小田急電鉄開業60周年記念と21世紀に通じるロマンスカーとして登場した
車両である。
昭和62年~平成元年にかけて11体連接車×4=44両が製造された。
車両愛称の「Hi-SE」は「High-decker/High-grade/High-level Super Express」の
略称である。
編成の組み方は以下の通り。
デハ10000形+デハ10000形+サハ10000形+デハ10000形+デハ10000形+デハ10000形+※
※+デハ10000形+デハ10000形+サハ10000形+デハ10000形+デハ10000形
車番の附け方は新宿側から順に10001、10002…11となり、第2編成は10021~10031、
第3編成は10041~10051、第4編成は10061~10071である。
主制御装置は末尾1・5・7・11号車、エアコンプレッサーは末尾2・6・10号車、
補助電源装置(静止型インバータ)はサハ10000形(末尾3・9号車)と末尾6号車、
集電装置は末尾2・5・7・10号車である。
営業上の号車番号は箱根湯本側から1~11号車の順になる。
車体は鋼鉄製で、先頭部分はこれまで通り、運転席を2階に上げた展望室構造を
採用している。デザイン面ではこれまでよりも先頭部分の傾斜を強くして、
運転席までラインを繋げ、全体にシャープなイメージを醸し出している。
塗装はホワイトに窓周りや側面にワインレッドの帯が入るもので、後に箱根登山鉄道の電車や
大山ケーブルなどの系列会社の電車や7000形「LSE」のリニューアルの際にも採用された。
行き先表示は無く、愛称表示が先頭部側面上部に字幕式のものが設置されている。
車内は、登場当時としても珍しくなったリクライニング機能のない回転クロスシートである。
ただし、背もたれの傾斜角やピッチ、掛け心地を十分に研究して、新宿~箱根湯本間
1時間25分の旅を快適に過ごせるレベルのものとなっている。
テーブルは壁面折りたたみ式のもののみであったが、第2編成から座席背面にも
小型のテーブルが設けられた。座席のモケットの色はブルーとレッドで、
これらがバラバラに配されているものと車内でどちらかに統一されているものの
2種類ある。
1・11号車の展望席と一般席の間の仕切りには折畳みシートが設置されている。
展望席は最前部から後ろの方に向けて徐々に高くなるシアター構造で後方からの
展望にも配慮している。
その他の客室は床を高くしたハイデッカー構造となり、眺望性を向上させている。
ドアは各車両1箇所ずつで全て2枚内折り戸である。なお、先述のとおり、
ハイデッカー構造なので展望席のある1・11号車以外のドア部分にはステップが
設けられる。
電話室は4号車、売店は3号車と9号車、トイレは4・8号車に設置されている。
売店は当時行われていた「走る喫茶室」サービス(※1)に対応して、オーダーエントリーシステム(※2)を
初めて採用した。
主制御装置は抵抗制御で7000形「LSE」車と同等の高速域よりも中低速域での加速性を
重視した設定となっている。
ブレーキは抑速ブレーキ機能付き発電ブレーキ併用電気指令式ブレーキである。
台車は軸箱支持をアルストム式としたダイレクトマウント式空気バネ台車で
基本的な機器類は7000形電車と同等のものをと採用している。
運転台は片手操作式ワンハンドルマスコンである。
登場以来、ごく僅かな期間を除いて、50000形「VSE」登場まで小田急ロマンスカーの
イメージリーダーとして広告などに広く登場した。
また、先述のとおり、自社の特急車のみならず系列各社へも少なからず影響を
与え、昭和63年には鉄道友の会よりブルーリボン賞を贈られている。
平成11年に車体改良工事が行われ、トイレの汚物処理方法が循環式から真空式に
変更になったほか、空気洗浄機を車内に取り付けた。
平成13年にはトイレにベビーベッドを設置した。
運用面では座席配置や性能が、ほぼ同じLSEと共通であり、時刻表や特急券には「L/H」と
表記が入った。
平成11年から約1年ほど「イタリアンエクスプレス」と称して第3編成にイタリア国旗の
レッド、ホワイト、グリーンのストライブを入れた特殊カラーとなった。
平成12年に施行されたバリアフリー法の影響で、ハイデッカー構造の本形式は
対応改造が難しいため、新車で置き換えることになり、平成17年に50000形VSE車が
営業を開始すると3本が運用から離脱した。
このうち1本は予備車両として残されたが、2本は廃車となり、長野電鉄に無償譲渡された。
長野電鉄では11体連接を4体連接に短縮され、1000系電車「ゆけむり」として同社のA特急列車で
運行されている。
小田急に残った2本は、1本が長期休車となったが、保安装置更新に伴う予備車確保のため、
程なく営業運転に復帰している。
その後、時勢の変化でロマンスカーの運用見直し及び後継の60000形「MSE」の増備が行われ、
平成24年3月16日をもって全車が営業運転から撤退した。

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2006年6月長野電鉄須坂駅構内にて、営業に向けての改造を待つ10000形。
格納型連結器を表に出した珍しい形態。
下写真は左から8500系(元東急)、本形式、3500系(元営団)、2000系A編成。

「ゆけむり」の愛称で営業を開始した編成。塗装の赤の部分が明るい赤に変わっている。
なお、長野電鉄での形式は1000系である。
(※1)「走る喫茶室」
小田急で初めての特急専用車1910形電車のデビューした昭和24年にスタートした
車内販売サービス。
ロマンスカーの車内で喫茶店と同様にウェイトレスが座席まで注文をとりに来て、
その注文されたものを直接座席まで持ってきてくれるものである。
提供は「日東紅茶」と「森永エンゼル」で、後者は昭和38年より加わっている。
ロマンスカーの車内サービスとして好評を博し、長く親しまれたが、
時代の移り変わりと共にロマンスカーにも通勤客や買い物客などの
乗車時間の短いお客が増え、注文をとってから提供まで時間のかかる、
このサービスの提供が難しくなってしまった。
このため、平成5年に「日東紅茶」が平成7年に「森永エンゼル」が撤退し、
「走る喫茶室」の営業は終了した。
このサービスの終了後は小田急レストランシステムがワゴンと売店での
車内販売業務を実施している。
平成17年にデビューした50000形VSE車では「シートサービス」として「走る喫茶室」同様の
サービスを受けられる(他の形式は売店orワゴン販売)。
(※2)オーダーエントリーシステム
ウェイターの持つ情報端末から直接キッチンに送信して伝える
システムのこと。主にファミリーレストランなどで使われている。
車両である。
昭和62年~平成元年にかけて11体連接車×4=44両が製造された。
車両愛称の「Hi-SE」は「High-decker/High-grade/High-level Super Express」の
略称である。
編成の組み方は以下の通り。
デハ10000形+デハ10000形+サハ10000形+デハ10000形+デハ10000形+デハ10000形+※
※+デハ10000形+デハ10000形+サハ10000形+デハ10000形+デハ10000形
車番の附け方は新宿側から順に10001、10002…11となり、第2編成は10021~10031、
第3編成は10041~10051、第4編成は10061~10071である。
主制御装置は末尾1・5・7・11号車、エアコンプレッサーは末尾2・6・10号車、
補助電源装置(静止型インバータ)はサハ10000形(末尾3・9号車)と末尾6号車、
集電装置は末尾2・5・7・10号車である。
営業上の号車番号は箱根湯本側から1~11号車の順になる。
車体は鋼鉄製で、先頭部分はこれまで通り、運転席を2階に上げた展望室構造を
採用している。デザイン面ではこれまでよりも先頭部分の傾斜を強くして、
運転席までラインを繋げ、全体にシャープなイメージを醸し出している。
塗装はホワイトに窓周りや側面にワインレッドの帯が入るもので、後に箱根登山鉄道の電車や
大山ケーブルなどの系列会社の電車や7000形「LSE」のリニューアルの際にも採用された。
行き先表示は無く、愛称表示が先頭部側面上部に字幕式のものが設置されている。
車内は、登場当時としても珍しくなったリクライニング機能のない回転クロスシートである。
ただし、背もたれの傾斜角やピッチ、掛け心地を十分に研究して、新宿~箱根湯本間
1時間25分の旅を快適に過ごせるレベルのものとなっている。
テーブルは壁面折りたたみ式のもののみであったが、第2編成から座席背面にも
小型のテーブルが設けられた。座席のモケットの色はブルーとレッドで、
これらがバラバラに配されているものと車内でどちらかに統一されているものの
2種類ある。
1・11号車の展望席と一般席の間の仕切りには折畳みシートが設置されている。
展望席は最前部から後ろの方に向けて徐々に高くなるシアター構造で後方からの
展望にも配慮している。
その他の客室は床を高くしたハイデッカー構造となり、眺望性を向上させている。
ドアは各車両1箇所ずつで全て2枚内折り戸である。なお、先述のとおり、
ハイデッカー構造なので展望席のある1・11号車以外のドア部分にはステップが
設けられる。
電話室は4号車、売店は3号車と9号車、トイレは4・8号車に設置されている。
売店は当時行われていた「走る喫茶室」サービス(※1)に対応して、オーダーエントリーシステム(※2)を
初めて採用した。
主制御装置は抵抗制御で7000形「LSE」車と同等の高速域よりも中低速域での加速性を
重視した設定となっている。
ブレーキは抑速ブレーキ機能付き発電ブレーキ併用電気指令式ブレーキである。
台車は軸箱支持をアルストム式としたダイレクトマウント式空気バネ台車で
基本的な機器類は7000形電車と同等のものをと採用している。
運転台は片手操作式ワンハンドルマスコンである。
登場以来、ごく僅かな期間を除いて、50000形「VSE」登場まで小田急ロマンスカーの
イメージリーダーとして広告などに広く登場した。
また、先述のとおり、自社の特急車のみならず系列各社へも少なからず影響を
与え、昭和63年には鉄道友の会よりブルーリボン賞を贈られている。
平成11年に車体改良工事が行われ、トイレの汚物処理方法が循環式から真空式に
変更になったほか、空気洗浄機を車内に取り付けた。
平成13年にはトイレにベビーベッドを設置した。
運用面では座席配置や性能が、ほぼ同じLSEと共通であり、時刻表や特急券には「L/H」と
表記が入った。
平成11年から約1年ほど「イタリアンエクスプレス」と称して第3編成にイタリア国旗の
レッド、ホワイト、グリーンのストライブを入れた特殊カラーとなった。
平成12年に施行されたバリアフリー法の影響で、ハイデッカー構造の本形式は
対応改造が難しいため、新車で置き換えることになり、平成17年に50000形VSE車が
営業を開始すると3本が運用から離脱した。
このうち1本は予備車両として残されたが、2本は廃車となり、長野電鉄に無償譲渡された。
長野電鉄では11体連接を4体連接に短縮され、1000系電車「ゆけむり」として同社のA特急列車で
運行されている。
小田急に残った2本は、1本が長期休車となったが、保安装置更新に伴う予備車確保のため、
程なく営業運転に復帰している。
その後、時勢の変化でロマンスカーの運用見直し及び後継の60000形「MSE」の増備が行われ、
平成24年3月16日をもって全車が営業運転から撤退した。


2006年6月長野電鉄須坂駅構内にて、営業に向けての改造を待つ10000形。
格納型連結器を表に出した珍しい形態。
下写真は左から8500系(元東急)、本形式、3500系(元営団)、2000系A編成。

「ゆけむり」の愛称で営業を開始した編成。塗装の赤の部分が明るい赤に変わっている。
なお、長野電鉄での形式は1000系である。
(※1)「走る喫茶室」
小田急で初めての特急専用車1910形電車のデビューした昭和24年にスタートした
車内販売サービス。
ロマンスカーの車内で喫茶店と同様にウェイトレスが座席まで注文をとりに来て、
その注文されたものを直接座席まで持ってきてくれるものである。
提供は「日東紅茶」と「森永エンゼル」で、後者は昭和38年より加わっている。
ロマンスカーの車内サービスとして好評を博し、長く親しまれたが、
時代の移り変わりと共にロマンスカーにも通勤客や買い物客などの
乗車時間の短いお客が増え、注文をとってから提供まで時間のかかる、
このサービスの提供が難しくなってしまった。
このため、平成5年に「日東紅茶」が平成7年に「森永エンゼル」が撤退し、
「走る喫茶室」の営業は終了した。
このサービスの終了後は小田急レストランシステムがワゴンと売店での
車内販売業務を実施している。
平成17年にデビューした50000形VSE車では「シートサービス」として「走る喫茶室」同様の
サービスを受けられる(他の形式は売店orワゴン販売)。
(※2)オーダーエントリーシステム
ウェイターの持つ情報端末から直接キッチンに送信して伝える
システムのこと。主にファミリーレストランなどで使われている。