日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

盃の効用

2018-09-19 23:07:03 | 晩酌
凝り出せば際限ないと自制して、酒器については少数精鋭を貫いていると以前申しました。しかし最近久々に新戦力が加わりました。先日会津で頂戴した盃です。
自分なりのこだわりとして、酒の色が分かる器を選ぶと当時も申しましたが、漆器はこれに反しています。しかし、会津の酒に限って使うつもりが、今では蛇の目の器に取って代わり、すっかり主力となりました。これは、急激に酒量が落ちた現状への対応の一環でもあります。
この盃のよいところは、一杯当たりの量がほどよく、正一合で潔く切り上げられる点にあります。真価がとりわけ際立つのは、徳利が次第に軽くなっていき、そろそろ仕舞いだろうかと感じ始めた終盤です。ぐい呑みならば、もう一杯満たす程度で終わりとのころ、盃ではあと何杯かとることができます。その結果、一合空けた時点で十分に感じられ、酒量が抑えられるという仕掛けです。
一杯当たりを少なくすることにより、同じ一合でも沢山呑んだ気になれるという、当たり前といってしまえばそれまでの話です。しかし、単なる気のせいとも思われません。器があまりに小さいと、かえって呑んだ気がしないものだからです。酒を最もおいしくいただけるよう、器の直径、深さ、口当たりが周到に設計されているのだろうと推察しています。小さな盃に込められた先人の知恵を、しみじみ感じる今日この頃です。
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