とりあえず法律・・・・かな?

役に立たない法律のお話をしましょう

為政者は法を守れ

2013-01-20 01:08:00 | 指定なし

 大阪市の橋下市長が,桜宮高校の入試中止や教員の総入れ替えに慎重な市教委に対して,予算を“人質”に圧力をかけたという。


 


 市長の言う内容は,桜宮高校を含め,教育機関のあり方を正すという意味では,ある意味正当かもしれないが,それが哲学や価値観の問題であるとして,教委に従うことを要求するというのであれば,それは,教育委員会に対する政治介入である。


 


 日本において,地方公共団体の中に,教育委員会を設置し,公選首長との間に一線を画しているのは,教育に対する政治介入を防止するためである。今回の橋下市長の発言は,自らが市長の立場にあることに基づき,市長が左右することのできる予算や教育庁や教育委員の人事を盾にとって,自らの個人的な意図を実現しようとするものであって,明らかに政治介入といわなければならない。


 


 そのことは,自分が間違っているというなら,選挙で落とせという発言にも現れている。


 


 しかし,いくら公選首長であっても,現に施行されている法律は守らなければならない。それは,国民一般の義務であるとともに,特に,為政者にとっては大きな義務であるといわなければならない。なぜなら,法の支配,それを行政のレベルに落とし込んできた法律による行政の原理は,法律によって,行政が,為政者個人の意志(悪くいえば恣意)に左右されることを防止するという大きな目的があるからである。そもそもが憲法が,そして,憲法の本で制定された多くの法律が,いろいろな批判はあるにせよ,これが為政者の手足を縛り,その恣意によって行政が左右されることを防ぐという実際の機能を有してきたことは間違いないところである。


 


 だから,為政者としては,法律があることによって,自らの考える施策が実施できなくとも,法には従わなければならないのである。仮に,今回の橋下市長の意見が正しいとしても,ここで教育に対する主張の政治介入を許してしまえば,それが先例となって,正しくない考えによる介入も許される恐れが生じてくる。


 


 市長は,政治的に変更しているとされる教職員組合の政治介入を排除しようとしている。しかし,そうであれば,そうであるだけに,自らによる政治介入も自制しなければ,言うことが一貫していない。


 


 たしかに,現状では,桜宮高校における教育の暴力体質の排除をどうやって実現するかという問題と,現に桜宮高校で学び,あるいは,桜宮高校で学ぶことを志す生徒の利益をどうやって護るかという問題とが相克している状況にあり,それは,一種の政治問題であると思える。


 


 しかし,その政治問題を解決するのは,個人の政治介入を志す首長からは独立した,教育委員会の仕事であって,首長ではない。


 


 いくら選挙での支持が高いからといって,選挙による支持は万能ではない。選挙による支持があるからといって,公選首長が法律を守らないというのであれば,それは法によらない独裁制でしかない。


 



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