春はあけぼの。空はいたく霞みたるに、やうやうしろくなりゆく山ぎはのすこしづゝあかみて、紫だちたる雲のほそくたなびきたる。
(枕草子~前田家本)
早ほのぼのと明けなんず春の曉(あかつき)、峰の嶺、空の雲ならで、まだ照り染めぬ旭影。霞に鎖(とざ)せる八つの谷間に夜(よる)尚ほ彷徨(さまよ)ひて、梢を鳴らす清嵐に鳥の聲尚ほ眠れるが如し。
(高山樗牛・瀧口入道~バージニア大学HPより)
守覚法親王家に五十首歌よみ侍けるに、春歌 源師光
山の端も空もひとつにみゆるかなこれやかすめる春の明ほの
(新勅撰和歌集~国文学研究資料館HPより)
建暦二年の春、内裏に詩歌を合せられ侍けるに、山居春曙といへる心をよみ侍ける 六条入道前太政大臣
月影の木すゑに残る山のはに花もかすめる春の明ほの
(新勅撰和歌集~国文学研究資料館HPより)
はなはいさそこはかとなくみわたせはかすみそかをるはるのあけほの
(式子内親王集~日文研HPより)
さやかなる秋にも勝るあはれかな月影霞む有明の空
(六百番歌合~岩波文庫)
おもひそめきよつのときにははなのはるはるのうちにはあけほののそら
(夫木抄~日文研HPより)
やまかけやはなのゆきちるあけほののこのまのつきにたれをたつねむ
(秋篠月清集~日文研HPより)
春のあけぼの花見けるに鶯の鳴きければ
花の色やこゑにそむらむ鶯のなく音ことなるはるのあけぼの
(山家集~バージニア大学HPより)
千五百番歌合に 寂蓮法師
何となくさへつる山の鳥のねも物のあはれは春の明ほの
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより)
建保内裏の百番歌合に 八条院高倉
これならて何を此世に忍はまし花にかすめる春の明ほの
(新後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)
此の世には心とめじと思ふまにながめぞ果てぬ春の曙
(六百番歌合~岩波文庫)
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