日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

北陸縦断花見の旅 - 源左エ門

2018-03-31 22:04:44 | 居酒屋
四月が迫り、日の入りが次第に遅くなってきました。夕景を眺め、完全に暗くなったのは七時を回ってからです。さらに月まで眺めた時点で、金沢に着く時間が少々気になり始めました。幸い破綻のない時間帯には着いたものの、呑み始めるのが九時を回ってしまいそうな情勢です。その時点で「浜長」には振られても仕方なかろうと覚悟をしていました。それだけに、行灯の明かりが消えていたのも誤算とまではいえず、むしろ他の店で呑めるよい機会だろうと前向きに考えました。ところが思わぬ難航を強いられました。

「浜長」に振られた場合の候補として考えていたのが「三幸」でした。しかしこれが一筋縄では行きません。まず、犀川の支店を店先からのぞいたところ、カウンター席が一つ空いているかどうかで、いかにも窮屈そうでした。これでは仮に入れたところで落ち着かないかもしれません。そこで、収容力では上回る本店に目標を切り替えました。ところが、十時近い時間帯にもかかわらず、長いカウンターは一つ残らず埋まっており、あまつさえ待ち客まで出ているというまさかの事態が。一組待っているだけという状況から、片付けが済み次第通されるかという淡い期待も空しく、数分待っても先客が立ちそうな気配はありません。
それとともに、何かが違うということに気付いてきました。有り体に言えば客層です。「高砂」と同様、古い店の割には客層が若く、中年男が一人で酒を酌むにはどうなのかが懐疑的になってきたとでも申しましょうか。そもそも、待ち客用の椅子が並んでいる時点で、今日に限らず待ち客が恒常的に出ているのは明らかです。平日の開店直後はともかく、週末に訪ねるのはそもそも間違いだったと悟りました。後から二人組のお姉さんが入ってきた時点で順番を譲ると、次いで目指した「赤玉本店」にも満席で振られ、五軒目の「源左エ門」にようやく落ち着くという結果です。
四連敗という経験は過去にもあり、金沢では四年ぶり二度目ということになります。しかし、そのときは土曜の七時だったため、ある意味仕方のない部分もあったのです。十時近くになってもこの有様とは全くの予想外でしたorz

こうして訪ねた「源左エ門」ですが、去年は一度も機会を作れず、二年ぶりの再訪ということになります。しばらく無沙汰をしてしまったのは、食わず嫌いによるところが大です。品数の豊富さも、大衆的な雰囲気も、先ほど振られた「赤玉」「三幸」に遜色ないのです。しかしここにはおでんがなく、代わって寿司が品書きに上ります。しかし、個人的には寿司がそこまで酒に合うものとも思われず、寿司とおでんの二者択一なら後者を選びたいという嗜好があります。その結果、おでんのある店を優先しがちになり、この店からは次第に遠ざかったというのが真相です。しかし今回久々に再訪してみて、この店のよさを再認識する結果となりました。
いの一番に挙げるとすれば、割烹着をまとった女将の客あしらいでしょうか。無駄に愛想を振りまくわけではないものの、奥の定位置から客席に目を配り、絶妙な間合いで注文を聞きにくるところなどは、いかにも教祖の推奨店らしい老練さに満ちています。細かい字の、しかし的確に整理されたホワイトボードの品書きは眺めているだけでも楽しく、酒の槽を使ったらしき一枚板のカウンターにも、立派な梁で設えられた天井の造りにも、そこから下がる笠をかぶった裸電球にも味があります。時節柄、桜をあしらった徳利も心憎いものがありました。
もう一つ再発見した点として、一品の分量の多さが挙げられます。一昨年訪ねたときは山盛りの鰤刺しに驚きましたが、今回選んだ鯛刺しも、二、三人で取り分けられそうな気前のよさです。次いで頼んださよりのフライも三尾あり、突き出しとそれらで腹が満ちてきました。無理に飲み食いしても仕方なかろうと考え、あら汁をいただいて締めくくるという結果です。一品一品気前よく、少ない品で満腹になるという点では、長岡の「魚仙」に通ずるものがありました。

時間的には辛うじて二軒目も狙える状況であり、わずかとはいえ余力もあります。しかし今夜は、無理にはしごをするよりも、明日に備えて早めに切り上げたいという心情が勝っています。そのように思うのは、花見の旅特有の事情によるところもあります。席に着くなり思ったのは、まずは酒より水だということです。日中にそれほど汗をかいたというわけはありません。しかし、気候が次第に暖かくなり、自覚する以上に水分を消費しているということでしょう。毎年経験している感覚が甦り、今年もこの季節が来たかという実感が押し寄せてきました。
それに加えて、金沢に通い詰めた結果、無駄に欲張る理由がなくなったという事情もあります。結局今回も「三幸」には行けず、「高砂」も今年に入ってからは素通りが続いています。しかし、それ以外の店をあらかた訪ねたことで、今夜を一軒限りで切り上げる余裕が生まれてきたわけです。いわば悟りの境地に達するほど、金沢を心行くまで満喫できたことに感謝しています。

源左エ門
金沢市木倉町5-3
076-232-7110
1700PM-2300PM(LO)

先一杯・劔
突き出し(つみれ豆腐)
まだい
さよりフライ
あら汁
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北陸縦断花見の旅 - 四週ぶり

2018-03-31 21:11:10 | 北陸
四週ぶりに金沢へ戻ってきました。雨晴から一般道経由で一時間強の走行でした。高岡から小矢部まで走った、8号線の北側を並走する県道の交通量が少なく、これが時間の短縮に貢献しました。いずれ高岡へ戻るときにも使えそうです。

160号線からその県道に入ったところで、出発からの走行距離が1000kmを超えました。一月以上旅しているにもかかわらず、まだ1000kmというのが信じられません。
これまでの長旅との違いとして、一日の休みを除き土日だけで乗り切ってきたという点があります。それでもつなぎ合わせれば今日が11日目です。仮に、明日自走で帰っても1500kmほどにしかならないわけであり、日数に対する走行距離の少なさという点では過去屈指かもしれません。とはいえ塵も積もれば山となり、通算20万kmまではあと203kmに迫りました。

高岡に着いたときの気温が11度でした。日が暮れてから7度に下がったものの、金沢市街では11度に戻っています。つまりこちらの方が暖かかったということです。宿の若女将らしきお姉さんによると、やはり桜は見頃を迎えつつあるようです。下見を兼ねて、金沢城を周回しつつ繁華街まで歩いてみます。
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北陸縦断花見の旅 - 朧月

2018-03-31 19:01:32 | 北陸
撮影者が多くて興ざめだと申しましたが、その理由がようやく得心できました。立山連峰の向こうから満月が昇ってきたのです。
最初の一時帰京から復帰して北鉄の電車を撮ったとき、撮影者が俄に集まりだしたのを見て、何かが起きると直感し、果たしてラッセル車がやってきたという出来事がありました。しかし何分鉄道とは勝手が違い、その場では勘が働かなかった次第です。
思えばあのとき、前夜に泊まった金沢で満月を眺めました。あれから四週経ったわけです。雪がようやく解け始めたその頃、桜が咲くまで旅を続けるなどと全く思っていませんでした。しかし瓢箪から駒の出来事が積み重なり、再び満月を眺めることになったわけで、そう思うと実に感慨深いものがあります。しかもただ眺めたというのではなく、いずれも絵になる場所で月が出たというのが出来過ぎです。
七時を回って残照がほぼなくなり、月の明かりが周囲を照らすようになってきました。金沢で眺めた煌々たる月とは違う、春らしい少し霞んだ朧月です。この月をもうしばらく眺めてから移動します。
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北陸縦断花見の旅 - 雨晴海岸

2018-03-31 18:00:20 | 北陸
そのようなわけで雨晴海岸にやってきました。結論から申しますと、期待以上だった部分もあれば、まあこんなものかと思った部分もありました。
まず期待以上だったのは天候です。少し霞んだ空からしても、前回ほどの眺めは期待できないだろうと思っていました。ところが現地に乗り込むと、それほど遜色はありませんでした。前回を10とすれば、おおむね8.5から9あたりといったところでしょうか。元々の期待値が高くなかったという事情はあるにしても、十分観賞に値する眺めだったというのが実感です。
その一方で、やや興ざめする部分もなかったわけではありません。明るいうちに再訪してみて気付いたのは、きわめて絵葉書的な眺めだということです。富山湾を挟んで正面に立山連峰が屹立するという眺めは完成されており、誰が撮っても絵になります。しかし見方を変えると、作画に工夫の余地が少なく、どれだけ空が青いか、遠景が鮮明か、水面が凪いでいるかなど、与えられた条件でほぼ決まってしまうということでもあります。それだけに、撮影の対象としては必ずしも面白くないという印象を受けました。
もう一つ画竜点睛を欠くのが、そこそこ人出があることです。日参する愛好家も多いのか、三脚を立てた撮影者が相当数いて、それに加えて観光客も散見されるという状況でした。辟易するほど混み合っているわけではないものの、撮るべきものを撮り次第速やかに失礼したくなるような雰囲気です。線路を挟んだ反対側には道の駅が建つようで、開業した暁には一層俗に成り下がらないかと思いやられます。

そのような事情もあって、早々に失礼しようと一度は思いました。しかし、名所の近くには得てして穴場があるものです。少し北の方へ車を走らせると、遠い昔世話になったキャンプ場に接する形でマリーナがあり、それを囲む形で弓形の長くて高い防波堤が延びていて、その先端から立山を一望できるようになっていたのです。
絵葉書的な眺めのよさとして考えた場合、三角形の岩が点景になる先ほどの海岸がたしかに上でしょう。しかし、その代わりに海面からの高さがあることを考えると、少なくとも自分の中での条件は五分以上です。加えて撮影者と観光客が一切おらず、太公望が釣り糸を垂れるだけという雰囲気は好ましく、これならしばし滞在するにもやぶさかではなくなってきます。穴場を発見できたことを含め、今回再訪した甲斐はありました。

既に西日は松林の向こうに隠れ、立山連峰も次第に色褪せようとしています。しかし、後ろを向けば砂浜と松林が広がっていて、西の空の残照が水面に映っています。それをしばらく観賞してから切り上げるつもりです。
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北陸縦断花見の旅 - 高岡駅

2018-03-31 15:02:18 | 北陸
高岡駅に着きました。相棒と合流して出発します。
旅先に車を置いて一旦帰るという奇策も、今では長旅を続ける上で欠かせない手段として定着しましたが、中断が二週にわたったのは初めてです。これだけ長く置いておく決断ができたのは、高岡駅の屋内駐車場が一週間無料で使えるという条件があったからに他なりません。
前々回の活動を二日延長していれば、翌週末と合わせてどうにか帰れていたという結果論を何度か申しました。しかし、どのみち今回戻ってくるのであれば、追加の出費は今回支払う五千円ほどの駐車料だけだったということになります。仮に自走で戻ってから出直すとすれば、こちらまで走るだけでも一日かかってしまいます。レンタカーを手配すれば駐車料以上の出費が要るわけです。結果論が巡り巡って、結局これでよかったのだろうという考えに変わってきました。

ちなみに、駅前の桜が早くも満開になっています。富山より少し遅れて開花したとの情報でしたが、今年は開花してから先が早すぎて、一日、二日の違いなど問題ではなくなっているのかもしれません。
昨夜の段階では、金沢が高岡よりも一日遅れて昨日開花したとの情報でした。つまり、通常ならば見頃にはまだ早いということです。しかし、高岡の状況からすると、あちらでも急速に開花が進んでいる可能性は十分にあります。
今夜は金沢の宿を押さえているため、開花状況にかかわらず、明日はまず金沢で花見をすることになりそうです。開花が十分進んでいれば、そのまま腰を据えますが、そうでなければ高岡に戻ってくるのが順当でしょう。
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北陸縦断花見の旅 - 素通り

2018-03-31 14:14:58 | 北陸
トンネルを抜けて富山平野に出ると、今にも開花しそうな黒部川の桜並木が見えました。魚津では次第に開花が始まっており、富山市街に入ると情報通り桜が満開になっていました。しかるにそれを素通りし、金沢行の普通列車に乗り込んだところです。
結論から申しますと、まず高岡で車を引き取り雨晴へ行こうかと思っています。というのも、富山では四年前に満開かつ快晴の条件で花見をしたことがあり、今回是非もう一度行きたいと思うほどではありませんでした。そこで、条件が整えば雨晴の海岸を再訪しようと考えていたのです。その条件とはもちろん、立山連峰を見渡せることに他なりません。赤城山すら判然としなかった車窓から、多くを期待してはいなかったものの、やや霞んではいながらも雲一つない快晴となったため、そのまま列車を乗り継いだ次第です。
空の青さは前回に及びません。しかし、富山で花見をしたときより鮮明のようにも見えます。時期を考えると上出来の部類なのではないでしょうか。この判断が吉と出てくれることに期待しましょう。

★富山1446/430M/1432高岡
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北陸縦断花見の旅 - 春霞

2018-03-31 12:18:44 | 関東
高崎を出て上越新幹線と分かれました。長野まで無停車で疾走し、そこから丹念に停まっていくのが日中の「はくたか」の行路です。
大宮を出るとまず筑波山、次いで男体山が彼方に見え、熊谷を通過すると赤城山が徐々に迫ってくるというのが、上越、北陸方面へ下る車窓の移り変わりです。それを目当てに右側の三列席を選ぶのが常であり、前回下ったときも同様でした。しかし、今日はどこまで走っても赤城山さえ判然とせず、筑波山と男体山にいたっては影も形も分かりませんでした。たかが二週の差とはいえ、早春との違いがありありと感じられる春霞です。
ちなみに、大宮までは都内と比べても大差ない開花状況だったものの、熊谷へ至る前に遠目にはまだ満開の桜が現れ、さらには梅まで咲いていました。北関東がまだ満開の状況で、富山が満開と言われても半信半疑にならざるを得ませんが、列車に乗ってしまった以上、あとは前進あるのみです。
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北陸縦断花見の旅 - はくたか561号

2018-03-31 11:44:30 | 関東
始発列車で行くかというとさにあらず。11時台の「はくたか」で旅立ちます。四回連続となる西日本所属車での運用です。
昨晩指定券の発売状況を確認したところ、始発の「かがやき」以外は9時台まで窓側が全て埋まったそこそこの盛況で、混み出す前に出発するのが無難のようにも思われました。しかし、夜が明けきる前に出るよりも、もう一度名残を惜しんでおきたかったというのが真相です。
週明けから五日にわたって花見日和に恵まれ、昨日も有終の美と形容するにふさわしい結果に終わり、もうこれで十分とは思ったのです。とはいえ、平日の朝はどうしても慌ただしくならざるを得ません。時間を気にせずもう一周してから発ちたいという心情が勝りました。

さすがに盛りは過ぎたものの、昨日から多少なりとも気温が下がったこともあり、遠目にはまだ見頃のソメイヨシノも少ないながらありました。遅咲きの山桜は十分見頃です。加えて今日も清々しい青空が広がり、これならわざわざ北陸へ行く必要などなかろうとさえ思いました。とはいえ、もう十分と思いながらも、往生際の悪さ故に最後の一周を欲張ったに過ぎません。時間が経てば経つほど人出が増えてくる中、さらに引きずり蛇足になるより、これを花道にして幕を引こうと思い至った次第です。
八重桜はまだこれからですが、都内のソメイヨシノはおそらく見納めになるでしょう。しかしもう思い残すことはありません。今まで楽しませてもらったことに感謝します。また来年…

★東京1124/はくたか561(561E)/1357富山
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