雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

もう節電は不要 ・ 小さな小さな物語 ( 304 )

2012-01-25 10:50:21 | 小さな小さな物語 第五部~第八部
東日本大地震の後、私はいち早く節電を呼び掛けました。私の居住地は関西電力管内なので、当時は直接的に電力不足の心配はなく、節電は全く無駄なことで景気の足を引っ張る悪い行為だとの意見も少なくありませんでした。
しかし、関東であれだけ厳しい電力不足の状態が起きれば、他の地域で影響が出ないなど考えられません。東西で周波数の違いなどあるとしても、わが国の電力生産の主力が火力であり、ついで原子力である実情からすれば、電力不足はわが国全体のものになると考えたからです。しかし、それは、せいぜい半年ほどのことだと思っていたのです。


しかし、私は宗旨変えをいたしました。「節電は不要」を主張することにしました。
現在、関西電力管内でも節電の呼び掛けがなされています。電力会社から要請が出され、さらに政府からも出されました。しかも、その節電要請の量に差があるのです。どうしろというのでしょうね。
まあ、その程度の行き違いは今更驚きませんが、どうも、節電節電という声ばかりが大きく、供給源の確保に真剣でないように思われてなりません。それが気に入らないのです。


もっとも、私が気に入ろうが気に入らなかろうが別にどうでもいいことでしょうが、節電の大騒ぎの中で失われていっているものを承知の上での大騒ぎなのでしょうか。
熱中症などの健康被害は承知の上なのでしょうが、この間に、企業の流出、あるいは新規設備の見送りが発生していることも承知の上のことなのでしょうか。円高、原発事故、風評被害、政治不安、そして電力の供給まで心配があるとすれば、少し力のある企業であれば海外展開を考えるのは当然のことだと思います。
出て行きたい企業は出て行けばよいという、まことに勇ましい意見を述べられる人もいるそうですが、それは、わが国が貴重な雇用の場を失っていることを承知したうえでの発言なのでしょうか。
政府は、この四か月余りで、節電により私たちがどれだけの雇用の場を失ったのか公表して欲しいものです。まさか、調査していないなんて言うのではないでしょうね。


今、わが国がしなくてはならない重要事項の一つは、有り余るほどの電力の供給源を揃えることなのです。節電節電の大騒ぎなど、せいぜい三か月ほどで十分なのです。
官民がその気になれば、電力供給源など十分すぎるほどあります。節電を叫ぶより、稼働可能な電力供給源を全て戦力に加えるべきなのです。
もし、このまま、一年なり二年なりを節電で対処していけば、それ以上に今の状態のままでわが国の電力需要が落ち着いたとすれば、わが国の若い人たちの良質な労働市場は大幅に減少することでしょう。二、三年経ってから、電力は十分ありますといっても、失われた雇用機会は戻ってきたりはしないのです。
莫大な借金を次世代に残すななどと、出来もしないことを唱えるのも結構ですが、次世代の雇用機会を流出させるような愚だけは、今すぐ止めなくてはなりません。
そのためには、節電節電と叫ぶより、電気をもっとよこせと叫びましょう。

( 2011.08.01 )

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