雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

やはり野に置け ・ 小さな小さな物語 ( 302 )

2012-01-25 10:52:17 | 小さな小さな物語 第五部~第八部
あれは何という草なのでしょうね。
わが家の小さな庭の真ん中をうねるように土の道があるのですが、いったん雨になると、この部分は水路になってしまいます。梅雨が完全に開ける頃までは、この部分は湿りがちで所々苔が生えたりしていますし、雑草たちの憩いの場にもなっています。
その通路兼水路が側溝につながっている辺りに、三年ほど前から水辺などに生えている草がしっかりと根付いていたのです。きっと小鳥が運んできてくれた種が育ったのでしょう。


細い針金のような緑の茎(もしかすると葉かもしれません)を、放射線状というのですか、全方向に伸ばし、昨年には、太さは太い部分でも五ミリにもならない程ですが、長さは一メートルほどにもなり、その数は数百本はあるのです。決してオーバーではなく、切る時にざっと数えたのですが三百本より多かったと思います。
その前の年にも花を付けていたのですが、根元から切るごとに株が太り、昨年の秋には、その何百もの茎の中央あたりに一斉に花を付けたのです。薄茶色で決してきれいなものではないのですが、全体としてはなかなか壮観で、家人は褒めてくれませんでしたが、相当満足していたのです。


ただ、同時にある予感もありました。
大分前になりますが、私は雑草を一か所に集めて育てたことがあります。このブログで紹介させていただいた記憶がありますが、その時も、雑草といえども肥料をやって育てるときれいなものだと満足したのですが、翌年にあらゆるところから生え出してきて苦労した経験があるのです。
今回も、これだけ見事な花の数なので、相当広い範囲に種が飛ぶのではないかということです。
期待通りといいますか、懸念通りといいますか、その周辺はもちろん、花壇といわず菜園といわず、煉瓦の隙間からでも顔を出してきました。一本の針金のようにすっと伸びて、小さいうちから花のようなものを付けていて、抜くのは極めて簡単なのですが、その数たるや心配した通りのものでした。


「やはり野に置け蓮華草」と先人が詠んだのは、こんな状態を指したものではなく、もっと生々しい背景があるようですが、やはり、野にある花や草は、野にあってこそ輝くのでしょうね。
それは、何も蓮華草に限ったことではなく、私たち人間とて同じことだと思われます。人間の能力は決して同等などではなく、やはりそれぞれに身を置く場所があると思われます。努力や成長ということもありますが、人たるものそこそこ飯を食った後には、己の置き場所を自覚したいものですね。
ただ、これが、他人のことはよく分かるのですが、自分のこととなりますとねぇ・・・。

( 2011.07.26 )

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