日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

春まだ浅い仙台へ 2018 - かん

2018-02-03 23:19:08 | 居酒屋
一昨年は「源氏」に寄ったところで完全に力尽き、宿に戻って倒れ込むという顛末でした。しかし、今回はまだ二軒訪ねただけに過ぎません。宿のチェックインだけ済ませた後、荷物も置かずに出直してきました。続いて立ち寄るのは「かん」です。
「源氏」と同じく教祖の推奨店ですが、それ以外にも共通する点があります。お通しが充実しており、二軒目以降なら酒だけ注文すればよいということです。そのお通しは、刺身、汁物、一品を組み合わせたもので、折々で趣向が変わる内容も、お通しとして過不足のない分量も、漆器を巧みに使うところも好ましく、たとえば今夜は刺身がスズキ、汁物が鱈のすり身とロールキャベツ、一品はかぶらの田楽でした。
酒が平凡なのが「源氏」の難点の一つですが、その点こちらは酒を主役にした店です。宮城を中心にした様々な地酒が、横長のA3用紙に細かい字で書き込まれます。半合でも一合でも単価は変わらず、少しずつ試すにも、しみじみ味わうにも好都合。店の古さは比べようがないものの、「源氏」の客層の変化が恒常的なものだとすれば、居心地についてもこちらの優位が高まってきます。少なくとも今夜についてはこの店の圧勝でした。

かん
仙台市青葉区国分町2-13-11 ベルサイユビル2F
022-225-8148
1800PM-2330PM(LO)
日曜定休(祝日の場合営業し翌日休業)

日高見・栗駒山
かぶら田楽
たらすり身汁
スズキお造り
コメント

春まだ浅い仙台へ 2018 - 源氏

2018-02-03 22:10:11 | 居酒屋
一昨年仙台に泊まったとき、張り切りすぎて牛タンを昼に三軒、夜にも二軒はしごして力尽きるという事態に陥りました。しかし、今回は幸か不幸か二軒目の心当たりがありません。残る余力は居酒屋に注ぎ込みます。仙台の聖地「源氏」の暖簾をくぐりました。

教祖のみならず、あらゆる先人が語り尽くした名店中の名店ですが、自分自身この店に対する思い入れはそれほど深くありません。これは、牛タンが主、居酒屋が従という仙台の特殊事情によるところが一つ。加えて、酒が好みに合わないという事情もあります。かつて使われていた新政にしても、後釜に座った高清水にしても、何の変哲もない普通酒であり、特定名称酒に及ばないのはもちろんのこと、普通酒としても特段秀でたものが感じられないのです。
とはいえ、昨年は一度も訪ねる機会を作れないまま終わってしまいました。人生の残り時間を考えると、さらに空白期間が延びたとき、取り返しのつかない損失になりかねません。日曜定休という条件も踏まえ、まずはここだと考えた次第です。

牛タンの直後でお通し以外の肴も欲していない状況の中、酒にも多くを期待できないということになると、求めるものは古い酒場の雰囲気です。しかし、その雰囲気が損われている兆候を感じていました。一昨年訪ねたとき、客層が異様ともいえるほどに若返っている光景を目の当たりにし、わずかながらも違和感を覚えたのです。奈良の「蔵」を筆頭に、客層の俗化により雰囲気が損われたという先例もあるだけに、こちらは果たしてどうかという一抹の不安がありました。そして、この不安は残念ながら的中してしまいました。
先客の中に三人組が三組おり、さらに後から一組入って、彼等だけで席の半分以上が埋まりました。そのこと自体に目くじらを立てるつもりはありませんが、厄介なのは彼等が総じて騒がしいことです。最も騒がしかった二組が、10分少々経ったところで立て続けに出て、これにより多少静かになったものの、明らかに変質した客層には違和感を禁じ得ず、終始落ち着きませんでした。看板まで30分を切った後、一人客が続けて入ってきましたが、その頃でなければ落ち着かないと知ってのことだったのでしょうか。
かつては席こそ埋まっていても、静かに酒を酌む客ばかりで、大阪の「明治屋」にも通ずる雰囲気だったと記憶しています。しかし、現状は「蔵」と全く同様であり、店の真骨頂である静謐な空間は失われてしまったというのが率直な印象です。

「蔵」にしてもここにしても、運不運の問題ではなく、客層自体が変質してしまったようなのが残念です。特に、この店については「蔵」ほどの思い入れもないだけに、今後も毎回訪ねる必要が果たしてあるのかが懐疑的になってきます。ただし、旭川の「独酌三四郎」を始め、一時俗化をしながらも、元の姿を取り戻してきたもあります。そうなってくれることを期待しつつ、しばらく間を置いてから訪ねてみるのも一案でしょう。

源氏
仙台市青葉区一番町2-4-8
022-222-8485
1700PM-2300PM
日祝日定休

酒二合
糠漬け
菜の花おひたし
冷奴
コメント

春まだ浅い仙台へ 2018 - 司

2018-02-03 21:24:30 | B級グルメ
見事なまでの返り討ちとなってしまいました。仙台に着くのが遅れ、牛タンの店がことごとく看板になってしまったのですorz
昨年宿泊したときは、九時過ぎに着いたところ、心当たりのある店がいずれも暖簾をしまった後でした。ただし、いずれの店でも店内の明かりはついていました。このことからいえるのは、九時までに着けるかどうかが明暗を分けそうだということです。ところが悠長にも一般道を延々走り、東北道に乗ったのは福島県最北端の国見からでした。その影響でまたしても九時をわずかに回ってしまい、目当ての店は一つ残らず閉まっていたという顛末です。昼の部や日曜では選べない、宿泊したときにしか寄れない店もいくつかあり、それらを訪ねることが主題の一つだったにもかかわらず、何とも手痛い失策を犯してしまいました。

前回と同様に牛タンを潔く切り、呑むことに注力するという選択も考えなかったわけではありません。しかし、このようなときこそ試しに寄ってみたい店がありました。新進気鋭の人気店「司」です。
牛タンの元祖が「太助」なら、それを各地に広めた立役者は「利久」ですが、最近頓に評判を聞く店の一つがここです。ただし、自分の中では懐疑的な部分がありました。情報から推し量れる範囲では、「利久」に通ずるものが色濃く感じられたからです。具体的にいえば、牛タンもテールスープもおいしく、その他の品々も充実しており、客あしらいも気持ちよく、老若男女問わずに受け入れられそうな反面、万人受けを狙いすぎ、心底感服するほどの個性まではなさそうに思えたとでも申しましょうか。
とはいえ、各地に次々支店を出す「利久」と違い、市内の数店で地道に営業している店でもあります。個人店のよさが残っているのではないか、そうだとすれば「利久」とは一味違う個性もあろうという一抹の期待は抱いていました。「利久」かここか、さもなければ牛タン自体を見送るかという状況の中、一度試してみるにはまたとない機会と思い立った次第です。そして、その結果はよくも悪くも予想通りでした。
まず思ったのは、想像をも超えて「利久」に酷似しているということです。それは牛タンのみならず、品書きと雰囲気についても同様です。極論すると、「利久」の牛タンを土産で買い、店で焼いてもこうなりそうな気がします。もちろん、炭火で焼くのと家庭のコンロとで焼くのとでは大違いであり、本職にしか出せない味ではあるのです。それぞれの熱狂的な信者に言わせれば、「利久」と「司」を混同するなど失礼も甚だしいと憤るかもしれません。しかし、「太助」や「雅」のような、家庭では再現できない、他店でも味わえない唯一無二の味とまでは思われず、手本通りの、悪くいうとありがちな味に思えてしまったというのが率直なところです。2200円ということは、「太助」で六枚の定食をいただける値段ですが、そこまでの値打ちは感じませんでした。

世間の評判とは裏腹に、かなり否定的な評価となってしまいましたが、これは予想が見事なまでに的中し、よい方向にも逆方向にも裏切るものがほとんどなかったという事情によるところが大です。言い換えると、店自体に明らかな難点はありませんでした。むしろ、牛タン専門店が総じて早仕舞いする傾向が強まる中、遅くまで入れる店は貴重ともいえます。心当たりにいずれも振られて行き場所をなくしていた中、地獄に仏の一軒でした。

司 本店
仙台市青葉区国分町2-13-27 瀬戸ビル1F
050-5890-8199
1700PM-2230PM(売切御免)
日曜定休
コメント

春まだ浅い仙台へ 2018 - 小川郷駅

2018-02-03 17:46:16 | 東北
浜通りを北上するつもりが、いわき市街を縦断しただけで日が暮れてしまいました。残照があるうちは西へ向かって走ります。花見の旅でおなじみの小川郷駅にやってきました。
とりあえず花見の経路をたどっていき、船引から二本松へ抜け、そこから東北道を飛ばすのが順当でしょうか。しかし、針路が北から西へ変わったことで、そのまま会津へ行きたいという悪魔のささやきが聞こえてきました。そうなるとこの表題も羊頭狗肉になりますが、気分次第でいかようにでもできるのが一人旅のよいところです。仙台でも会津でも宿には十分余裕があるため、手配は直前まで引き延ばします。
コメント

春まだ浅い仙台へ 2018 - 四ツ倉駅

2018-02-03 16:37:14 | 東北
続いては四ツ倉駅を訪ねます。切妻の木造駅舎は草野と同様ながら、ここの駅舎の特長は間口の広さにあります。高さと奥行きには大差がないのに対して、間口はざっと二倍にはなるでしょうか。右側にはかつて団体用の出入口だったであろう庇が張り出し、その下には海水浴場の歓迎板が掲げられていて、大勢の乗客で賑わった古きよき時代が偲ばれます。
唯一惜しまれるのは、この駅舎の全景をまともに撮る術がないということです。とにかく間口が広いため、十分な引きが要るにもかかわらず、駅舎の前を車道が横切り、歩道とガードレールで区切られる上に、タクシーが常時横付けされているため、それらが障害物になってしまうのです。
そこでやむなく選択したのは、歩道に張りつくように立ち、広角レンズでかなり斜めの角度から撮る方法でした。あくまで苦肉の策であり、およそまともな構図とはいえませんが、それでもこの状況下ではあながち悪くありません。空を覆った雲間から西日が射し、駅前に立つ冬枯れの木が影絵になって、佇まいを意外なほどに引き立てています。もし晴れていれば完全な逆光であり、全く撮影にはならなかったでしょう。順光では作画の強引さがあからさまになっていたかもしれません。結果としてはこれでよかったということにしておきましょう。
コメント

春まだ浅い仙台へ 2018 - 草野駅

2018-02-03 16:10:15 | 東北
晴の予報に喜び勇んで出たはずが、蓋を開ければ薄日が射すのがせいぜいでした。その薄日も午後には陰ってしまい、さらには四時を回って次第に暗くなってきました。わずかな残り時間で常磐線の駅を訪ねます。立ち寄るのはいわきの一つ隣の草野駅、てらいのない切妻の木造駅舎の佇まいを、屋根と庇と車寄せに施された朱塗りの縁取りが引き立てています。
コメント

春まだ浅い仙台へ 2018 - 塩屋崎

2018-02-03 14:56:32 | 東北
海沿いの道を走って塩屋崎に至るも、午後から曇ってしまい眺めは今一つです。これでは料金を納めてまで登る気にもなりません。「喜びも悲しみも幾歳月」の歌碑だけ撮って切り上げました。
しかし、わざわざ来てよかったと思える場面もありました。海岸線に物々しい防波堤が築かれ、陸側も盛土によって景観が一変していたのです。太平洋を見渡せば、無風にもかかわらずかなりの波が立っており、少なくとも先週末の新潟の二日目よりは荒れているように見えます。普段がこれなら津波の威力はいかほどだったのでしょうか。早くも震災の爪痕が現れつつあります。
コメント

春まだ浅い仙台へ 2018 - 撮影再開

2018-02-03 14:14:38 | 東北
腹ごしらえを済ませたところで撮影再開です。まず機関車がコンテナ車を牽いて上り、泉で貨車を授受した後、今度は小名浜行のコンテナ車を牽いて下っていきました。そしてこれが本日最後の列車でもあります。一日わずか三往復の列車のために、鉄道が今なお残っているのは奇跡ともいえます。貴重な姿を久々に見届けられたのは幸いです。
コメント

春まだ浅い仙台へ 2018 - うろこいち

2018-02-03 12:15:10 | B級グルメ
常磐線に沿って北上するつもりが、図らずも小名浜でお昼を迎えることになりました。そうなると、漁港でお昼をいただく流れに傾くのは必然です。しかし、ツーリングマップルR推奨の「市場食堂」は、いかにも観光客を意識した店構えをしており、即座に敬遠したくなる代物でした。他の店にも総じて似た雰囲気が感じられる中、唯一異彩を放っていた「うろこいち」なる店の暖簾をくぐります。
元々は干物か何かの加工場だったのでしょうか。その建物の軒先に増築する形で、間口の狭い店舗があります。暖簾をくぐると細長い客席が奥の方へ延びており、母屋は広い厨房兼加工場となっていて、何人ものおばちゃん達が仕事をこなしていました。とかく漁港の店というと、観光客向けに高価な海鮮丼を売るところも多い中、大半の品が千円台の前半という良心価格は好ましいものがあります。その中から手堅く選んだ刺身定食は、牡丹海老を主役に据えてヤリイカ、鰤で脇を固め、タコ、マグロ、白身と帆立を加えた七点盛りでした。

うろこいち
いわき市小名浜字栄町66-40
0246-54-1233
900AM-1600PM
水曜定休
刺身定食1500円
コメント

春まだ浅い仙台へ 2018 - 小名浜精錬

2018-02-03 11:47:39 | 東北
タンク車と無蓋車を引き渡した機関車が、今度は空のコンテナ車を牽いて戻ってきました。列車撮影はひとまず打ち止め、続いては小名浜精錬の専用線を訪ねます。今なお現役の東邦亜鉛に対し、こちらは過去帳入りしてしまいましたが、線路こそ剥がされながらも路盤と砕石は残り、勾配標も距離標もそのままです。
コメント

春まだ浅い仙台へ 2018 - 宮下駅

2018-02-03 10:47:22 | 東北
続いては福島臨海鉄道の宮下駅にやってきました。コンテナと石油以外は風前の灯となってしまった鉄道貨物ですが、二昔前にはまだそれなりの貨物駅、専用線が残っていました。その当時に訪ねて以来の再訪になるでしょうか。
東邦亜鉛の専用線で知られる当駅、最新の貨物時刻表には掲載がなく、今では小名浜駅の構内扱いとなっているようです。しかし、今や全国的にも貴重となった車扱輸送は残り、小名浜からスイッチバックする形で専用線が延びてくるため、今なお実質的な分岐点には違いありません。
構内をしばし観察してから工場のある方へ向かうと、折しも機関車が無蓋車とタンク車を引き出してくるところでした。咄嗟のことゆえ見送るしかなかったものの、その編成が小名浜で折り返すのは分かっていたため、先回りして撮りました。泉で貨車を受け渡した機関車が戻ってくるため、それまで粘るつもりです。
コメント

春まだ浅い仙台へ 2018 - 糸合シ由

2018-02-03 08:33:18 | 東北
勿来駅から少し走ると6号線のバイパスが始まり、さらに走ると宇佐美の給油所が現れました。それも、三菱商事エネルギーの看板を掲げた少数派です。三菱の看板というと、自身知る限りでは白河、清水の二ヶ所しかありませんが、この給油所にはさらに変わった点があります。道沿いに建つ看板以外は何から何まで昭和シェルなのです。元々シェルのスタンドだったのが、何らかの理由によって系列が変わり、このような形になったのでしょうか。真相はともかく、宇佐美の中でも全国屈指の変わり種なのは間違いありません。
ちなみに、あと10km少々で通算19万7500kmに達します。今後の活動予定を考えると、花見の旅の序盤までには大台に乗るでしょう。18万kmが去年の三月、その半年後には19万kmに達していたことを考えると、一年でほぼ2万kmを走ったことになります。年間1万5千km前後の走行が定着して久しい中、全盛期を彷彿させる走りだったわけですが、それほど走った気がしないのが不思議です。
コメント

春まだ浅い仙台へ 2018 - 勿来駅

2018-02-03 08:07:11 | 東北
前回会津を訪ねたときは、高速道路を一切使わず走り通しましたが、仙台まで行くとなれば多かれ少なかれ頼らざるを得ません。四の五のいわず首都高から常磐道に入り、いわき勿来で下りました。まずは勿来駅を定点観測していきます。
高さに対して間口が狭い、切妻の大きなファサードを持つ木造駅舎が健在です。外壁は漆喰からベージュの塗り壁に一新されており、焦茶に統一された瓦屋根、腰壁、窓枠との対比も好ましいものがあります。古い駅舎は維持費をかけずに取り壊すか、さもなければ余計な改装をして台無しにしてしまうのがJR東日本の悪弊ですが、この駅舎が数少ない例外となってくれたのは幸いです。
コメント