雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

人は見かけによらない ・ ちょっぴり『老子』 ( 51 )

2015-06-19 11:16:37 | ちょっぴり『老子』
          ちょっぴり『老子』 ( 51 )

               人は見かけによらない

真の人物とは

「 大成若缺、其用不弊。大盈若冲、其用不窮。大直若屈、大巧若拙、大辯若訥。躁勝寒、静勝熱。清静爲天下正。 」
『老子』第四十五章の全文です。
読みは、「 大成は欠けたるがごとくなるも、その用は弊(ツマズ)かず。大盈(タイエイ)は沖(ムナ)しきがごとくなるも、その用は窮(キワ)まらず。大直は屈するがごとく、大巧は拙なるがごとく、大辯(タイベン)は訥(トツ)なるがごとし。躁(ソウ)は寒(カン)に勝ち、静は熱に勝つ。清静(セイセイ)をもって天下の正を為せ。 」
文意は、「 真に大成した人物は一見欠けたところがあるように見えるが、その徳を用いればつまずき(弊)倒れるような失敗はしない。真に徳が満ち満ちた人物は一見空っぽ(冲)のように見えるが、その徳を用いれば窮地に陥ることがない。真に真直ぐな人物は一見曲がっているように見え、真に巧みな人物は一見下手のように見え、真に雄弁な人物は一見訥弁のように見える。さわがしく身体を動かせば寒さに打ち勝つことが出来るが、心身を静かにしておれば熱さに打ち勝つことが出来る。(激しく身体を動かせるのは一時的であるが、静かであることは長く保てる。)従って、清く静かな態度で天下の政治を行え。 」

ほんとうに優れた人物は、「自分は優れているのだ」といった部分は見せないものだ、ということを繰り返して述べています。
なお、一番最後の「正」は、正しい・正義といった意味ではなく、「政」のことで、政治を指しているそうです。
このことからも、この文章が為政者のための、人材の見極め方、政治を行う心構えを述べていることが分かります。

見かけだけでは

この章で述べられていることは、私たちの日常に当てはめてみますと、少々オーバーな気もしますが、まあ似たようなことは経験したり報道で知ったりすることはあるものです。「あの人が、あんなことを」ということは、善いことであれ悪いことであれ、実感することはあるものです。
また、「躁勝寒、静勝熱」というのは、とても面白い表現だと思うのですが、ちょっとひねくれて読み取る部分もあります。
つまり、「騒がしくすれば寒さに勝つが、それは長続きしない。静かにしていれば暑さに勝ち、それは長続きする」ということは理解できるのですが、静かにしていて寒さを防げるのかということも教えてほしいような気がします。

それはともかく、この章で述べられていることは、例えば、「巧言令色鮮し仁」とか「能ある鷹は爪隠す」といった具合に、他の偉人や俗な格言としても多く述べられていることです。
『老子』は為政者を意識して述べているように思うのですが、今日の私たちにも分かりやすい教えといえましょう。

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