あはゆきの たなうらにきゆ
ためいきの いろにひそみつ
なにをして われにかたらむ
あはゆきの しろくはかなき
ひかりもて とぢしまなこの
うらのへや ゆきのあえかな
ことのはを きおくのたまに
おりこめて もれるひかりを
ふでにそめ まぶたをあける
まなざしの ますぐなるふで
あたらしき よをえがかむと
ちひさくも たしかなわれの
こころもて えがきださむぞ
ほしのよの たまのこころの
ここちよき あいのひかりは
みちみちて きよらにも鳴る
あはゆきの すずのこえなる
いのりの音 すべてすべては
あはゆきの とけてはきえる
まぼろしの ごときなみだの
かたりしと われはかたらむ
あるかぎりは すべて すべては
ひとひらの はかなくしろき
あはゆきの かたりしことと
われはいふ
地にふして こうべを垂れて
消えゆきし もののすべてを
風にとけし ひろきかひなに
いだきよせ むせび 泣かむ
すみれいろの空よ
(鳥音渡詩集・銀の栗鼠より)
①

②

③

④

⑤

できあがり。
これは以前ピクシブに発表していた作品である。だがもうかのじょは描いていない。このころになると、かのじょはもう自己活動がほとんどできなくなっていた。
かわいいが、なんとなく彼女の作品と違っていることが、見比べてみると明白にわかるだろう。これはサビクが彼女をモデルにまとめた天使画である。
誰でも描いていいから、一度描いてみたまえ。かのじょのイメージを思い浮かべながら愛をこめて描くと、本当の美しさというものがわかってくるかもしれないよ。
弱くて 強い 小さな子たち
今日一日が ひどすぎて
生きてくことが 重いなら
泣かないで
そっと くちびるに唱えてごらん
わたしの赤い 小さな小鳥
わたしの赤い 小さな小鳥
そばにいて 歌っておくれ
そばにいて 歌っておくれ
白くて 黒い 小さな子たち
今日一日が 悲しくて
生きてくことが 苦いなら
泣かないで
そっと くちびるに唱えてごらん
わたしの白い 小さな野薔薇
わたしの白い 小さな野薔薇
そばにいて 笑っておくれ
そばにいて 笑っておくれ
重くて 軽い 小さな子たち
今日一日が 悔しくて
生きてくことが 痛いなら
泣かないで
そっと くちびるに唱えてごらん
わたしの青い 小さな蛙
わたしの青い 小さな蛙
そばにいて 見つめておくれ
そばにいて 見つめておくれ
小さくて 大きい 小さな子たち
泣かないで いつもだれかが
そばにいる
ほんとうは おつきさまがえらいんだ
と おひさまは おもっている
にんげんの みられたくないところは
そっとかげにかくし
まなざしを澄まして
その子の心を清らかにあらってあげるから
ほんとうに おひさまはえらいと
おつきさまは おもっている
じぶんに うそをついて
影の中でわるいことをしている
いたずらっこを
すみずみまで照らして
いたいおめだまをあげるから
おひさまも おつきさまも
たがいに おもいあっている
おきもちの やさしさゆえに
にんげんをくるしめることができず
いちばんがまんしてしまう おつきさまのことを
おひさまはいたいたしいと おもう
おきもちの やさしさゆえに
わるいものにはようしゃなくおこるのに
そのかげで その子の心をたすけるために
いちばん苦労なさっている おひさまのことを
おつきさまは 涙を流してごらんになる
にんげんは まだよくわからない
おひさまと おつきさまが
なぜそんなに なにもかもを
いらぬくろうばかりして じぶんたちのために
やってくれるのか
なぜと問われれば
おひさまと おつきさまはこたえる
おまえを あいしているからだよ
胸のこかごにすんでいる
銀のこりすが歌うたう
たったひとつの大切な
小鳥は空にかくれてる
野原の影にすんでいる
絹のねずみが歌うたう
たったひとつの大切な
胡桃は森にかくれてる
お山の上にすんでいる
金のちょうちょが歌うたう
たったひとつの大切な
野薔薇は星に咲いている
君の孤独にすんでいる
真珠の貝が歌うたう
たったひとつの大切な
君はぼくらの前にいる
空になったコーヒーのパックと一緒に
愛を ゴミ箱に捨てて
君は淋しげな瞳で
愛が欲しいと言う
胸の中を吹く青い風は
海から吹いているのではない
かすかに香る潮のにおいは
海の匂いではなくて
君の血の匂いだ
忘れるために
君がハサミで切り落としていた
薔薇の木の枝は
本当は小さな細い君の指だった
切るたびに 血が流れる
切るたびに 指は生えてくる
生えるたびに 切る
血がとまらない痛みを
忘れるために
小さなコーヒーのパックを
握りつぶすように
君は小籠に住んでいた
白い小鳥を握りつぶす
忘れるために
君がすりつぶして殺していた
小さな蟻は
君が言いたかったのに言えなかった
秘密の言葉だった
言えない言葉をつぶすたびに
それは君の心臓を鉛に浸していく
萎えていく命を
しびれる悲哀の中に溶かして
君はうつろな笑いの中に消えてゆく
(欲しかったわけじゃない
ただ なんにもない
空っぽの孤独の中で
お日様を馬鹿にして
冷たい光を 浴びてみたかった
いなくなった愛の
いたところに 何もない
白い影が見える
欲しかったわけじゃない)
空になったコーヒーのパックと一緒に
愛を ゴミ箱に捨てて
君は淋しげな瞳で
愛が欲しいと
言う
君が 秘密の部屋で
小さな瑠璃の虫をつぶすと
嘘が 君の目に忍び込む
昨日まで かわいかった
君の瞳が
今日は
まるでシャッターの降りた
異国の雑貨屋のように淋しい
目の中に 君がいない
いや 君が見えない
君の目の中の雑貨屋には
ふしぎな異国の魔法の青いペンダントがあった
小鳥の形をしたオルゴールが異国の歌を歌った
西洋の陶製の小さな天使の人形があった
天使はヴァイオリンをひいていて
目を閉じて 頬を染めて
音楽を奏でていた
夢が籠一盛りの林檎のように
光っていたのに
今はそれが 全部見えない
君の夢はどこに行ったの?
君は
誰も知らない
君の秘密の部屋で
小さな瑠璃の虫を殺した
決してついてはならない嘘を
君は 君についた
目の中に 染まった嘘の色を
君はかすかな作り笑いで支えている
ああ もう ぼくは
二度と 君に 会えない のだろうか
君は 秘密の部屋で
瑠璃の虫を 殺した
太陽が 熱い
緑が燃え上り 風に情熱を溶かし
金色の日向に 野の花が歌う
夏が来る 夏が来る
新しい夏が来る
燕が飛ぶ
つぶてのように 風を切り
高く低く 燕が飛ぶ
働こう 働こう
はりきって 働こう
夏が来る 夏が来る
巣を整え かわいい卵を生み
つまとこうたいで温めて
こどもをつくろう
働こう 働こう
はりきって 働こう
かわいいこどものために
食べ物をいっぱいとって来なくては
夏が来る 夏が来る
光が翼にしみ込み
体中に熱い心が満ちてくる
緑が伸びてゆく 花が星のように群れて光る
風は降り注ぐ光をかきまぜる
光は日に日に 濃くなってくる
熱くかきたてられる心のありかに
翼を燃やしながら燕が歌う
働こう 働こう
はりきって 働こう
今年もまた みな新しくなる
新しくつくってゆく
新しい花を咲かせる
新しい蝶が飛ぶ
新しい鳥が生まれる
新しい夏が広がる
働こう 働こう
はりきって 働こう
夏が来る 夏が来る
幸福の 夏が来る
潮騒を きいて 眠る
星も月もない 真っ暗な夜を
潮騒を ききながら 眠る
ぼくたちが 眠っている間も
神様は休まず
潮騒を 奏でている
夢の中で 薄藍の波が
銀のレースの縁取りをきらめかせ
抱き締めるように岸にぶつかる
愛してたまらぬ子に
とうとう会えた母のように
海が岸を抱いて 泣く
潮騒を きいて 眠る
星も月も 目を閉じた闇夜を
潮騒を ききながら 眠る
ああ
蝶々があおいでくれるような
かすかなためいきで
ぼくに何かをおしえようと
夢の中に入ってくるのは
だれだろう?
潮騒を ききながら 眠る
潮騒を