな遺跡があるからだ。
その洞窟の奥には、彼らが信仰していた神の石像が鎮座しており、その壁には、先祖から伝えられた一番大切な言葉が、今はもう誰も読めない文字で、こう書いてある。
「最後にはいつも、正しいものが勝つのだ」と。

「月の世の少年」
「穴」の編に出てくる少年です。怪の地獄に落ちていく罪びとを、茫然と見守っている。
どんなに、どんなに、深く愛しても、罪びとが、答えてくれることは、少ない。本当に、少ない。強い力を持ち、正しい道を信じている彼らも、あまりの現実にさいなまれ、悲しみに濡れることもある。
どうしようもないことなんかじゃない。天使は彼に教える。自分たちのしていることは、決して無駄なんかじゃない。いつかきっと、彼らの心に、響く。何度も、何度も、繰り返し、語りかけていけば。
天使は青年の姿に戻り、泣いている少年の肩に手をかける。
君はひとりではない。いっしょにやろう。みんなで、やっていこう。
少年は涙をふき、立ち上がる。そして、次にするべきことは何かと、考え始める。
そう、まずは、落ちて行った彼の元を訪ね、状況を調べ、どうやって助けていけばいいか、考えねばならない。
それが、僕たちの仕事だ。
昔彼は、ある、緑の山に囲まれた静かな河のほとりに、小さな集落を作って住む、古い民族を導いていた。
彼らは、先祖から伝えられた美しい知恵を守り、尊い神への敬意を表すための、整った儀式を行い、花に似た不思議な文字を書き、薫り高い文化を育てていた。
しかし、彼らの先祖の知恵の中には、戦うことと、奪うことについての知恵が、多くは書かれていなかったため、やがて彼らは、大量に流れ込んできた異民族たちによって、住んでいた土地を奪われ、あっけなく、滅びてしまった。彼らの村も、祭りも、文化も、先祖の知恵も、すべては消えてしまった。
希望をとりえと語る少年も、時に悲哀の風に吹かれる時がある。自分は、まちがっていなかったのか。もっと、彼らに、戦うことと、奪うことの意味を、教えておくべきではなかったか。そうすれば、彼らが、滅びることはなかったのではないか…。
少年が、いまだに、頬から刺青を消さないのは、今は滅びてしまったその民族が、忘れられないからだ。
ある、深い山の奥に、せまい洞窟がある。彼は密かに、魔法の結界をはり、誰もそこに近づけないように、その洞窟を守っている。なぜならそこには、その民族が、地上にただ一つ残した、小さな遺跡があるからだ。
その洞窟の奥には、彼らが信仰していた神の石像が鎮座しており、その壁には、先祖から伝えられた一番大切な言葉が、今はもう誰も読めない文字で、こう書いてある。
「最後にはいつも、正しいものが勝つのだ」と。

「月の世の少年」
「穴」の編に出てくる少年です。怪の地獄に落ちていく罪びとを、茫然と見守っている。
どんなに、どんなに、深く愛しても、罪びとが、答えてくれることは、少ない。本当に、少ない。強い力を持ち、正しい道を信じている彼らも、あまりの現実にさいなまれ、悲しみに濡れることもある。
どうしようもないことなんかじゃない。天使は彼に教える。自分たちのしていることは、決して無駄なんかじゃない。いつかきっと、彼らの心に、響く。何度も、何度も、繰り返し、語りかけていけば。
天使は青年の姿に戻り、泣いている少年の肩に手をかける。
君はひとりではない。いっしょにやろう。みんなで、やっていこう。
少年は涙をふき、立ち上がる。そして、次にするべきことは何かと、考え始める。
そう、まずは、落ちて行った彼の元を訪ね、状況を調べ、どうやって助けていけばいいか、考えねばならない。
それが、僕たちの仕事だ。