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世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

すなおな気持ちで

2015-04-17 06:40:01 | 瑠璃の小部屋

やさしくしてあげたいのに
それができないのは
なんだかおかしい
ぼくがひとに やさしくしようとすると
ひとはぼくを にらんで
何が欲しいんだって聞くんだよ
何も欲しくなんかないのに

やさしくしたいきもちは
ほんとうのものなのに
誰も信じてはくれないんだ
そんなもの この世のどこにもないんだって
人はいうんだ

うちひしがれて 泣いている
小さな おばあさんを
やさしく だきしめて
髪をすいてあげられないのは
何だか つらい
仕事だとか お金だとかの
いいわけがないと
人にやさしくできないのは
どこかが おかしい

世界を作っている
大きな鳩時計の ネジが
どこか 狂っているんだ
それで今は
誰も 誰かに
本当の気持ちでやさしくすることが
できないんだよ

すなおな気持ちで 生きていくことが
当たり前になったら
やってあげたかったのに
やれなかったことを
いっぱいするんだ

うちひしがれている あの人のところに
鳥のように 飛んで行って
愛してるよって 叫ぶんだ
愛してるよって 愛してるよって
何度も言うんだ




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鳥音渡第3詩集・小鳥の歌

2015-04-16 06:38:16 | 瑠璃の小部屋

これは、鳥音渡の死後、両親の手によって出版されたという詩集である。友人も協力してくれて、よい詩集ができた。現実のかのじょは、詩を書いても物語を書いても、誰も認めてはくれなかったが、鳥音渡は両親や友人に愛されて、自分の詩集を出すことができ、社会的にも認められた。

かのじょは人を愛していたが、人はかのじょを愛さなかった。両親の愛にもめぐまれず、友人もほとんどいなかったが、かのじょ自身はそれをあまり重く考えないようにしていた。人間よりも、植物の方が、気持ちが安心した。彼らは決して嘘はつかないからだ。明るい愛で生きるための強さをくれる。人間はいつも、嘘を抱えて心を隠しているから、用が無い限り、あまり近寄っていかなかった。

かのじょには重い使命があった。それを果たすためにかのじょはさまざまに努力していた。人間には決してそんな自分の心はわからない。わかってくれるのは、遠くにいる仲間だけだろう。

鳥音渡は、そんなかのじょの小さな夢を表現してくれた、小鳥のように小さな詩人である。愛する仲間と、ただの人間としてともにこの世で生きていくことができたら、どんなに幸せだろうと。

人間さまに言いたいのは、重い使命を背負わずに、地上で自分の幸せのためだけに生きていける人間存在がどんなに楽か、自分では全く分かっていないということだよ。

明日からまた、計8編を、1編ずつ発表していく。




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波の音

2015-04-15 06:52:23 | 瑠璃の小部屋

かすかにも 聞こゆる 波の音よ
けふありしことの つたなき魂の苦しみを
あらひきよめたまへ
耳の奥の貝に染む そのささやきの
きよらかな愛撫にて
ひとのかなしみを 甘き夢につなぎ
やすらかな魂のしとねに いざなひたまへ

愛を紡ぐ 細き神の指の
涙をためて閉じたる 人のまぶたに触れ
そのかなしみを 風の衣にかはかし
ひととき 忘却の小部屋に眠らせたまへ
今はただ 忘れさせたまへ

新しき 日ののぼる朝には
その荷の苦しみ ちひさくもやはらぎ
いきてゆくものの 清きまなざしに
開きたる窓辺にふく 青き風に 
心やすらはむ

そのひとときぞ
人の世に木漏れ日のごとく散る 愛の光にあれば
われはけふもまた 生き生きて ゆかむ

かすかにも 耳の奥の ちひさき貝の
なつかしむ 波の音よ
この明るきもますぐなる緑の小道に
なれは何処より来たりしや




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夢うつつ

2015-04-14 06:46:08 | 瑠璃の小部屋

ゆめと うつつの あいだの
すきとおった とびらは
あかつきの いろに 映えて
しずかに 燃えている

取っ手もない そのとびらを
あけることは できない
けれど かんたんにとおってゆく
ことが できる

風のように 軽々と
ぼくはぼくの影を捨て
白い鳩の翼に酔って
なにもないもののように
色のない風の小鳥になり
すきとおったとびらを
とおってゆく

ゆめと うつつの あいだの
すきとおった とびらをこえて
ぼくは ゆめのなかに とぶ
小鳥は すべてを見る
ゆめは 灰色の砂絵で描いた
とてもおおきな
ダンジョンの地図だった
そよ風が何かをささやくたびに
世界は変わってゆく

空の向こうから
神様が 地球にくぎを打つ音が
聞こえる
それは不思議な音で
誰かがこう言っているように
聞こえるのだ

じかんがないよ
でんしゃが でてしまうよ
さいごの でんしゃが

ぼくは ふたたび
ゆめと うつつのあいだの
すきとおった とびらをとおって
かえってゆく

すると駅があって
黄色い電車が とまっていて
乗客を待っている
乗っている人は少ない

切符はいらない
乗りたいと言えば乗せてくれる電車に
ぼくはしずかに入ってゆく
どこへゆくだろう わからない
でも

ベルが鳴る そこでぼくは
夢から目を覚ます




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幸いの歌

2015-04-13 06:54:47 | 瑠璃の小部屋

ほんとうの幸いはなんだろうと
賢治に問われたことがある
ぼくはそれを知っている

ぼくは胸の中の小籠に
小さな銀の栗鼠を飼っているけれど
その栗鼠が時々
水晶の水のような声で
歌を歌うときがある
すると
大きな風がざっと吹いて
緑のくすのきの梢を吹き上げるように
見えない神様が
ぼくの中を通り抜けていくのだ

そのとき ぼくは世界がひっくり返って
まるっきりひっくり返って
とんでもない お日様とお月様の秘密を
見てしまう

そのときの驚きを叫ぶとき
僕の声は 一羽の白い鶴の声になっているのだった

ああ 幸せだ

ぼくはそう 鶴の声で鳴く
前身に満ちわたる熱いものが
星空の歌う交響楽に似ているのを感じる
真実は

真実は愛そのものなのだ
幸いは それがわかることだ
理屈じゃなく
体全部で
ぼくの存在 全部で
すべてがわかることだ

体全部で感じるその幸いを
ぼくは小さな詩にして
賢治に教える

この砂はみんな 水晶だ
中で 小さな火が 燃えて いる

この世界はみんな たった一羽の小鳥だ
歌で 永遠の愛を 燃やして いる

さいわいの 歌


ぎんがてつどうの 夜




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愛しているよ

2015-04-12 07:04:56 | 瑠璃の小部屋

君の胸の
何もない暗い夜空に
硝子の月をかけよう
それはほんのりとミルク色に染まっていて
静かな光で 君を照らしてくれる
蝶々の体温のような
かすかな暖かさが 
君の胸にじんじんと痛む

君の胸の
何もない暗い夜空に
黄すみれの花輪でつくった
小さな太陽をかけよう
すると空は菫色になって
君の濡れた心を吸い込んでくれるよ
涙がかわいて 菫の香りの
さわやな風が 魂を吹き抜ける

君の胸の
何もない暗い夜空に
真珠を呑んだ魚が吐いた
白い星の虹をかけよう
君の心の小さな小屋の
割れた窓のガラスが
風に溶けて 星にさらわれていくよ
もう傷つく必要はない

苦しかったね
苦しいことなんて
わからなかったほど
苦しかったね
君はいつも笑っていた
けれど僕は知ってる
ほんとうは君はいつも
苦しかった

君のためにできることを
いつもさがしていた
小さな天使がいたよ
それは白い子猫のまなざしの中に
住んでいて いつも君を見つめていた
愛しているって
簡単なことばなのに
どうして言えないんだろうね
伝わらないんだろうね
ああ
愛しているよ

愛しているよ




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国境

2015-04-11 07:37:18 | 瑠璃の小部屋

虹色の柱が立っていた
空を支えているかのような
太い光の柱だった

砂漠が見えて それは不思議な
白い大理石を砕いた砂でできていた
時々 かすかなアイオライトの結晶が光る
それが 砂漠に花が咲いているように見える

国境には 菫の花が咲いていた

ぼくは国境をこえてゆく
明日 すべての人に
愛をおしえにいくために

知っているかい
あらゆる花の中で
いちばん 地球を愛しいるのは
いちばん にんげんをあいしているのは
菫の花なんだよ

ほんとうさ

だから 
国境には 菫が咲いている
ぼくは 菫に笑いかけて
ゆく

そうとも みんなゆく
自分の国境を越えて
本当の美しい故郷を目指して

ああ 空が

すみれいろだ

あの空に吸い込まれるように
ぼくは飛んでいく
体が軽い
心が何かにとけてゆく
熱い

ああ やっと思い出した
ほんとうのぼくは

鳥だったのだ




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ここは

2015-04-10 06:49:26 | 瑠璃の小部屋

ここはどこだろう?
砂の魚と アルミニウムの薔薇の国

ここはどこ だろう?
鉄砲の森と カリウム金属のビルの国

ここは どこだろう?
毒蜘蛛の葡萄と くぐつになったすうぱあすたあの国

ここ は どこ だろう?
赤めのうの夜と 黒曜石の朝の国

こ こはどこ だろう?
真珠を焼いた月と 真鍮の壺に閉じ込めた太陽の国

ここ はど こだ ろう?
生きている鹿の骨と 死んでいるアナウンサーが走る国

こ こ は どこ?
だれもいないのに みんながいる国
みんないるのに だれひとりいない国

こ  こ  は  ど  こ?
生きている人は だれもいない
みんな動いているけれど
生きている人が だれもいない

もう帰ろう 故郷に
赤い薔薇と 緑の百合と 
金の朝と 銀の夜と 
翡翠の山と 水晶の川がある
本当の故郷に

水色の服を着た
父さんと母さんが 手を振っている
小さな木の小屋の中では
囲炉裏の中で
金のこりすのような火が踊っているよ
空では
銀のことりのような声で星が歌うよ

秘密は星がいつも歌っていた
その声にやっと気づくのだ ぼくは

道はひとすじだった
一回も曲がらずに 一歩進んだら
もう故郷の中にいた

さあみんな もう 帰ろう




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銀の鈴

2015-04-09 07:00:28 | 瑠璃の小部屋

わたしたちは
とてもちいさいので
かみさまは
わたしたちをあいしてくださいます

わたしたちは
とてもおろかなので
かみさまは
とてもかなしんでくださいます

わたしたちは
とてもさみしいので
かみさまは いつも
すきとおった手を さしのべてくださいます

わたしたちは
ちいさなちいさな
愛の夢の種ですので
かみさまは めでてくださいます

わたしたちが
泣きはらした目をぬぐって
もういちにちの明日を
生きるために
たちあがり あるきだすと
かみさまは
ふるえるほど
よろこんでくださいます

最も近くて
最も遠いところにある
水底の小さな銀の鈴が
ふるえて
ある日突然
世界中が 鳴り響く

わたしたちは すべて
愛の小鳥の卵を秘めた
うつくしい命ですので
かみさまは
ほんとうに深く
わたしたちをあいしてくださいます




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ワイン

2015-04-08 07:03:18 | 瑠璃の小部屋

生きるのが 苦しいのはね
遠い昔 灰色の巨人が
嘘のワインを 
地球の風に混ぜてしまったからなんだよ
だから人間は
息をするたびに苦しい
息をしなくては生きていけないのに
息をすれば死にそうになってしまう

嘘が 命の中に忍び込んで
いちばん大事な 心臓に住んでいる
銀のこりすを 殺そうとしてしまうんだ
大切な自分の 本当の愛を守ってくれている
かわいい銀のこりすを

こりすが死んでしまえば
人間はただの動くだけの空っぽの人形になる
あるいは もう
生きているのがいやになって
死んでしまう

悲しいね でも ぼくは
傷だらけになっても 生きていく
ぼくのこりすは 強くって
とても歌が上手なのだ
少しくらい毒を吸ったって平気なんだよ

詩を歌って こりすに聞かせれば
こりすはちゃんと生きていてくれる
僕の心臓は死んだりしない
ぼくの詩が尽きてしまわない限り

生きているのが苦しいのはね
遠い昔 灰色の巨人が
地球の風に混ぜた 嘘のワインを
ほんとうだと勘違いして
みんなが飲んでいるからなのだ

嘘のワインは それはもう
香りも色もほんものそっくりで
ほんものよりもきらびやかで美しくて
とても甘いから

生きるのが苦しいから
人間はもっと嘘のワインを欲しがる
それを飲めば しばらくは楽になるからさ
けれど 毒が体中に回って
愛のこりすがまた弱ってくる

生きるのが苦しいのが いやなら
もう嘘のワインを捨てよう
そして 本当の空気が流れている
本当の風の川を探そう
それはほんのすぐ近くにあって
耳を澄まさなくても
水音が聞こえる

おいで こっちに
もう苦しまなくていいんだよ




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