鷗 三好達治
つひに自由は彼らのものだ
彼ら空で恋をして
雲を彼らの臥床(ふしど)とする
つひに自由は彼らのものだ
つひに自由は彼らのものだ
太陽を東の壁にかけ
海が夜明けの食堂だ
つひに自由は彼らのものだ
つひに自由は彼らのものだ
太陽を西の窓にかけ
海が日暮れの舞踏室だ
つひに自由は彼らのものだ
つひに自由は彼らのものだ
彼ら自身が彼らの故郷
彼ら自身が彼らの墳墓
つひに自由は彼らのものだ
つひに自由は彼らのものだ
一つの星をすみかとし
一つの言葉でことたりる
つひに自由は彼らのものだ
つひに自由は彼らのものだ
朝焼けを朝(あした)の歌とし
夕やけを夕べの歌とす
つひに自由は彼らのものだ