日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

色づく秋の長崎へ - 一二三亭

2018-09-15 23:30:49 | 居酒屋
歳に応じて食が細り、はしご酒が次第にしづらくなってきました。特に先月以降、身体が酒を受け付けないという症状が顕著です。しかし、休肝日を増やした成果か、京都では実に四軒はしごしました。そして今夜も同様の結果になろうとしています。第一夜のトリを努めるのは「一二三亭」です。

初見ではなく、一度訪ねたことがあります。教祖の導きを頼りに旅先の酒場を訪ねるようになった草創期、長崎でいの一番に訪ねた店がここでした。ただし、その一度限りとなっていたことからも分かる通り、鮮烈な印象までは残りませんでした。著作に紹介されていた牛かんもおじやも、素朴な味ではあるものの、「宝雲亭」の餃子のような、是非またいただきたくなるような中毒性には欠けたからです。その後「安楽子」を始めとする他の推奨店に通い出してからというもの、この店は後塵を拝する形になり、一昨年久々に訪ねようとしたときも、かなりの盛況を見て敬遠しました。それが今回、連泊の恩恵もあり、ようやく再訪の機会を得たわけです。
当時の記憶もおぼろげになっていた中、久々に再訪してまず思ったのは、どことなく「こいそ」に通ずる店内の雰囲気です。いや、創業明治29年ということは、こちらが断然老舗であり、むしろあちらがここに倣ったのかもしれません。そう思うのは、黒塗りになったカウンターとその背面の食器棚がよく似ているのに加え、十種以上の惣菜がカウンターに並んでいるからでもあります。手元の品書きもあるにはあるものの、二軒目以降ならば惣菜を一つか二つ選び、それを肴に酒を一本いただいて、名物のおじやで締めくくればちょうどよさそうです。
そのおじやは、さしずめ「不思議な味」ということになるでしょうか。陳腐な言葉を借りるのは、他に例えるものがないからに他なりません。歯応えがなく薄味で、おじやだけでは物足りなく感じられそうなところ、分厚くまぶした擂り胡麻と、細かく刻んだ青葱がほどよい変化を生み、酔客の胃にも優しい一品でした。

眼鏡の女将を筆頭にした、三人組のおばちゃんによる老練な客あしらいが、いかにも教祖の推奨店ならではです。「安楽子」のように、いの一番に訪ねたいと思うまでには至らないとしても、女将を相手に一杯やるには上々の店ともいえます。酒、肴より居心地に真価があるという点では、「桃若」にもどこか通ずるものがありました。食わず嫌いをしていたことを、少し後悔させられる名店です。

一二三亭 思案橋店
長崎市本石灰町2-19
095-820-9191
1130AM-1400PM/1800PM-100AM
土曜昼の部及び日曜定休

六十餘州
きびな天ぷら
茄子煮付け
おじや
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色づく秋の長崎へ - 雲龍亭

2018-09-15 22:42:04 | 居酒屋
「安楽子」の次は「桃若」と、結果的には代わり映えのしない流れとなりましたが、ここでようやく趣向を変えます。三軒目に訪ねるのは一口餃子の「雲龍亭」です。
自分が知る限り、長崎に「雲龍亭」は三軒あります。思案橋横丁に本店、銅座町と浜町に支店があって、銅座町の支店は一昨年訪ねました。残る二軒のうち本店が早仕舞いしていたため、浜町の支店に落ち着くという結果です。
暖簾をくぐると正方形に近いL字のカウンターが8席分あり、それが客席の全てでした。二階の座敷を合わせても、思った以上にささやかな店内です。その店内を、五厘刈の店主、早口の女将、跡取りらしき青年の三人組が仕切ります。
銅座町の支店を訪ねた経験から、味自体「宝雲亭」と大差はなかろうと思っていました。実際のところ、水餃子がないのを除けば品書きもほぼ同じです。しかし、味が全く違うのに意表を突かれました。ニンニクの風味がほとんどしないのです。場合によっては使っていないのかもしれません。その代わり卓上に小瓶があり、タレに加えることによっておおむね近い味になるという仕掛けです。翌朝もわずかに残るニンニク臭が「宝雲亭」の餃子の特徴でもありますが、ニンニク嫌いが一定数いることにも配慮し、好みに応じて加える形になったのでしょう。好きなだけ加えてよいという点では、無類のニンニク好きにも向きそうです。両極端の方々におすすめしたい一軒でした。

雲龍亭 浜んまち
長崎市浜町10-3
095-822-4621
平日 1400PM-2330PM(LO)
日祝日 1300PM-2130PM(LO)
月曜定休(祝日の場合営業し翌日休業)
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色づく秋の長崎へ - 桃若

2018-09-15 21:43:31 | 居酒屋
今回是非訪ねてみたい店の一つに「はくしか」がありました。同じおでん屋として「桃若」の後塵を拝し続けてきたこの店へ寄るには、連泊となる今回がまたとない機会だからです。しかしそのつもりで乗り込むと、店先には10時にラストオーダーとの案内が。その時点であと20分ということです。その結果、中途半端になるのを嫌って今回も見送りました。次に向かったのが、以前一度訪ねただけに終わっていた「かわむら」ですが、残念ながら既に明かりは消えていました。そうなると俄然浮上してくるのは「こいそ」ですが、こちらはこちらで明日に温存しておきたい事情があります。紆余曲折を経て、少し早めに「桃若」の縄暖簾をくぐりました。

通されたのは一番右端、つまり前回と全く同じ位置でした。左隣に長年通い慣れたと思しき独酌の先客がおり、あとは県外からの一見客が二組という顔触れです。中ほどが空いているにもかかわらず、片隅に通されたのには理由がありました。二人で来ていた先客の仲間が加わり、カウンターの角を挟んで五人が並ぶ形となったのです。
この小さな店に、五人まとめて来るとはいかにも野暮な話です。おそらく口コミサイトの評判を見てたどり着いたのでしょう。昨夜の「赤垣屋」にしてもそうですが、弊害が年々大きくなっているのを感じます。とはいえあちらほどの違和感がないのは、好青年の形容がふさわしい若者達だったのに加え、女将と若主人を交えての和気藹々とした雰囲気が、むしろ微笑ましく感じられたからに他なりません。ある意味この店らしい一幕ではありました。

ちなみに、前回に引き続いて店主の姿はなし。若主人にたずねたところ、今は隠居し、冬場の繁忙期だけ店に立つとの返答がありました。年末頃に再訪すれば、再びお目にかかれる機会もあるのでしょうか。ひとまずおつかれさまでした。

桃若
長崎市本石灰町3-1
095-823-3392
1730PM-2400PM
日曜定休

櫻正宗二合
とうふ
ロールキャベツ
特製かまぼこ
さといも
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色づく秋の長崎へ - 安楽子

2018-09-15 20:28:55 | 居酒屋
今日はとにかく蒸し暑く、朝から汗をかき続けたため、さっぱりしてから出直したいのはやまやまでした。しかし先刻申した通り、今夜はわずかな遅れが数字以上の影響を及ぼしかねない状況です。宿に荷物を置いた後、とるものもとりあえず繁華街に出てきました。
何に影響するかというと、「安楽子」に行けるかどうかの瀬戸際だったのです。「安楽子」といえば何といっても刺身ですが、その刺身が早々と捌けてしまう状況を何度か経験しています。八時台の前半ならともかく、後半では何もなくなり早仕舞いという可能性も考えられました。京都を三時前に出られれば、どうにか八時台の前半には駆け込めるため、あれほど必死になったという事情があります。

こうして目標の時間帯には着いたものの、無情の宣告が下りました。刺身がもうないとの第一声がお姉さんから発せられたのです。たしかに、刺身を欠いてしまっては、この店を訪ねた価値は半減します。暗に断る趣旨と受け止めて一旦は辞去しました。しかしその直後、秋刀魚ならあるとの言葉が背後から飛んできました。こちらの落胆ぶりを見かね、店主に聞いてくれたのでしょう。
長崎で秋刀魚かと一瞬思いながら、この店が出すものなら間違いはなかろうと考え、全て承知の上で入店するも、その後についても紙一重でした。すり身揚げは自分が注文した分で切れ、目当ての一つだったネギヌタもなく、限られた選択肢から鯛の頭を注文。それらを肴に酒二合をいただいて席を立つという顛末です。
このように、中途半端な結果ではありました。しかし、あと30分遅れれば、すり身揚げさえ切れてしまい、早仕舞いで振られた可能性は十分にあります。日祝日定休という条件からして、明日に回すという選択肢もありません。いの一番に訪ねたかったこの店に、どうにか駆け込めたのは幸いです。

安楽子
長崎市浜町7-20
095-824-4970
1630PM-2130PM(LO)
日祝日定休

喜多屋二合
生さんま
すり身揚げ
タイ頭塩焼
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色づく秋の長崎へ - 崇福寺

2018-09-15 19:58:33 | 九州
浦上で列車を降り、市内電車に乗り継ぎました。一つ手前で降りるようになったそもそもの理由は、佐賀から乗ったときの特急料金が変わってくることにあります。博多からの乗車なら、終点まで行っても料金は変わらないため、全区間乗り通してみるかとも思ったのです。それでも結局降りたのは、電車への乗り換えが楽という理由によります。長崎駅の場合、頭端式のホームを歩いて改札へ向かい、その後も長い歩道橋を渡って電車乗り場へ向かわなければなりません。それに対して浦上駅の場合、ホームから改札までの距離が短く、駅前の横断歩道を渡るだけで乗り換えられます。手前から乗る分だけ車内も空いており、一石二鳥というわけです。
それはさておき、電車の時刻表を見て気付いたのは、市街へ向かう1系統の行先が、崇福寺などという聞き慣れない名前に変わっていたことです。ただし延長されたわけではなく、正覚寺下の電停が、近くにある名刹にちなんで先月から改称されたのでした。他にも結構な数の電停が改称されており、築町も新地中華街と改められました。おそらく観光客が迷わないようにするためでしょう。しかし、とかく改称というと平仮名交じりの軽薄なものになることが多い中、その手の変更がなさそうなのは好ましいことです。
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色づく秋の長崎へ - かもめ35号

2018-09-15 19:20:19 | 九州
博多で新幹線を降り、特急券を買ってから在来線のホームに上がると、ほどよい間合いで列車が入線してきました。運用につくのは「白いかもめ」こと885系のトップナンバーによる編成です。

今回は京都から博多まで新幹線を乗り通すという、自身にとって初めてとなる経験をしました。京都から博多までといえば、「あかつき」在りし頃、九州への行き来で何度も乗った区間です。瀬戸内を一晩かけて走り抜く夜汽車の旅は、悠長に寝ている暇もないほどめくるめく場面に満ち、往年の名曲に歌われた情景もかくやと想像させるものでした。それが今では、新幹線が三時間足らずで運んでしまうわけであり、あまりの呆気なさに拍子抜けさせられます。便利さと引き替えに失われた旅情を振り返ると、どうしても感傷的にならざるを得ません。
長崎への旅も、新幹線が開業する数年後には遠からぬものになろうと予想されます。途中で新幹線に乗り換えさせられ、あまつさえトンネルばかりの車窓になれば、長崎へ乗り込むという高揚感も削がれるでしょう。かような観点に照らして、今回失敗をしてしまったことに気付きました。大半の区間が暗い中での乗車となってしまうからです。特に、新幹線の開業後は事実上見納めとなる有明海の車窓が、すっかり暗くなってしまったのは痛いものがあります。残り少ない乗車機会には、然るべき条件を整えてから臨みたいものです。

このように綴ったところで思わぬ出来事がありました。見上げた夜空に三日月が浮かび、見えたり隠れたりを繰り返すのです。これは、有明海に沿った曲線の多い線形だからに他ならず、それもまたこの区間ならではの車窓といえます。計ったように空が晴れてきたのも幸運です。一期一会となるかもしれないこの車窓を、しかと瞼に焼き付けておきましょう。

★博多1755かもめ35/(2035M)/1949浦上
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色づく秋の長崎へ - のぞみ33号

2018-09-15 16:59:36 | 近畿
一日半滞在した京都を後に、新幹線で再び西へ下ります。昨日に続いて西日本所属車が運用につきました。

乗車に際しては一悶着がありました。用務先から戻るバスをあと少しのところで逃してしまい、次のバスまで15分も待たされたことにより、何とも微妙な時刻になってしまったのです。
14時50分発の「のぞみ33号」を逃すと、博多へ行く列車はその後40分近くもありません。長崎への到着時刻で比較すると実質30分の違いですが、一軒目に入れる時間帯を考えると、その差が数字以上の影響を及ぼす可能性がありました。よって、この列車に乗れるかどうかが一つの鍵だったわけなのですが、15分の空費によって、俄に事態が暗転した次第です。
いくら気を揉んだところで、バスが早く進むわけではありません。焦りが募るだけと考え、あえて時計を見ずにおき、塩小路に入ろうとするところで確かめると、発車まであと10分を切っていました。これから駅前のバス乗り場に入り、長い跨線橋を渡って特急券を買い、改札を通ってホームへ上がるという一連の流れを考えると、乗り遅れてもおかしくはありません。
いよいよ切迫したところで、一か八かの賭けに出ました。一つ手前の塩小路高倉で下り、新福菜館、第一旭の前を通って跨線橋を渡れば、八条口の新幹線改札に至ります。そうすれば駅前に乗り入れるまでの時間が浮き、その一方で歩く距離には大差がないため、わずかとはいえ早いだろうと見込んだのです。重荷を担いで早足に歩き、事情を話して改札を通してもらい、脇目も振らずにホームへ上がると、列車は既に停車しており、直後に客扱いが始まるという顛末です。1分しかない停車時間を考えると、終点まで乗ってしまえばおそらく間に合わなかったでしょう。特急券を買っていても間に合わなかった可能性があります。まさに間一髪の滑り込みでした。

そのようなわけで、どうにか事なきを得たものの、蒸し暑さには辟易しました。昨日もさることながら今日が特にひどく、朝から汗をかき続けたところへ一悶着が追い討ちをかけ、岡山に着くあたりまで団扇を手放せませんでした。ようやく汗が引いてくると、代わりに疲れが噴き出して眠気が押し寄せ、気付いたときには広島に間もなく着こうとするところでした。昨夜張り切りすぎたこともあり、頭の回転が鈍っていましたが、これで多少なりとも回復したような気がします。長崎へ着く頃には腹具合も戻るでしょう。第一夜をよい状態で迎えられそうなのは幸いです。

★京都1450/のぞみ33(33A)/1733博多
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色づく秋の長崎へ - ますたに

2018-09-15 12:27:51 | B級グルメ
今日済ませるべき野暮用は二つあります。その一つが済んだところでお昼の時間になりました。しかも、次の用務先へ向かう途中に「ますたに」があるという願ったり叶ったりの状況です。これにより選択肢は必然的に絞られました。
平日の正午よりもやや早くに訪ね、出る頃には待ち客が出ていたという経験があります。ましてや今日は三連休の初日です。正午を大きく回った時点で、厳しいかとも思いました。ところが豈図らんや、カウンターがほぼ空いているという僥倖が。その後立て続けにお客が入りはしたものの、出る間際も七割、八割方の入りでした。地元客が多いことから、週末になるとかえって空くのでしょうか。真相のほどはともかく助かります。

ますたに
京都市左京区北白川久保田町26
075-781-5762
1000AM-1900PM(日祝日 -1800PM)売切御免
月曜及び第三火曜休業
チャーシュー麺800円
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色づく秋の長崎へ - 二日目

2018-09-15 08:45:35 | 近畿
おはようございます。昨晩宿に戻ったのは一時台の後半でした。四軒もはしごしたのは久々です。酒が最もうまい時期ということもあり、つい張り切りすぎてしまいました。その酔いがわずかに残り、今朝の目覚めはお世辞にも爽やかとはいえません。とはいえ前夜休肝したおかげで、悪酔いするまでに至らなかったのは幸いです。
本日は昼過ぎまで野暮用に費やしてから長崎へ移動します。京都を出られるのは最速で二時過ぎ、そうなるとあちらの着くのが七時台で、投宿してから出直すと九時近くにはなりそうです。しかし、昨晩飛ばしすぎたことを考えると、今夜はそれで十分ともいえます。連泊の特権を活かし、無理のない範囲で飲み食いするつもりです。
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色づく秋の長崎へ - 燻吟かず家

2018-09-15 00:45:56 | 居酒屋
京都で一献傾けた後、〆に愛用してきたのは「大豊ラーメン」であり、最近それに加わったのが「おかる」のカレーうどんです。しかし、先月訪ねたばかりということもあり、それらを切ってもう一軒と悪魔がささやきました。酒の酣という事情にも後押しされ、まさかの四軒目に突入です。「燻吟かず家」を訪ねます。
「いなせや 真」で手に入れた情報紙を頼りに、昨秋初めて訪ね、再訪を果たしたのが初夏のことです。掲載店は他にもあり、そのうちの一つを訪ねようとしたこともあります。先月微妙に入りづらくて敬遠したと申した店がそれです。その経験からいえるのは、中の様子が窺えないと入りづらいのはもちろんのこと、分かりすぎてもかえって入りづらいということです。その点こちらは間口がガラス張りになっており、中の様子をおおむね知ることができる一方、適度に未知数な部分もあり、ともかくまずは入ってみようと思わせるものがありました。以来三回訪ねたということは、それだけ自分に合っていたということなのでしょう。若さ故の荒削りな部分はあり、いの一番に訪ねたいと思うまでには至らないものの、最後に軽く一杯という状況では、年中無休で深夜も入れるこの店が重宝します。

燻吟かず家
京都市中京区河原町通三条下ル二丁目東入ル北車屋町276 永吉ビル1F
050-5590-2412
1800PM-230AM(LO)
元日休業

弥栄鶴
マグロといくら
プチトマト
海鮮つみれのみそ汁
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