日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

色づく秋の九州へ 2013

2013-11-01 22:20:41 | 居酒屋
二軒目を一軒目に繰り上げたことにより、再びスライド登板の必要性が出てきました。続いて訪ねるのは本来明後日に予定していた「一耕」です。

この店との出会いは、五連泊した昨秋の第一夜でした。日曜の晩で選択肢が限られる中、流れるような文字で半紙にしたためられた店先の品書きに目がとまり、思い切って飛び込んだところ当たりだったという思い出の残る店です。
一年ぶりに訪ねると、前回主に接客してくれた女将の姿がなく、無口で職人気質の親方が一人でカウンターに立っています。一階はカウンターのみで六席、二階に座敷はあるものの、カウンターと厨房の狭さを考えると、それほど大きな店ではないのでしょう。厨房と客席との間を仕切る簾の使い方、頭上に張り出された店先と同じ半紙の品書き、氷を盛ったステンレスケースとぴかぴかの魚、銀杏など季節の野菜を盛ったざるなど、カウンター回りを眺めるだけでも楽しめるよい店です。

店先の品書きにもあった通り、ここではそばが名物のようで、折しも親方が先客のために黙々とそばを切っているところでした。新そばの季節だけに食指が伸びかけるものの、後にラーメンが控える状況では自制せざるを得ません。まずは焼酎だけ注文し、あとは品書きを眺めつつ組み立てを考えます。
そうこうする間に差し出された突き出しは、小蛸と煮貝、にがごりと茄子の味噌炒めという三品で、これならあと一品選べば二軒目には十分です。それではその一品に何を選ぶかと思案するに、候補は四つに絞られました。まずは薩摩の秋の風物詩である秋太郎、次いでこれも九州らしいあらかぶの煮付け、あとは揚げ銀杏に鶏刺しです。土地と季節を考えれば何といっても秋太郎というところ、いかんせん値が張ってしまい、同じ値段で銀杏と鶏刺しが両方選べるかと思うと手が出づらいものがあります。結局、一軒目に続いてまたしても鶏刺しという選択に落ち着きました。
馬鹿の一つ覚えというなかれ。一口に鶏刺しといっても、店によって使っている鶏はもちろん部位や切り方などがそれぞれ違い、はしごをしても飽きることはありません。しかしてこの店の鶏刺しは、皮と身を別々に切ったもので、一人客には十分すぎるほどの丸く大きい皿に気前よく盛られてきました。あらかた腹が満ちたところで席を立ちます。

一耕
鹿児島市千日町4-12
099-227-2308

焼酎
突き出し三品
地どり刺身
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色づく秋の九州へ 2013

2013-11-01 21:13:04 | 居酒屋
天文館では再訪に絞るつもりでいたところ、いきなりの誤算が。一軒目に予定していた「ぶんご」が閉まっていたのです。よく見ると店先には当分休業との小さな張り紙が。親方に何かあったのでしょうか。再会を楽しみにしていただけに残念ですorz
もっとも、一軒二軒振られても、天文館なら呑み屋の選択肢には事欠きません。二軒目に予定していた「菜菜かまど」を繰り上げて投入します。

何度か訪ねた店だけに、勝手はおおよそ分かっています。明日屋久島へ渡ることを考えると、酒は当然三岳ではなく八幡でしょう。黒板の品書きと目の前の冷蔵ケースをざっと眺めれば、肴の組み立てもおおよそ決まってきます。冷蔵ケースに鯖があるためまずこれを選び、前回いただいて秀逸だった鶏刺しを続け、あとは腹具合に応じて一品二品といったところでしょうか。品数がある程度限られているのもさることながら、独酌にはおあつらえ向きの雰囲気からして、たらふく飲み食いするよりは、本当によいものを二、三選び、むしろ酒をしみじみ楽しみたいという気分になるわけです。
鯖は皮も切り口もぴかぴかに光って、見た目からしておいしそうです。一年間待ち焦がれた半解凍の鶏刺しも当然ながら秀逸。そうして二品を片付けると同時に、最初に頼んだ酒一合が空きました。もう一合追加するにもやぶさかではないものの、二軒目もあるため余力を残して切り上げます。これほどの名店が軽く一杯引っかける場で終わるのですから、やはり天文館の酒場の充実ぶりは突出しています。

菜菜かまど
鹿児島市山之口町10-18
099-225-7588
1800PM-2400PM(日祝日定休)

八幡
突き出し(レバー中華風炒め)
鯖刺
とり刺
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色づく秋の九州へ 2013

2013-11-01 20:50:15 | 九州
鹿児島に着き、只今投宿して一息つきました。熊本で後ろ髪引かれるところをどうにか振り切ったこともあり、先ほどのうどんから時間が空いて腹もこなれてきました。今夜は万全の状態で酒場めぐりに望めそうです。
昨年五連泊しても征服しきれなかった天文館だけに、たかが二日で心ゆくまで呑み歩くのは当然ながら不可能です。今回は新規開拓に走らず、再訪のみで固めることにします。〆のラーメンを含めて三軒四軒はしごできれば、全てとは行かないまでも主なところは押さえられるでしょう。熊本で通りせざる得なかった分、天文館では借りを返させてもらいます(ニヤリ)
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色づく秋の九州へ 2013

2013-11-01 18:48:53 | 九州
熊本で呑みたいという悪魔のささやきを振り切り、再び新幹線に乗って鹿児島へ向かいます。教祖おすすめの「瓢六」を再訪したかったのですが、天文館と引き替えにすることまではできませんでした。
もっとも、今回見送ったからといって、「瓢六」が天文館の呑み屋に劣っているとは思いません。根本的な理由は酒の違いです。というのも、清酒文化圏と焼酎文化圏の狭間にある熊本、長崎、大分の三県は、地の酒を選ぼうとしたとき非常に中途半端なのです。酒と肴と居心地を楽しむのが酒場めぐりの楽しみだとすれば、「酒」だけが画竜点睛を欠いているわけです。
このように、熊本の呑み屋に必ずしも不満があったわけではなく、鹿児島がそれ以上に魅力的だったといった方が正確ではあります。しかも熊本がとりわけ不利なのは、新幹線に乗れば福岡にも鹿児島にも一時間弱で到達できてしまうことです。九州の双璧に挟まれては、素通りにならざるを得ないのも致し方のないところでしょう。
このような環境からして、次に熊本で呑む機会がいつ巡ってくるかは未知数ながら、いつの日かあのおでんと馬肉を肴に一献傾けたいものです。また来年…

★熊本1845/さくら563(563A)/1942鹿児島中央
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色づく秋の九州へ 2013

2013-11-01 17:02:55 | 九州
熊本での全行程終了です。これで本当に11月かと思うほど、終始汗ばむ季節外れの陽気でした。しかし、ソメイヨシノの並木はすっかり葉を散らして裸になり、「ヒライ」の店内では今年初めてクリスマスソングが流れて来ました。九州の季節感は少し変わっているようです。
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色づく秋の九州へ 2013

2013-11-01 16:25:51 | B級グルメ
四時を過ぎたところで線路がほぼ日陰に隠れ、撮影は否応なく終了と相成りました。出発以来先ほどのMOS以外飲まず食わずで腹も減ってきたため、ここでおやつ代わりに軽食をとります。
あと少しで呑み屋が開く頃合いだけに、それまで待つにもやぶさかではないのです。しかし、この後天文館に注力しなければならないことを考えると、残念ながら熊本で一杯引っかけるという選択はとりづらいものがあります。だからといって、熊本で飲み食いしたものがMOSだけでは余りにお粗末です。せめて一つは熊本らしいものをと考えたとき、自分の答えは一つに決まっていました。太平燕、ではなく「ヒライ」のうどんです。
このblogでなじみの深いところでいうなら、石川の「すしべん」とまさに同じ業態にに属するチェーンです。関東の方なら、「オリジン弁当」で麺類と丼物がいただけるようなものだと思ってもらえばよいでしょう。去年は時間に追われ素通りせざるを得なかったこともあり、二年ぶりにいただくうどんの味は格別です。

★元気ダイニングヒライ東町店
熊本市東区健軍本町53-3
096-369-3502
24時間営業
W海老天牛肉うどん390円
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色づく秋の九州へ 2013

2013-11-01 15:10:33 | 九州
とりあえず終点の健軍町まで乗り通しました。まだ三時だというのにほとんどの区間で建物の影が軌道に落ち、撮影に適した場所がなかなか見つかりません。決して高い建物などではなく、二階建てか三階建てがせいぜいだというのにです。要はそれだけ日が短くなっているということです。
どうにか開けた場所を見つけてカメラを構えはしたものの、ここもそう長くは滞在できないでしょう。とりあえず条件の許す限り撮影します。
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色づく秋の九州へ 2013

2013-11-01 13:51:54 | MOS
はるばる熊本くんだりまで来ておきながら芸のない話ではありますが、まずは駅舎内で赤看板を掲げる昔ながらのMOSに立ち寄ります。その名もJR熊本店です。
この店の最大の特徴は、横長の長方形にMマークとMOS BURGERのロゴを収めた細長い赤看板が使われていることです。上下方向に余裕のないスーパー併設店やアーケード内の店舗によく用いられていたもので、駅構内の店舗としては、アスティ岐阜店などでも近年まで使われていました。
スペースに制約のある駅構内ということもあり、先日訪ねた千葉小倉町店などのような、感嘆するほどの凝った造りをしているわけではありません。しかし、タイルで飾り、冷蔵ケースとステンレス焼き付けのMマークを埋め込んだレジカウンターと、客席のテーブルと椅子は往年そのままです。九州新幹線とSLの写真を額に納め、店内の至るところに掲げているのも駅構内の店舗ならではです。

モスバーガーJR熊本店
熊本市西区春日3-15-1
096-359-0976
700AM-2300PM
第1097号
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色づく秋の九州へ 2013

2013-11-01 12:58:53 | 九州
今度こそ荷物を預けて、ようやく実質的な活動開始となります。第一声はとにもかくにも「暑い」の一言です。もちろん、夏の暑さに比べればどうということはないにしても、「暖かい」と表現すべき範囲を明らかに超えています。遠景のかすみ具合といい、花見の頃から大型連休にかけての陽気が一番近いかもしれません。熊本でこれなのですから、鹿児島では一体どうなっているのでしょうか。あと一週間足らずで立冬とはとても思えません。
もっとも、一昨年全く同じ時期に九州を旅したときは、さらに湿度まで加わり救いようのない暑さでした。それを思えば今日の方がはるかにましではあります。現代の晩秋の気候とはこんなものなのでしょう。
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色づく秋の九州へ 2013

2013-11-01 12:28:44 | 九州
さて、まずは荷物を預けて行動開始という段階なのですが、それ以前に駅の造りが秀逸で思わず立ち止まってしまいました。
まずホームの待合室のベンチが焦茶色をした天然木で、床にも同色のフローリングが奢られています。コンコースに下りると今度は熊本らしく畳地のベンチが並んで、床は同じく焦茶のフローリングです。壁面はグレーとベージュで統一された石のタイルを基本としつつ、所々に焦茶の下見板張を効果的に使い、天井にもやはり焦茶の羽目板が。ダウンライトを効果的に使った照明も凝っています。
味気なく思える高架駅でも、やればここまでできることを示したという点では、去年訪ねた大分駅と並ぶ双璧ではないでしょうか。時折ホームから流れてくる陽気な発車メロディもまた楽しいものがあります。汽車旅をしていてこれほど立て続けに高揚感を味わえるのは、全国広しといえども九州だけでしょう。
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色づく秋の九州へ 2013

2013-11-01 12:06:47 | 九州
熊本に着きました。先日岡山を訪ねた際、熊本との類似点について述べたことがあります。城と路面電車があって、近年政令指定都市にもなった街だというのに、岡山は広島と四国の、熊本は福岡と鹿児島の影に隠れてしまい、なかなか足が向かないということです。実際のところ、熊本では去年一昨年も町外れの温泉に立ち寄っただけで、三年前四年前も夜遅くに着き居酒屋で呑んだに過ぎません。日中に数時間単位で滞在するのは、blog開設後に関する限り初めてのことです。
今回も特にどこへ行く当てはないものの、とりあえず駅に不要な荷物を預け、市電の一日乗車券を買い求めて、乗車と撮影がてら市内を回ります。再び新幹線に飛び乗れば、鹿児島までは一時間とかからずに着くため、時間を気にする必要はないでしょう。
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色づく秋の九州へ 2013

2013-11-01 11:33:24 | 九州
博多に着きました。ここから先は特急料金が通算されないため、本来なら途中下車しない手はありません。しかし、復路で若干の滞在を予定しているため往路は素通りとし、早々に熊本へ向かいます。列車を一本見送って乗車したのは、孤高の新幹線800系です。
グリーン車にも引けをとらないほど立派な四列のシートには、何と天然木が奢られており、西陣織のシートモケット、簾を使ったブラインドなど、随所に小粋な演出がなされています。従来の鉄道車両の延長線上では考えられない斬新な工夫が凝らされているのは、九州の特急電車に共通する特徴ながら、豪華さ、斬新さというより上品さと格調高さを第一に感じるのが、この形式ならではの特徴です。
全線開業時に投入されたN700系も悪くはないものの、この車両はあらゆる新幹線電車の中でも別格といった感があります。居住性の高さにかけてはかつての100系と並ぶ双璧であり、普通車に関する限りは文句なしの最高峰といってもよいでしょう。トンネルが多かったり防音壁が高かったりで、車窓にかけては話にならない九州新幹線ですが、それを補って余りある名車です。
博多から熊本まで短区間の運用ということもあり、車内はもったいなく思えるほど閑散としています。座席は見かけ倒しではなく実際の座り心地も上々で、頭部のクッションの感触は、E5系の安っぽいウレタンシートなどとは比べものになりません。この座席に悠然と腰掛け、熊本までの小一時間の移動を楽しみたいと思います。

★博多1117/さくら301(5301A)/1156熊本
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色づく秋の九州へ 2013

2013-11-01 09:56:25 | 中国
只今広島を発車しました。博多まであと一時間です。
たとえば東北新幹線を新青森まで乗り通すと、一も二もなく「長かった」という気分にさせられるものです。ところが、今回は時間も距離もそれより長いというのに、もう広島かと思うほど呆気なく感じます。この違いは一体何なのでしょうか。
以前語った通り、東北新幹線も盛岡まではあっさりしたもので、そこから先が長いのです。その理由としては、トンネルばかりで車窓が単調になることと、停車駅が増えることの二点が考えられます。しかし、トンネルばかりなのは山陽新幹線も同じなので、本質的な理由は後者にあるのでしょう。停車駅が増えれば長く感じるなど至極当然とはいえ、実際旅をしてみなければ、こんなことにも気付きません。これだから旅はやめられないのです。
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色づく秋の九州へ 2013

2013-11-01 09:52:20 | 中国
福山を過ぎ、いよいよトンネルばかりで単調になってきました。しかし、一瞬トンネルを抜けると、車窓には赤い瓦の家々が。同じ中国地方でも、岡山と広島とでは全く違うと即座に分かる光景です。金と時間をかけてまで汽車旅を選ぶのは、こんな瞬間のためと言っても過言ではありません。
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色づく秋の九州へ 2013

2013-11-01 09:31:26 | 中国
山陽新幹線に入り、目に見えて変わったことが車窓の他にもう一つあります。乗り心地が悪いのです。しかも、岡山を出てから揺れがますますひどくなってきました。以前同様のことを申しましたが、今回も同じように感じるということは、やはり気のせいではないのでしょう。
98歳にして今なお健在の元国鉄総裁が、突貫工事で造った山陽新幹線は東海道新幹線より劣化が早いと語っていたのを最近目にしました。速度が上がったり、盛土が高架橋に変わったりといった違いはあるにしても、軌道の劣化は素人でも即座に分かる程度まで進んだようです。北海道ばかりが袋叩きに遭っている昨今ですが、一年内に両方乗った経験からすると、こちらの方がよほど危うく思えてきます。MOSの店舗と同様、雑に造ったものは寿命も短いという好例ではないでしょうか。
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