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阪神電気鉄道 9000系電車

2012-09-11 02:12:50 | 電車図鑑・私鉄電車(関西)
平成7年1月17日に発生した阪神大震災による石屋川車庫の倒壊などで被災して廃車になった
「赤胴車」と呼ばれる急行用車両の補充のために登場した車両である。
平成8年に6両編成×5本=30両が製造された。
製造を担当したのは川崎重工である。

編成の組み方は阪神梅田・近鉄奈良側から以下の通り。

9201形+9101形+9001形+9002形+9102形+9202形

9201形&9202形:制御車。末尾番号は9201形は全て奇数で9202形は全て偶数となる。
 以下に続く中間車も同じ番号法則を取る。9201形は1000系付属編成との連結機能を備える。
9101形&9102形:中間電動車。主制御装置と集電装置を搭載している。
9001形&9002形:中間電動車。補助電源装置とエアコンプレッサーを搭載している。

上記の通りの番号法則なので第1編成の場合は以下の通りの車番となる。
9201編成:9201+9101+9001+9002+9102+9202

尚、実際の形式は9201形+9101形+9001形であるが本記事では便宜上、この様な
形式分けを行った。
この番号法則は8000系電車や1000系電車、ジェットカーの5500系電車などでも
採用されている。

車体は5201形5201+5202号車「ジェットシルバー」以来のステンレス車体で先頭部分だけ
鋼鉄製となっている。
当時の阪神電鉄では基本的に普通鋼製車がメインであったが、本形式でのステンレス車体の
採用は早期に急行形車両の復興が必要であったため、これを採用した。
また製造メーカーが系列の武庫川車両ではなく、川崎重工になったのは武庫川車両が
被災車両の復旧と8000系や5500系の製造で手が空いていなかったためである。
このため、車体構造はJR東日本209系や都営地下鉄三田線6300形電車と同じ2シート構造を
採用しており、ステンレスカー独特のぎらつきを抑えたものとなっている。
正面部分は8000系のものをベースとしつつ3つ折れを強調したスピード感のあるものと
なり、精悍な顔つきとなった。
行先表示と種別表示は正面と側面にあり、いずれも字幕式である。
カラーリングは正面と側面に赤帯とクリーム色の細帯、雨どい部分も赤で塗られている。
また正面左右は上から下まで帯の部分を除いてブラック処理されている。

車内は8000系後期車や5500系のものを踏襲したバケット式のオールロングシートである。
旅客案内装置はマップ式とLEDスクロール式のものが一緒になったものがドア上部に
左右交互に配置されている。
ドアは片側3つドアで全て両引き戸で側面窓は一段下降式である。
肘掛や床の塗り分けなどは8000系の最終増備車に準じている。

主制御装置はVVVFインバータ制御で阪神の急行形電車では初めての採用となった。
5500系とは全く同じ装置であるが、ソフトのセッティングを高速向けにしている点で
異なる。
ブレーキは回生ブレーキ併用電気指令式ブレーキである。
台車は軸箱支持をモノリンク式とした空気ばね式ボルスタレス台車で、高速運転時の
蛇行動防止のためのヨーダンパー取り付けに対応している。
モーターの駆動方式はTDカルダン駆動方式である。
運転台はマスコンを前後動作式、ブレーキハンドルを左右動作式としたデスク型ツーハンドル
マスコンを採用している。
また9001形の新開地・山陽姫路側と9002形の阪神梅田・近鉄奈良側連結部に車庫内での分割と
入れ替え作業の為、連結器を他と変えている他、簡易運転台を設置している。

本形式導入の時点での阪神電鉄の車両の設計方針は飽く迄普通鋼製車至上主義であり、
本形式でのステンレス車体導入も震災のため止むを得ずという論文を鉄道雑誌の
新車紹介記事に載せてしまうほどであった。
しかし、震災で急行形車両は主力車両の8000系や更新改造を終えたばかりの2000系を
中心に被災してしまった(各停用ジェットカーは逆に旧型車ばかりが
損傷した)為、廃車予定で支線に追いやられていた車両を6連に再組成したり、
被災車両でも損傷の程度が軽い車両を集めてどうにか編成をやりくりし、
足りない分は急行以上の列車の減便という対処を取らざるを得なかった状況から
震災前の水準まで復興させた本形式の貢献度は高いといえる。
営業開始後は特急から急行まで幅広く運用に就き、平成10年からは新設定された山陽姫路発着の
直通特急にも充当されるようになった。
9203編成ではヨーダンパーと転落防止幌の長期試験が行われたが、ヨーダンパーは
山陽電鉄からの要望で後に外されている。
平成21年より開始された阪神なんば線経由での近鉄奈良線への相互直通運転開始に伴い、
平成20年より連結器の交換、運転台の改造(マスコン・ブレーキとも前後操作式へ交換)、
9201形への1000系との連結対応改造(幌座取り付け、貫通扉交換、渡り板設置、廻り子連結器
取り付けに伴うスカートの一部切断など)、塗装変更(1000系に準じたヴァーミリオン・
オレンジの帯への変更。正面部は1000系に準じた塗り分けに変更)、客室への近鉄用保安装置
取り付けに伴う乗務員室後方の座席の一部撤去、ドア上部旅客案内装置のマップ部分撤去
(LEDスクロール式だけのものに交換)、正面及び側面にある行先・種別表示のフルカラーLED化、
連結部への外幌の本格設置などの改造を実施した。
この他9207編成は神戸観光のラッピング車に9203編成は平清盛ラッピングトレインに
なっている。
現在の運用範囲は阪神本線内急行以上の各種別と阪神なんば線、近鉄奈良線の各種別で
運用されている(近鉄線内快速急行まで)。
運用によっては阪神に戻らず、近鉄線内で完結する運用や大和西大寺の車庫で滞泊する
運用もある。


○登場時の姿。現在のものと比べるとシックな装いである。


○1000系との連結部分。近鉄線内では最大10連で運用される。


○阪神なんば線が日本鉄道賞を受賞した時のヘッドマーク。
 9207編成以外の神戸側に貼りつけられた。



○9207編成の神戸ラッピング車。神戸の名所やイベントをラッピングしてある。
 正面部分の違いがお分かり頂けるだろうか?



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