ビーストのささやきが弱くなっています。だんだんと小さくなっていきます。
彼らは、この世界の美しいもの、よいものに嫉妬し、すべてを侮辱してきたそうです。あらゆるものが妬ましく、欲しく、すべてを自分のものにしたかったといいます。
たとえば、ある美しいことをしている人々がいて、彼らのしていることが、大変よい方向に向かいだすと、ビーストはとたんに嫉妬し、彼らにとりついて、彼らの心にささやき、疑いや嫉妬をふきこみ、事実のねつ造をやります。そして、せっかくの彼らの美しい心を壊し、彼らの人生を、無駄にしてしまうのです。
そして、彼らを滅ぼしたあと、ビーストは、他人の皮を盗んで、自分たちが化けた人間に、彼らがしていた仕事を与えるのです。そして、ビーストは、美しい人たちがしていた仕事を、ぜんぶ、盗もうとするのです。すべて、いいもの、美しいものは、自分のものにしたかったからだと。そうして、この世界は、だんだんと嘘に変わっていったといいます。
本当につらいのは、そのせいで、どんどん世界がおかしくなっていったのに、ビーストが化けていた人間たちは、何もしなかったということです。嘘でその場をしのぎ、誰かに責任をおしつけ、自分がしでかした失敗は、どんなことをしてでも隠し通す。そのためには、人の命を奪うことも軽々とやってしまう。すべては、自分たちのうそを、本当にするために、やったことだといいます。
ビーストは、この世界を、嘘だけの世界にするために、なんでもやったそうです。それはそれは、ひどいことをやったそうです。そしてそれを隠すためにも、あらゆることをやったそうです。あまりにひどいこともやったそうです。
愛を侮辱し、真実を嘘にし、正義を低能児にするために、彼らのしたことは、馬鹿らしいほど、巧妙で、正確で、恐ろしいほど勤勉で、愚かでした。
それらのことが、今、いっぺんに暴かれ、嘘という嘘が、真実に戻ろうとする、反作用の波の中で、彼らは、存在そのものを、抹消されようとしているそうです。なぜなら、彼らは、他者から、自己存在そのものを、盗んだからです。他人から、存在すべてを盗み、それによって、自分の欲望をすべてかなえようとし、世界をゆがませ、滅ぼしたからです。
悔い改めの機会を、神から千回も与えられましたが、彼らは最後まで、NOといいました。そこで、ほぼ、判決が決まり、その結末を眼前にして、彼らはいまだに驚きあわて、どうしたらいいんだとうろたえています。
なんとかしなくては、ぜんぶ戻ってくるんだと。どうにかして、だれかに押し付けて、払わせねば、みんな自分のところにくるんだと。
彼らはいまだに、そう言います。
人生を抹消されるということが、どういうことであるか。それは、すべて、ないことになるということです。この世界の、あらゆるものとのきずなが、消え去り、だれでもないものになり、いながらにいないという事実のみが立ちふさがるというものです。それは、それを、眼前にしたものでないとわからないそうです。
突然、世界が、自分とまったく無縁のものとなるそうです。まるで、自分は、まったく違うものだと。ここは、自分の世界ではないと、慄然としてわかるそうです。
そうして、ビーストは、消えていくそうです。それから、どこへ行くのかは、決して、語ろうとはしません。ただ、行くとだけいいます。