牛込日乘

日々の雜記と備忘録

フレデリック・ダグラス自伝

2007-04-29 23:45:02 | Book Review

 午後は定例の勉強会に出席。課題図書はフレデリック・ダグラスの自伝。アフロ・アメリカン研究では基本中の基本文献らしいのだが、まったくの初読。南北戦争以前の1845年に書かれたものとのことだが、のちに政治家として活躍する雄弁家の手になるものであるせいか、意外に読みやすかった。自由、そして自由になるための知性を獲得するために白人の主人に妨害されながらも字を覚え、暴力と搾取に耐えながらついに自由州(ニューヨーク)への逃亡を獲得するまでの道のりにはやはり感動する。圧倒的な暴力と巧妙な監視システムの中で、「よい奴隷」になって少しでも主人のご機嫌をとろうとするという小賢しい選択をせずに、身を危険にさらしながらも「私は本質的に自由である」という意識を持ち続けられたのは、やはり知性の力があってこそだろう。

 使用したModern Library版には Harriet Jacobs "Incidents in the Life of a Slave Girl" も収録されていたがこちらは未読。レポーターの発表を聞いていたが、こちらは女性であるがゆえにさらに身分が複雑で、興味深い内容だった。一口に黒人あるいは黒人奴隷といってもその立場はさまざまで、とにかく少しでも黒人の血が入っていれば、見た目には白人とまったく区別が付かなくても黒人になるし、身分的にも奴隷であるということがありえた。奴隷を使う立場の白人男性から見ると、黒人女性というのはセックスの対象として非常に魅力的なものなのだそうである。カネに結びつく労働力としても、イロの欲望を満たすための性的奴隷としても、黒人女性の受けてきた過酷な運命というのはちょっと想像を超えるものがある。

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Narrative of the Life of Frederick Douglass, an American Slave & Incidents in the Life of a Slave Girl  (Modern Library MM)


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