雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

重い荷 軽い荷 ・ 小さな小さな物語 ( 1096 )

2018-11-19 14:43:57 | 小さな小さな物語 第十九部
最近、よく似た光景を三か所で見ました。
目的は、バードウォッチングなのか写真に撮ることなのかは知らないのですが、立派なカメラを持った人たちが、しきりに「トリ」を狙っている姿です。ほとんどの人が三脚を備えているので、思わず覗き込んでしまいます。

その一ヶ所は、ある有料の公園の池の周りで、その公園は、バラが有名な公園なのですが、その池は、バラ園からは離れていて普通は人影の少ない辺りなのです。その小さな池の一画に、立派な三脚が列をなしていたので聞いてみますと、「カワセミ」がやって来るのを狙っているらしいのです。よく姿を見せるらしいのですが、空振りの日もあるそうです。
もう一ヶ所は、やはり公園ですが、こちらは無料の大規模公園で城跡を中核としてスポーツ施設の多い公園です。ここでも、やはり人があまり行かないような木々が茂っている場所や内堀跡辺りに幾つもの三脚が見られます。この公園には、季節にもよるのでしょうが、かなり多くの種類の小鳥が見られるそうで、写真愛好家などには知られた場所だそうです。私が話した人は、「フクロウ」を狙っているといっていましたが、昼間は寝ているのではないでしょうかねぇ。
もう一ヶ所は、今年から見られる光景なのですが、わが家のすぐ近くの池に、「ヨシゴイ」とやらが飛来するようになり、いつやって来るか分からないトリを求めて、多くの人が三脚を並べています。
いずれも、趣味で楽しんでいる人たちだと思うのですが、実に粘り強い姿に感心してしまいます。

そう言えば、こちらは趣味ではありませんが、東京湾に鯨が姿を見せているということで、テレビ局は船を出して探し求め、ヘリコプターを飛ばすところも出てきています。一部の放送局は生映像が撮れたとはいえ、そうそう簡単ではないようです。むしろこちらは、狭い湾に迷い込んでしまった鯨がかわいそうな気がしないでもありません。
趣味であれ仕事であれ、何ごとにより忍耐力が大切なようです。

忍耐といえば、「人の一生は重荷を負うて遠き道を行くが如し」という徳川家康の言葉が連想されます。
この言葉は、比較的よく知られている言葉だと思われますが、家康という大人物が残したという背景があってこそ意味を持つ言葉で、安易に引用して使うと、少々軽くなってしまう恐れがある言葉といえます。
それに、重荷といっても、家康が背負っていた重荷と、私などが感じる重荷とは雲泥の差があるわけで、およそ格言といわれるような言葉には、背負っている荷物の軽重、歩いてきた道程等々により、その意味合いさえ変わってしまう可能性を持っています。名言であればあるほど、安易な引用には注意が必要なようです。
それはともあれ、背負っている荷が重い物であれ、軽い物であれ、趣味として一枚の写真を撮るのでさえ相当の忍耐が必要だとすれば、凡々たる時間を送っている私なども、自分の背負っている荷物の中身を確認してみる必要がありそうです。
そうそう、家康の言葉には、「急ぐべからず」が続いているのです。念の為。

( 2018.06.28 )

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