日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

最後のランチ(3)

2013-11-19 22:24:48 | B級グルメ
職場の移転に端を発したランチの記録ですが、気付けば11月も下旬に入り、最終日まで秒読み段階になってきました。本日は最後から三日目に行きたい店を語ります。

自分にとって、ランチの選択肢として一つか二つは押さえておきたいのが中華料理です。品数が豊富で、なおかつどれも満腹になるという点では、なんといっても中華料理が一番だからです。
もちろん、世の中にごまんとある中華料理店も玉石混淆ですから、日頃から通う店は自ずと固定化されてきます。味はもちろんのこと、店の雰囲気と接客、さらには職場からの距離などいくつかの点を踏まえて、気に入った店を一つか二つに絞るというのが、前の職場の頃から続く自分の流儀です。かような観点から最も愛用したのが「露天」でした。

赤坂のランチである程度満足できる店を選ぶなら、千円が相場だと以前申しました。一方、安く上げようとするなら、最も手堅いのが中華料理です。職場の近くでいえば、赤坂二丁目の交番の近く、韓国料理店と中国料理店が軒を連ねる一帯に、とりわけ安い店が集中しています。この一帯だけは、600円台、700円台のランチも珍しくありません。ところがこの「露天」は、中華料理店が密集する一帯から少し離れた、赤坂の繁華街の外れにあります。しかもランチは1050円からで、過半数が1260円という強気の価格設定です。それでいながら商売が成り立っているのは、とりもなおさず内容が伴っているからです。
「おまぜ」一本の「鮨兆」に対し、十数種から選べる豊富な品書きは中華料理ならではといった感があり、なおかつどれを選んでも外れがありません。しかし、呑み屋と同様、日頃から通う店では注文も自ずと決まってくるものです。自身とりわけ好んで注文するのは、麻婆豆腐のかけご飯、豚肉と高菜の辛みチャーハン、牛肉と野菜のピリ辛かけご飯といったところでしょうか。
中でも、初見の人に勧めたいのは麻婆豆腐と担々麺です。というのも、ここの麻婆豆腐と担々麺が、山椒の辛みを引き立たせた独特のものだからです。日本人の味覚に合わせ、辛さを控えめにして胡麻の風味を効かせた担々麺が多い中、ここの担々麺はそのような迎合した真似を好みません。麻婆豆腐にしても、唐辛子ではなく山椒で辛みを引き立たせているところが個性的なのです。だからといって四川料理に凝り固まっているわけでもなく、辛みチャーハンにピリ辛かけご飯などは、一転して唐辛子の辛みが活かされています。それも一般的な鷹の爪ではなく、そのまま噛めば舌がたちまち麻痺するような激辛の唐辛子を、ごく少量使うことによって辛みが出ているのです。いずれについても辛さを売り物にするわけではなく、吟味した素材の持ち味を活かす、ほどよい辛さと形容するのが適切でしょう。

もう一つ特筆すべきは居心地のよさです。古びたマンションの一階と二階を使った店舗は、和風の玄関と急な階段からして、かつては住居だったか、さもなければ和食屋か何かだったのでしょう。その店内はこぎれいに改装されており、玄関から中へ入ると、通路の左の窓からぴかぴかに磨かれた厨房が見え、そこを抜けると客席があり、突き当たりから階段が二階へ続くという造りになっています。中華料理につきものの円卓がなく、一階、二階とも十数人入れば満席という小さな店です。その分接客は細やかで気持ちよく、急須で出される中国茶とデザートも上品そのもの。中華料理にしては女性客が多いのも宜なるかなといった感があります。
もちろん、女性受けを狙って上品さばかりを追い求める店なら、無数にある飲食店の中から五指に入ることはなかったでしょう。質量ともに十分で居心地もよく、少々強気な価格設定にも納得できるよい店だけに、新しい職場から徒歩圏外となるのがまことに惜しまれます。しかし、昼休みに行き来できないほど遠く離れるわけでもありません。これからも時折自転車を漕いで行く可能性は十分にありそうです。

中国名菜 露天
東京都港区赤坂2-15-10 花柳ビル1F
03-3568-3238
1130AM-1430PM(LO)/1730PM-2200PM(LO)日曜定休
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