日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

豊穣の能登を行く - 源左エ門

2018-09-02 22:38:07 | 居酒屋
投宿して荷物を置き、身軽になって出直しました。続いて訪ねるのは「源左エ門」です。

元々一軒目に考えていたこの店が、二軒目にそのまま繰り下げられたことになります。ただし、元々二軒目に行こうとしていたのは「あぐり」でした。香林坊からせせらぎ通りを歩いて行くと銭湯があり、その先にあるのが「あぐり」という位置関係です。まず銭湯で汗を流し、さっぱりしてから飲み直し、夜風に吹かれながら戻れば最高だろうと思ったのでした。ところが日曜だからなのか、本来ならまだ入れるはずの銭湯が閉まっていました。しかも追い討ちをかけるかのように、「あぐり」にも早仕舞いで振られるという誤算が。その結果木倉町の呑み屋街まで引き返すという結果です。
それで「源左エ門」に落ち着いたのかというとさにあらず。迷走はまだ続きました。次いで浮上してきたのは、教祖が番組で紹介していた若い店主による店です。「大関」から「源左エ門」へ至る途中に、居酒屋使いもできそうな料理屋といった佇まいの店ができているのに気付き、かねがね気になっていたところ、その店が教祖の番組で紹介され、一度訪ねてみようと思っていたのでした。しかし最近、中の様子が分かりすぎ、かえって入りづらいという現象が起こりがちです。店先からのぞいたところ、先客はわずか二人と落ち着いていたものの、その二人がいずれも同年輩と思しき二人客で、自分がそこへ三人目として入るのが憚られたとでも申しましょうか。その結果、巡り巡って元の鞘に収まった次第です。

このように、二軒続けて振られた末に流れ着くという結果でした。前回訪ねたときにいたっては、その前に四軒続けて振られました。しかし、いわば第三志望、第五志望に甘んじたのは、年中無休で遅くなっても入れるという安心感から、後回しになることが多いからに他ならず、この店が劣っているということではありません。てらいのない居酒屋という点では、金沢の中でも屈指といってよい名店です。今回も助け船となってくれたことに感謝します。

源左エ門
金沢市木倉町5-3
076-232-7110
1700PM-2300PM(LO)

先一杯・劔
突き出し(鰯梅煮)
はも天ぷら
もずく
太きゅうり酢の物
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豊穣の能登を行く - わり勘

2018-09-02 20:49:53 | 居酒屋
朝帰りという強行策を採ったのは、金沢で一杯やりたかったからだと申しました。そのような気にさせるのは、日曜営業の店が豊富だからでもあります。その中からまず選んだのは「わり勘」です。
実をいうと、元々ここに寄るつもりはありませんでした。投宿し、荷物を置いて繰り出すということになると、おそらく九時を回るでしょう。そうなると、着いた頃には看板になってしまうのです。その結果、今回は「赤玉」か「源左エ門」のいずれかだろうと考えていました。ところが豈図らんや、野町を経由するバスが、ほどよい間合いで出るところでした。投宿を後回しにして直行すると九時前には入店でき、ラストオーダーまで30分、看板までは一時間強が残ります。大荷物を担いでいくのがいかにも野暮ではありますが、何度か訪ねた店なら比較的気兼ねがありません。計ったようにバスが来たのを、野町へ行けという思し召しと受け止めて、急遽予定を変えたというのがここまでの顛末です。

去年の正月にたまたま発見して以来、その年は二度にわたって再訪し、今年もこれで三度目です。通った年数の長さでは何といっても「浜長」ですが、今や最も愛用する店の一つとなりました。これは偏に、有名店と比べても遜色ない品書きの充実ぶりに加えて、野町の寂れた駅前の佇まい、地元客で賑わう大衆的な雰囲気が、自身にとっての居酒屋像とでもいうべきものを体現しているからに他なりません。北陸としては半端ともいえるこの時期、品書きに冬場ほどの華々しさこそないものの、来てよかったとしみじみ実感できるのは、酒と肴だけでは計れない居心地があるからでしょう。
四軒に一軒の割合で「また行きたいと思う店」に出会い、その中から四軒に一軒の割合で「常連になりたいと思う店」が現れ、さらにその中から四軒に一軒の割合で「近くに住みたいと思う店」が残るというのが教祖の経験則だそうですが、自分にとってこの店は「常連になりたいと思う店」に属します。つまり、教祖の分類に照らすと最上級には属しないわけであり、今まで絶賛してきたことと矛盾しているようにも思われるかもしれません。しかるにあえて「常連になりたいと思う店」にとどめるのは、他のお客が名前で呼ばれる御常連ばかりだからです。こちらがどれほど熱心に通い詰めたとしても、この方々には敵いません。御常連に敬意を払いつつ、かくありたいと密かに願う程度がよかろうというわけです。

わり勘
金沢市野町4-3-6
076-244-2280
平日 1700PM-2215PM(LO)
日祝日 1600PM-2115PM(LO)
月曜定休

常きげん二合
刺身五種盛
牛すじ
自家製つみれ
鯛あら汁
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豊穣の能登を行く - 迷ったら買え

2018-09-02 20:19:57 | 北陸
その後は再び粛々と走り、金沢に戻って車を返しました。特に慌てることもなく、閉店10分前に戻るという理想的な時間配分です。西の空が暮れなずむ中、沖合に点々とする漁火が印象的でした。

腹ごしらえを済ませると、ほどよい間合いで最終の新幹線が出ます。しかし結論から申しますと、今夜は金沢に泊まります。突発的な事情によるものではなく、出発前から温めていた構想です。
金沢から朝帰りというと、あわやという出来事が三月にありました。最終の新幹線が混んだため、一泊して翌朝帰ることも考えながら、慌ただしくなるのを嫌い、結局グリーン車を奢って帰ったのでした。しかるに今回、あえて奇策を採ったのは、金沢を素通りしがたかったからに他なりません。
あのときは金沢で既に一杯やっており、仮に一泊したところで朝帰りの煩わしさが加わるだけでした。その結果、早く帰って休みたいという心情が勝ったわけです。それに対し、今回最終列車で帰るとすると、金沢の市街には一度も寄らずに終わります。日曜だけに宿代は安く、四千円でビジネスホテルに泊まれるため、一杯やって翌朝帰ろうという結論に至った次第です。

ついでにいえば、これは今後の活動に向けての試みという目的も兼ねています。自分にとって朝帰りというと、何度も繰り返したのは始発の東北新幹線ですが、あれは北海道の滞在を一日延ばせるという効果が絶大だからで、いわば苦肉の策という面があります。これに対し、ほぼ抵抗なくできるのが「サンライズ」での朝帰りです。両者の違いは何かといえば、職場に直行しなければならないか、自宅に一旦戻れるかという点にあります。
今回は両者の中間に位置付けられます。自宅に戻れるには戻れるものの、出発まで二時間近くが残る「サンライズ」のときと違い、30分で再び出なければなりません。つまり、荷物を置いて着替えるのがせいぜいだということです。終点まで寝台が使える「サンライズ」に比べれば、休息できる時間も当然短くなります。
このように考えると、どちらかといえば東北新幹線での朝帰りに近いともいえ、そこまでする必要があるのかと懐疑的な面があるのは事実です。しかし懐疑的ということは、「迷ったら買え」の経験則が当てはまるということでもあります。そこでともかく買うことにして、好結果を収めれば、以後定跡の一つにしようと考えました。そのようなわけで、若干の懸念材料はあるものの、明日のことはひとまず忘れ、花見以来の一夜を楽しむつもりです。
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豊穣の能登を行く - 機具岩

2018-09-02 18:30:08 | 北陸
今日も見事な夕景を眺めることができました。先ほど日が沈むのを見届けたところです。
時間が押してきたこともあり、輪島からは極力先を急ぎました。しかし、昨日訪ねた砂浜に、日没前に着けるかどうかは何とも微妙になってきました。間に合いそうにないことがいよいよ明白となるに至り、機具岩なる案内板が現れたため駆け込むと、影絵になった夫婦岩の彼方に水平線が広がり、そこへ夕日が沈もうとするところでした。
昨日眺めた夕景が実に見事だったため、今日も再訪しようと思っていたのです。しかるに時間が押して、手近なところへ駆け込むという結果でした。しかしこれでよかったともいえます。というのも、今日の空には雲一つなく、砂浜では平板すぎて絵にならないからです。ほどよい位置に夫婦岩があり、それが影絵になる状況は、まさしく渡りに船でした。能登の旅を締めくくるにふさわしい眺めです。
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豊穣の能登を行く - 袖ヶ浜

2018-09-02 16:44:26 | 北陸
来た道を引き返して輪島に戻りました。先ほど飛ばした袖ヶ浜を訪ねています。
海水浴場に併設されたキャンプ場があると聞いていました。しかも特筆すべきは、市街までどうにか歩けそうな範囲にあることです。実際に訪ねてみると、砂浜から一段上がったところにサイトがあり、さらに一段上がると市街を遠望することができます。目算する限り、15分から20分あれば歩けそうな距離です。今回はレンタカーだったため宿泊を選んだものの、自分の車で訪ねたときは、ここにテントを張るのもよさそうです。
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豊穣の能登を行く - 曽々木海岸

2018-09-02 15:50:16 | 北陸
千枚田に延々二時間滞在し、時間が次第に押してきました。しかし、そのまま引き返すのも惜しまれて、切りのよいところまで走ることにしました。巨岩が切り立つ曽々木海岸まで走り、珠洲市との境を越えたところで折り返します。
出発からの走行距離は150kmを超えました。つまり、ここからまっすぐ走っても三時間は下らないということです。八時までに金沢へ戻らなければならないことを考えると、悠長に寄り道する時間まではありません。早めに距離を稼いでおき、昨日訪ねた海岸あたりで日没を見届けられれば理想的でしょう。
先へ行けば行くほど寂寥としていく車窓は、離島の旅を彷彿させます。このまま最果てまで走りたいのはやまやまながら、今回は残念ながら時間切れです。少しばかりの未練を残して引き上げます。またいつの日にか…
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豊穣の能登を行く - 白米千枚田

2018-09-02 13:50:15 | 北陸
輪島に午前いっぱいとどまった結果、そのまま引き返す方が無難な情勢になってきました。しかし、ここだけは訪ねておこうと思った場所があります。国道をひた走り、やってきたのは白米千枚田です。
ここを訪ねた活動仲間が、千枚田を見下ろす形で道の駅が造られ、雰囲気が損なわれたと嘆いていました。それだけに懐疑的な部分もあったのです。とはいえ、稲穂の実る季節にあえて素通りする理由もありません。そう思い立ち、足を延ばしたわけなのですが、結果としては来てよかったと実感できる眺めでした。
まずよかったのは、人出が思ったほどではなかったことです。千枚田を周回できる遊歩道が巡らされてはいるものの、大半は道の駅併設の展望台から眺めており、下りていく見物客はごくわずかです。しかしこの遊歩道がよくできています。展望台から見えるのが、どこかで見た覚えのある紋切り型の眺めなのに対して、遊歩道を上下しつつ歩くことにより、様々な角度から観賞できるという寸法です。展望台から見ただけで済んだつもりになっている人々は、確実に損していると言い切りましょう。

下りて初めて分かることがもう一つあります。田圃一枚ごとに所有者を示したらしき札が立っていることです。田圃は文字通り千枚あるとのことなので、それに等しい数の所有者がいることになります。
このことから窺われるのは、農機が使えず廃れていった千枚田が、県内外の有志の支援で維持されているという事実です。つまり、保存目的で走らせている蒸気機関車のようなものともいえ、極論すれば見世物の一種ともいえます。しかし、単なる見世物にするつもりなら、入場料を徴収していてもおかしくはありません。この景観を受け継いでいこうとする志には、素直に感謝したいものだと思います。
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豊穣の能登を行く - 8番らーめん

2018-09-02 11:39:58 | B級グルメ
一区切りついたところで頃よく昼時が迫りました。遅い朝食兼昼食をいただきます。立ち寄るのはお約束の8番らーめん、注文はもちろん味噌らーめんの野菜増しです。正午前にもかかわらず、店内は待ち客が出る大盛況。県下での圧倒的な人気が窺われる光景です。

★8番らーめん輪島店
輪島市横地町2-2-1
0768-23-4800
1100AM-2200PM(水曜 -1400PM)
第149号
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豊穣の能登を行く - 鴨ヶ浦

2018-09-02 10:57:42 | 北陸
今回とりわけ再訪したかった場所の一つが輪島漁港です。市街の中心を一周した後、一味違う町並みが続いているのに気付きながら、空が暗くて全く絵にはならなかったため、今度こそはと考えていたのでした。その機会が半年足らずで巡ってきたことになります。
町並みが尽きるまで歩き、岬の突端を周回すると、突如として広大な日本海が広がりました。鴨ヶ浦というらしく、岸辺には岩礁が露出していて、それを見渡すようにささやかな公園があります。少し先にはトンネルがあり、それを抜けると砂浜もあるようです。ただし、既に相当歩いており、さらに進むと引き返すのが厳しくなります。もう少し待つと巡回バスが通るため、そちらで一旦市街に戻り、時間が許せば車で訪ねるつもりです。
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豊穣の能登を行く - 鳳至上町通り

2018-09-02 09:26:02 | 北陸
予報通りに晴れてきました。宿に車を置いたまま輪島の町を散策します。
前回半日以上をかけて、主なところは一通り歩いたものと思っていました。しかしそれは早計でした。宿がある川沿いから一本内側に、能登らしい木造家屋が並んでいる一角があったのです。鳳至上町通りというらしく、見越しの松が屹立する酒蔵の建物がとりわけ様になっています。電柱を取り払ったわざとらしい町並みではなく、適度に生活感があるのもこちらの好むところです。
加えて好ましいのは、これほど絵になる町並みにもかかわらず、観光客が一切おらず、車もほとんど通らないことです。やや蒸すものの日陰に吹く風は心地よく、遠くの茂みからは蝉時雨が聞こえてきます。これが能登の初秋かと実感する一幕です。
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豊穣の能登を行く - 新橋旅館

2018-09-02 07:56:17 | 北陸
能登へ行こうと決断したのは金沢に着く直前です。その時点で照会したところ、前回世話になった「新橋旅館」が一室だけ空いていたため即決しました。
じゃらんで検索すると、輪島市街の宿は片手で数えられる程度に過ぎません。昨夜についても事実上ここかルートインの二者択一であり、あちらは八千円を超す高額でした。ただし、ビジネスホテルの類はたしかに少ないものの、民宿が相当あるのは前回訪ねた経験から分かっていました。よって、じゃらんで手配できなくとも、どこかの民宿には飛び込めるだろうと楽観していたわけなのですが、この場合現地に着いてから電話帳で調べるという手間が生じてしまいます。宿の場所を調べたり、車の止め方を聞いたりするなど、初見の宿では何かと手間が要るものです。それらの手間を一切省き、到着後一風呂浴びて出直すまでを無駄なく動けたのは助かりました。
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豊穣の能登を行く - 二日目

2018-09-02 07:26:47 | 北陸
おはようございます。その後は港の方を散策しつつ宿へ戻り、日付が変わってから休みました。明け方に時計を見ると五時半でした。しかしすぐには起きられず、次に気付いたときには七時前でした。なおも起き上がれずにいると、やがて時報のサイレンが鳴り、それでようやく目覚めるという顛末です。
なかなか起きられなかったのは、出発前夜に十分休めなかったのもさることながら、布団から抜け出すのが億劫だったからでもあります。言い換えると肌寒く感じられたということです。ただし冷房を入れていたわけではなく、風だけ送る形でした。能登がこれなら、北海道に渡れば相当冷えるでしょう。名実ともに秋到来を実感する一幕です。

昨夜は半月が時折見えたり霞んだりを繰り返していました。つまり空全体が薄雲に覆われていたということです。一夜が明け、上空は今のところ平凡な曇り空ですが、九時頃から晴れてくるというのが最新の予報です。
金沢から輪島まで130kmあるということは、のと里山海道を飛ばしても二時間は下らない距離です。もう一度夕日を眺めて締めくくろうとした場合、日没の時刻、営業所の閉店時刻、金沢までの走行距離を考えると、昨日訪ねた海水浴場のあたりまで南下しておかなければなりません。時間的には、輪島の町を散策して昼頃に出発し、昨日通った道沿いに寄り道しつつ南下すると、夕暮れ時をほどよい位置で迎えられそうです。ただ、南下するより北上した方が天気はよさそうであり、どちらへ行くかが悩ましいところではあります。まずは予報通りに晴れてくれることを期待しましょう。
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