monoろぐ

古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

「月の鏡」用例

2018年09月27日 | 日本国語大辞典-た行

 「月の鏡」という用語の「月をうつした池を鏡に見立てていう語。」という語釈は、日本国語大辞典・第2版では、『新後拾遺和歌集』(1383-84年)からの例を挙げていますが、もっとさかのぼる用例があります。

いく秋の月のかゝみと成ぬらんかけみる人のおほさはのいけ
(巻第百七十・正治二年第二度百首和歌、女房越前、つき)
『群書類従11』1993年、262ページ


「月のやどり」という語

2018年09月27日 | 日本国語大辞典-た行

 日本国語大辞典・第二版には「月のやどり」という語は立項されていませんが、「月の宿」よりも古例があるので、こちらをむしろ立項した方がよいのではないでしょうか。
 語釈としては、「月の光が一時的にとどまること。月の光のとどまるところ。」という意味だと思います。

なにはえや-いりえのあしは-しもかれて-つきのやとりそ-くもらさりける
(俊成五社百首~日文研HPより)

露ならで月(つき)の宿(やど)りは誰か知るもの思ふ袖の涙なりけり
(巻第十五・雑歌二、3006)
『万代和歌集・下(和歌文学大系14)』安田徳子、明治書院、2000年、145ページ

秋はたたいく夜の露も袖におち月のやとりをいかにうつさて
(仙洞五十番歌合~日文研HPより)

苔ごろもつゆけき袖のとるかたは月のやどりとなるにぞ有りける
(39・延文百首、空静、秋二十首、月、2348)
『新編国歌大観 4』1986年、角川書店、579ページ

秋はたゝ袖こそつきのやとりなれ草木の露は風しほるなり
(42・後崇光院1・沙玉集、235)
『私家集大成 5巻(中世3)』和歌史研究会編、明治書院、1983年、466ページ

行舟を木の間の山路海晴て
月のやとりをとふ人もなし
山の端をなかむるかたの限にて
(巻第四百八十九・壁草、第八・雑連歌上)
『続群書類従・十七輯下(訂正三版)』1958年、996ページ

露ならで月のやどりもなかりけり蓮にうづむ庭の池水
(海人の刈藻)

水にすむ影は手にだにとられねど月のやどりは疑もなし
『礼厳法師歌集』与謝野礼厳(尚絅)著、与謝野寛校、明治書院、1910年、13ページ


「月の宿」用例

2018年09月27日 | 日本国語大辞典-た行

 「月の宿」という用語は日本国語大辞典・第2版では、『無言抄』(1598年)からの例を早い用例として挙げていますが、もっとさかのぼる用例が複数あります。

秋の田のつゆしくとこのいなむしろ月のやどとももるいほりかな
(続後撰和歌集、巻第六・秋中、362、後鳥羽院下野)
『新編国歌大観 1』1983年、角川書店、395ページ

夜もすがら露もよすがにむすばれて月のやどなるしののかり庵
(38・文保百首、藤原為実、秋二十首、2342)
『新編国歌大観 4』1986年、角川書店、528ページ