日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

新春の四国を行く2019 - 蔵

2019-01-02 20:42:21 | 居酒屋
去年の正月は三が日と三連休が中二日で並んだため、谷間を休むことにより元日から八連休にすることができました。元日を休養に充てても、四国の県庁所在地で各一泊し、前後を奈良と神戸で挟むことができるという充実ぶりでした。対する今年は、三が日と土日が中一日で並ぶ形となったため、去年に比べ二日短いことになります。これは取りも直さず、何かを切り詰めなければ成り立たないこと意味します。その結果、格段に遠い高知を最初に切り、奈良か神戸の二者択一となったところで奈良を残しました。
奈良には七時前に早々と着きました。さらに走れば神戸から夜行のフェリーに乗ることもでき、四国には実質一日早く上陸できるところでした。しかしそれはしませんでした。というのも、四年前に同様の行程を採ったとき、黄昏時の奈良を素通りするのが何ともやるせなく感じられたからです。未明から出発して走り続け、頃合いの時間に着けば、投宿して一杯やっていきたくなるのが人情というものでしょう。それを振り切ってまで走っても仕方ないと思ったのです。

そのように思わせるのは、「蔵」という名酒場のせいでもあります。そもそも、四国への遠征が正月の恒例行事として定着したのは、元日から開いているこの店の存在によるところが少なくありません。自分にとってこの店は、教祖がいうところの「そこで呑むために旅へ出たいと思う店」の一つなのです。
ところが、近年この店が変わってしまいました。正確にいうと、店ではなく客層が相当変わってしまったのです。なじみのあるところでいうなら、京都の「赤垣屋」に近いといえば近いでしょうか。店の老練さは何一つ変わらないものの、客層がやや俗化した上に、恒常的に混んでいて、何かと落ち着かないのです。これまでは、満席の張り紙に気付かぬふりをして飛び込み、わずかな空席に滑り込むという形で乗り切ってきたわけなのですが、いつかはやられそうな気がしていました。そしてその予感は的中しかけました。
八時過ぎに乗り込もうとしたところ、案の定先客らで鈴なりになったカウンターが見えたため、少しだけ開けた扉を閉じました。しかし、代わりを探そうにも一筋縄では行きません。「春鹿」「鬼無里」は正月休みで、開いている他の店も決め手に欠けます。こうして30分にわたり彷徨い歩いた後、一縷の望みをかけて「蔵」に電話を入れたところ、幸運にも空きが出たため滑り込むという結果です。
ただし、その時点でもカウンターの角を挟んだわずかな席が空いているに過ぎませんでした。同じく一度振られたというおばちゃんが、残る一つの空席につき、店内は再び満席となりました。九時を過ぎたところでようやく空いてはきたものの、今日は元々早仕舞いをするつもりだったらしく、今度は看板で振られているところでした。入るならここしかないという一瞬を捕まえたわけであり、間一髪だったことになります。

そのような事情もあり、客層の変質は相変わらずでした。三人以上の、店の規模を考えれば大人数の先客が何組か入り、早々と埋まってしまうという状況も同じです。眉をひそめるような行儀の悪い輩はおらず、皆最低限の節度を保ってはいるものの、三人以上集まれば話に花も咲いてきます。ラジオの音はかき消され、以前のような静謐さはどこにもありませんでした。
元々こうだと思えばよいのかもしれません。しかし、数年前までの姿を知る者としては、変わってしまったという印象がどうしても残ります。それとともに問題なのは、混雑がいよいよ慢性化してきたことです。今回はどうにか滑り込めたからよいものの、次以降も同じ目に遭う可能性は十分にあります。周辺を延々歩いた限りでも、わざわざ入ってみたいと思う店は見当たりませんでした。「蔵」に入れず、代わりの店もないということになると、そもそも奈良に泊まる理由がありません。わざわざ宿をとるのであれば、退路を断って臨むより、「春鹿」か「鬼無里」に行ける逃げ道を残した方が現実的でしょう。来年の正月も奈良に泊まるかどうかについては、慎重に検討する必要がありそうです。

ちなみに、一人で右往左往するならまだしも、今回はあろうことか他人様を巻き添えにしてしまいました。この店にも何度か同道願っている、関西在住の仲間です。正月早々、しかも当日の朝に知らされ、あまつさえ店を探して30分も歩かされては、常人なら愛想を尽かしかねません。勝手な振る舞いを反省するとともに、快く受け入れてくれたことには深く感謝している次第です。
実は、あきらめかけていた中で、店に電話を入れようと提案してくれたのも本人でした。その機転がなければ、そもそも店に入ることすらできなかったかもしれません。何かと空振り気味の一日ではありましたが、最後の最後に救われました。


奈良市光明院町16
0742-22-8771
1700PM-2130PM(LO)
木曜定休

貴仙寿二合
おでん二品
氷頭なます
てっ皮ポン酢
きも焼
若鶏串焼
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新春の四国を行く2019 - 空費

2019-01-02 19:22:33 | 近畿
その後は淡々と走って奈良に着きました。今夜はここで投宿します。
朝方こそ晴れたものの、三重県内に入ってからは雲が増え、大半の時間にわたって日が陰りました。その結果、津から先はさしたる見せ場も訪れず、ほぼ移動だけとなりました。せめて趣向を変えようと、初見の経路を走ってはみたものの、いかんせん薄暗くてよく分からず、五十歩百歩にすぎませんでした。快晴の三日間を棒に振るというあるまじき結果を経て、心機一転臨んだ今日までこの始末です。出遅れて中途半端な結果となった初日を含め、九日あった正月休みの過半を空費してしまいました。明日以降少しでも挽回したいものです。
未明の出発から走りに走って560km, これだけの時間と距離を走るとさすがに疲れます。早々と投宿した分、一息入れてから出直したいのはやまやまながら、奈良の店はどこもかしこも早仕舞いです。10時を過ぎると入れる店がほぼなくなるため、悠長に休んでいる間はありません。一風呂浴びて出かけます。
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新春の四国を行く2019 - 高田本山

2019-01-02 14:46:25 | 東海
津市街に入ったところで平成最後の初詣を済ませます。立ち寄るのは毎度おなじみ高田本山です。
三観音といわれなければ気付かない津観音に対し、こちらは素人にも一目で分かる名刹です。境内に二つ並んだ立派なお堂は、国宝に指定されて以来二度目の正月を迎えました。しかし、下手に観光地化することもなく、今なお拝観自由で駐車料も無料。静かな境内は穴場と呼ぶにふさわしいものがあります。
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新春の四国を行く2019 - 四日市港

2019-01-02 11:24:23 | 東海
続いては四日市港を訪ねます。過去の記録を振り返ると、これが実質四年ぶりの再訪となるようです。それだけ無沙汰をしてしまったのは、前回一通り見て回ったつもりだったからですが、そのとき見落としていたものがあるのに気付きました。太平洋セメントの構内へと延びていく専用線を、何故かたどっていなかったのです。
今回再訪したところ、専用線の終端まで行く道があるのに気付きました。そしてこの終端の眺めが秀逸でした。踏切から遠巻きに眺めるしかないものの、適度な引きをとった全景が絵になっています。セメントサイロの脇に線路が並び、10両ほどの貨車をつないだ機関車が休息する光景は、模型の世界を見ているようです。
専用線を訪ね歩いていた二昔前、各地で見られた光景も、今となっては風前の灯です。いつまで残るかは未知数ながら、平成の最後を飾る新春に、しかとこの目で見届けられたのを幸いに思います。
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新春の四国を行く2019 - 四日市郵便局

2019-01-02 10:42:29 | 東海
出発前に印刷した年賀状に、道中の郵便局で一筆認め、風景印入りで差し出すのが新春の恒例行事です。三が日から開いている局は限られ、例年は専ら県庁所在地の中央局の世話になっているところ、今回ふと思ったのは、四日市の局ならどうかということでした。果たして予感は的中したため、こちらで第一陣を投函します。
第一陣というのは、何度かに分けて投函するからに他なりません。たかが消印一つといえど、風景印を押すのは傍目以上に面倒な作業です。日付をはめ込み、曲がりや掠れがないのを確かめてから押印するため、ただでさえ忙しい正月に、まとめてお願いしようものなら迷惑をかけてしまいます。何度か同じ粗相を繰り返した後、五、六枚ずつ小分けにするのが定着しました。初見の局ということもあり、ここでは五枚投函し、一枚記念に持ち帰ります。
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新春の四国を行く2019 - スガキヤ

2019-01-02 09:41:34 | 東海
引き続き順調に走って三重県内に入りました。出発から飲まず食わずで空腹感も限界です。限界まで引き延ばしたのは、是非いただきたいものがあったからに他なりません。スガキヤのラーメンをいただきます。
直ちにいただけることを重視し、九時開店で手近な店舗を探した結果、富田のイオンモールに飛び込みました。鹿児島五連泊の往路に寄った、ささやかな思い出のある店舗です。

★スガキヤ 四日市北イオンモール店
四日市市富州原町2-40 イオンモール四日市北SC1F
059-361-6033
900AM-2130PM(LO)
特製ラーメン450円
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新春の四国を行く2019 - 雪雲

2019-01-02 08:49:40 | 東海
国道1号線から23号線に入り、そのまま西へ下ってきました。名古屋の近郊にさしかかり、交通量はさすがに増えてきたものの、流れはすこぶる順調です。飛島の宇佐美で道中最初の給油を済ませていきます。
去年もそうだったのですが、関東平野と濃尾平野の気候は若干違います。乾いた冬晴れなのは同じでも、紺碧の空が広がる関東と違って、こちらでは空全体に雲が出ており、彼方の山は雪雲をかぶっているように見えます。5度という気温以上に寒く感じるのもそのせいでしょうか。しかし、松山まで下っていくと、別世界の暖かさになることについても経験上分かっています。埋もれていた記憶が甦ってきました。
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新春の四国を行く2019 - 下弦の月

2019-01-02 06:21:43 | 東海
おはようございます。その後二時半に出発し、交通量のほとんどない国道246号線を快走。厚木から東名、新東名を経由して、駿河湾沼津からは1号線を下ってきました。只今浜松市街に入ったところです。
駿河湾沼津で小休止をとったとき、東の空に下弦の月が浮かんでいるのに気付きました。その月が昇っていくにつれ、東の空が次第に明るくなってきました。今のところ、日が昇りきるまでに三重県内へ入れればよいと考えています。この先も自動車専用、あるいはそれに近い高規格のバイパスが続くため、高速道に乗り直す必要はなさそうです。
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