日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

最後のランチ(6)

2013-11-29 22:20:32 | B級グルメ
今月最後の平日が終わり、今の職場に出勤するのも今日が実質的な最終日となりました。ならばランチは「津つ井」で締めくくったかというとさにあらず。最後を飾ったのは何の関係もない韓国料理店でした。

最終週を振り返ると、月曜はそもそも赤坂で昼食をとっておらず、その後の四日もblogで取り上げたのとは違う店を渡り歩きました。結局、「最終週に行きたい店」などと称して五軒を挙げておきながら、ただの一つも予告通りにはならなかったということです。
理由は気分次第といってしまえばそれまでですが、より具体的な理由を挙げるとすれば、移転するといってもわずかな距離だけに、最上位の店には今後も世話になる可能性が高く、これが最後という実感が湧かなかったということでしょうか。むしろ、それより優先順位が低かったり、新しい職場から遠かったりして、今後滅多なことでは足が向かなくなりそうなところを選んだ結果、上位五傑が一つも登場しないという予想外の結果となった次第です。韓国料理店を選んだのも、新しい職場からわざわざ足を運ぶ可能性が低く、なおかつ赤坂らしいものをと考えた上でのことでした。

韓国料理が赤坂らしいと聞いて、何がと思われた方もいらっしゃるでしょう。実は、知名度こそさほど高くはないものの、赤坂は都内屈指のコリア街なのです。マスコミが仕掛けた「韓流」なる波に乗って新大久保がすっかり俗な街と化す中、赤坂の街はそのような一過性の動きに左右されることもなく、古くからのコリア街の姿を保っています。
赤坂における韓国料理店の数たるや、下手をすれば中華料理店の数よりも多いのではないでしょうか。それほどの数にもなると、中華と同様通う店は自ずと固定化されてきます。その際決め手になるのは、味もさることながら、何より韓国らしさが出ているかどうかです。
もちろん生まれてこの方国外に出たことのない人間ですから、「韓国らしさ」が何であるかについて多くを語る資格はありません。しかし自分なりに、「いかにも」と思う点をいくつか挙げることは可能です。まず、ほとんどの店に共通するのは、店員はもとよりお客の相当数が韓国人であること、何を注文してもキムチが二種と小皿のおかずが三種ほど出ることです。それに加え、多くの店では箸、匙、お椀に丼など食器の多くが金属製で、お茶はトウモロコシ茶が定番になります。そのお茶が、家庭で麦茶を注ぐようなポリ容器で出てくれば、まさに手本通りの韓国料理店といったところでしょうか。
このような形式面が満たされれば、あとは肝心の中身次第になります。しかしここで重視するのは主菜ではなく、むしろキムチとおかずの方です。というのも、店ごとの差がつきやすいのは、主菜よりもこれらの副菜だからです。これをおざなりにする店では、たとえば呑み屋のお通しか珍味盛りにでも使いそうな皿に、申し訳程度のおかずを盛ってくることが多く、あくまで「おまけ」のような扱いです。これに対し、いい店では手間暇かけた惣菜が一つ一つ小皿に盛られてきます。それでいながら、どこへ行っても値段は大して変わらないのですから、後者を選びたくなるのは当然というものでしょう。

かような観点からすると、本日最後を飾った「ヌルンジ」は、最上級の部類に属する店です。上記の形式面で該当していないのは、お茶がトウモロコシ茶でないことと、その容器がどこの飲食店にもある樹脂製の平凡なものであることの二点だけです。キムチは自ら鋏で切り分ける壺入りのカクテキと、小皿で出される白菜キムチの二種。他に四品出てくる小皿は、ほうれん草の白和え、ジャガイモとベーコンの炒め物、蓮根の煮付けと肉じゃがでした。このように、韓国料理の惣菜といっても、チヂミなど素人が思いつきそうなものではなく、日本人にも親しみやすい家庭料理が手を変え品を変え供されるところに、店の創意工夫が現れるのです。
もちろん、これらのおかずはあくまで副菜であり、他に主菜が出てくるわけですから、分量としてはかなりのものです。人並み以上の大食である自分も、韓国料理店では主菜とおかずだけで満腹になり、ご飯は一膳限りとするのが常です。中華料理と違って激安の店がなく、どこも総じて800円から1000円あたりが相場ながら、豊富なおかずで目一杯腹を満たしたいなら、赤坂では韓国料理を選ぶのが一番ではないでしょうか。

これほど充実した韓国料理ですが、唯一にして最大の欠点は、沖縄料理などと同様「続けると飽きる」ということです。普段食べ慣れないものだけに、目新しさにつられる部分が大きく、その分飽きが来るのも早いということなのでしょう。私自身、韓国料理を選ぶのは月一、二回がせいぜいで、数ヶ月にわたって間が開くことも少なくありませんでした。
しかし、本場仕込みの豊富な品書きと、副菜とは思えないほど充実したおかずは、さすが都内屈指のコリア街というべきものでした。これを知った今となっては、もはやそこらの中途半端な韓国料理店では満足できないでしょう。開眼させてくれたことに感謝したいと思います。

ヌルンジ
東京都港区赤坂2-13-8 赤坂ロイヤルプラザ1F
03-3589-2583
1100AM-1430PM/1700PM-500AM
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