雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

思いは様々

2018-10-25 19:16:14 | 日々これ好日
        『 思いは様々 』

     プロ野球ドラフト会議
     毎年のことながら 選ぶ方も選ばれる方も 悲喜こもごも
     見ている方は 興味が尽きないドラマだが
     当事者は 人生を左右される一日 という思いではないか
     ただ これまでのプロ野球選手を見ると ドラフト指名は
     単なるスタートラインに過ぎないようにも思う
     指名順位に関わらず スターへの道は平等のようだ
     活躍を祈りたい

                     ☆☆☆
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今昔物語集 巻第二十七 ご案内

2018-10-25 14:53:46 | 今昔物語拾い読み ・ その7

     今昔物語集 巻第二十七 ご案内
 

巻第二十七は本朝付霊鬼となっています。
本巻には四十五話が収録されていますが、「第二十九」が二話あり、それとは関係ないと思われますが、「第二十一」にあたる部分が空白になっています。そのため、全体としては未完成であったとも考えられています。
そういった部分はあるとしても、「本朝付霊鬼」と恐ろし気な巻ですが、古来この種の物語は根強い支持を受けており、本巻の作品は後世に大きな影響を与えているようです。

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三条東洞院の鬼殿 ・ 今昔物語 ( 27 - 1 )

2018-10-25 14:51:52 | 今昔物語拾い読み ・ その7
          三条東洞院の鬼殿 ・ 今昔物語 ( 27 - 1 )

今は昔、
この三条大路の北、東洞院大路の東の角は鬼殿(オニドノ・空き屋敷が、いわゆる幽霊屋敷のような状態になっていたのか?)という所である。そこに、霊(リョウ・精霊。ここでは悪霊を指している。)が住んでいた。

その霊は、昔、まだこの京に都移りもしていなかった頃、その三条東洞院の鬼殿のある所に、大きな松の木があったが、その辺りを一人の男が馬に乗り胡録(ヤナグイ・矢を入れて背負う武具)を負って通り過ぎようとしていたが、にわかに稲妻が走り雷鳴がとどろき、大雨が降り出したので、その男は先に進めず、馬から下りて、自ら馬を引いてその松の木の根元に座り込んでいると、そこに雷が落ちてきて、その男も馬も蹴り裂いて殺してしまった。そして、その男はそのまま霊になったのである。

その後、都移りがあって、その場所に家が建ち人が住むようになったが、その霊はそこから離れることなく、いまだに霊が住んでいると人々が伝えている。それにしても、実に長い間住み続けている霊である。
そのため、その所では度々凶事が起きている、
となむ語り伝へたるとや。

     ☆   ☆   ☆
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融左大臣の霊 ・ 今昔物語 ( 27 - 2 )

2018-10-25 14:50:56 | 今昔物語拾い読み ・ その7
          融左大臣の霊 ・ 今昔物語 ( 27 - 2 )

今は昔、
川原院(カワラノイン・河原院)は、融左大臣(トオルノサダイジン・源融)が造って住まわれた屋敷である。
庭は陸奥国の塩竃の形を模して造り、池には海水を汲み入れて満たした。このように様々にすばらしく風流の限りを尽くして造って住んでおられたが、その大臣が亡くなった後は、その子孫にあたる人が、宇多の院(ウダノイン・宇多天皇が法王の時。)に献上したのである。
そこで、宇多院はその川原院にお住まいになられたが、醍醐天皇は宇多院の御子であられるので、度々そこに行幸があり、たいへんめでたいことであった。

さて、宇多院がお住まいになっていた時のことであるが、ある夜半頃、西の対屋の塗籠(ヌリゴメ・寝殿造りで、二間四方ほどを壁で塗り込め、遣戸の入り口から出入りした部屋。寝室や納戸に用いられた。)の戸を開けて、誰かがさやさやと衣擦れの音をさせてやってくる気配がしたので、院がその方に目を遣ると、昼の装束(束帯)をきちんと着こなした人が、太刀を佩(ハ)き笏を手にして、畏まって、二間(柱と柱の間を一間という。)ばかり離れた所に座っていた。
院が、「あれは何者だ」と尋ねられると、「この家の主(ヌシ)である翁でございます」と申し上げると、院は、「融の大臣(トオルノオトド)であるか」とお尋ねになると、「さようにございます」と申し上げた。

院は、「どういう用なのか」とお尋ねになると、「私の家でございますから住んでおりますのに、院がこのようにおいでになられますので、畏れ多く気詰りに思うのでございます。いかがすればよろしいでしょうか」と申し上げると、院は、「それは、大変おかしなことを申される。我は人の家を無理に奪い取った覚えはない。大臣の子孫が献上したので住んでいるのだ。たとえ者の霊(モノノリョウ・物の霊。妖怪、霊魂などを指す。)といえども、事の是非をわきまえず、何ゆえそのような事を申すのか」と大声で仰せになられると、霊は掻き消すように見えなくなった。
それから後は、二度と現れることはなかった。

当時の人はこれを聞いて、宇多院を畏れ敬い、「やはりただの人とは違っておいでだ。この大臣の霊にあって、こうも堂々と応対は出来ないだろう」と言った、
となむ語り伝へたるとや。

     ☆   ☆   ☆
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子供が手招きする ・ 今昔物語 ( 27 - 3 )

2018-10-25 14:50:12 | 今昔物語拾い読み ・ その7
          子供が手招きする ・ 今昔物語 ( 27 - 3 )

今は昔、
桃園というのはいまの世尊寺のことである。まだ寺になる前は、西の宮の左大臣(源高明。醍醐天皇の第十皇子。)が住んでおられた。

その頃の事であるが、寝殿の辰巳(タツミ・東南)の母屋(モヤ・寝殿の中央部分で、庇の内側にある部屋。)の柱の木に節穴が開いていた。夜になると、その木の節穴から小さな子供の手が出てきて、人を手招きした。
大臣(オトド)はこれをお聞きになって、たいへん不思議な事と怪しみ驚かれて、その穴の上に経文を結び付け奉ったが、やはり手招きをする。仏の絵像を掛け奉ったが、手招きすることは止まなかった。
このようにいろいろ試してみたが、どうしても止まず、二夜、三夜を隔てて、真夜中の人が寝入った頃になると、必ず手招きするのである。

そうした時、ある人がもう一度試してみようと、征矢(ソヤ・戦陣で用いる矢。)を一本その穴に差し込んでみたところ、その征矢がある間は手招きすることがなかったので、その後は、矢柄は抜き取って、征矢の身(やじり)だけを穴に深く打ち込んでみると、それから後は、手招きすることはなくなった。

これを思うに、何とも訳の分からないことである。きっと、物の霊などの為せることであろう。
それにしても、征矢の霊験が仏像や経文に勝っていて、これを恐れるとはどういうことなのか。
されば、当時の人はこれを聞いて、どうも怪しいと疑った、
となむ語り伝へたるとや。

     ☆   ☆   ☆
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赤い単衣 ・ 今昔物語 ( 27 - 4 )

2018-10-25 14:45:33 | 今昔物語拾い読み ・ その7
          赤い単衣 ・ 今昔物語 ( 27 - 4 )

今は昔、
冷泉院小路の南、東洞院大路の東の角は、僧都殿(ソウズドノ・未詳)という大変な悪所である。従って、うかつに人が住むことはなかった。

その冷泉院小路の真北は、左大弁宰相 源扶義(サダイベンノサイショウ ミナモトノスケヨシ・宰相は参議の唐名。左大弁兼参議という身分になる。)という人の家である。その左大弁宰相の舅は讃岐守源是輔という人である。
さて、その家(是輔の家らしく、扶義は妻の実家に住んでいるらしい。)から見ていると、向かいの僧都殿の戌亥(イヌイ・西北)の角に高い榎の大木があり、彼れは誰そ時(アレハタレソドキ・夕暮れ時)になると、寝殿の前から赤い単衣が飛び上がって、その戌亥にある榎の方に飛んで行き、木の梢に登った。

 それで、これを見た人は恐れて、その辺りには寄り付かなかったが、その讃岐守の家に宿直(トノイ)していた一人の武士が、その単衣が飛んで行くのを見て、「我こそあの単衣を射落としてやる」と言うと、これを聞いた者たちは、「絶対に射落とすことなど出来まい」と言い、さらに言い争っているうちにその武士をけしかけたので、「必ず射てやる」と断言して、夕暮れ方にその僧都殿に行き、南面の縁側にそっと上がり待ち構えていると、東の方角の竹が少し生えている中から、あの赤い単衣がいつものように飛び上がって行くのを、武士は雁胯(カリマタ・やじりの種類)の矢をつがえて、強く引き絞って射ると、単衣の真ん中を貫いたと思ったが、単衣は矢を射立てられたまま榎の梢に登って行った。
矢が当たったと思わる所の土を見ると、血がたくさん流れていた。

武士はもとの讃岐守の家に帰って、言い争いをしていた者たちに会って、事の次第を語ると、言い争っていた者たちは大変恐れた。
その武士は、その夜、寝死(ネジニ・睡眠中の突然死、らしい。)で死んでしまった。
そこで、この言い争っていた者たちばかりでなく、これを聞く者たちは皆、「つまらぬことをして死んだものだ」と言って非難した。

まことに、人にとって命に勝るものはないのに、つまらぬことに勇猛さを見せようとして死んでしまうのは、極めて無意味な事である、
となむ語り伝へたるとや。

     ☆   ☆   ☆




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小さな翁 ・ 今昔物語 ( 27 - 5 )

2018-10-25 14:44:38 | 今昔物語拾い読み ・ その7
          小さな翁 ・ 今昔物語 ( 27 - 5 )

今は昔、
陽成院(陽成天皇)がお住まいになっておられたところは、二条大路の北、西洞院大路の西、大炊御門(オオイノミカド)の南、油小路の東にある二町(二区画)であったが、院がお亡くなりになった後は、その地所の真ん中に東西に走る冷泉院小路を造って、北の町は人家となり、南の町には池などが少し残っていた。

その南の町に人が住んでいた時のことであるが、ある夏の頃、西の対屋の縁側に人が寝ていると、身の丈三尺(約90cm)ばかりの翁(オキナ)が現れて、寝ている人の顔を撫でたので、「何事だ」と思ったが、恐ろしくてどうすることも出来ず、空寝をして横になっていたところ、翁はそっと立ち上がって帰って行った。それを、星月夜(ホシヅキヨ・星の明かりが月夜のように明るい夜。)の明かりで見ていると、池の汀(ミギワ・水際)まで行くと、掻き消すように見えなくなった。
池を手入れすることもないままなので、浮草や菖蒲が生い茂っていて気味が悪く、恐ろしげである。

そこで、「きっと、池に住む妖怪であろう」と怖ろしく思っていると、その後も、夜な夜なやって来て顔を撫でるので、これを聞く人たちは皆怖ろしく思っていたが、一人の腕自慢の男が、「では、わしがその顔を撫でる者を必ず捕らえてやる」と言って、その縁側にたった一人で苧縄(オナワ・麻などの繊維から作った縄)を持って横になり、一晩中待っていたが、宵のうちは現れなかった。
「夜半も過ぎた頃か」と思われる頃、待ちかねて少し[ 欠字あり。「まどろんだ」といった語か? ]したところ、顔に何か冷たいものが当たったので、待ち構えていたことなので、夢うつつの中でもはっと気がつき、目を覚ますと同時に、起き上がって捕まえた。そして、苧縄でぐるぐる巻きに縛り、高欄に結わえつけた。

そして人を呼ぶと、人が集まってきて、灯をともして見ると、身の丈三尺ばかりの上下とも浅黄色の衣を着た小さな翁が、今にも死にそうな様子で縛り付けられていて、目をしばたたいている。人が問いかけても何も答えない。
しばらくして、翁は少しばかり微笑んで、あちらこちらを見回して、か細い情けなそうな声で、「盥(タライ)に水を入れて持ってきてくれないか」と言う。
そこで、大きな盥に水を入れて前に置くと、翁は首を伸ばして盥に向かい、水に映る姿を見て、「我は水の精である」と言うと、水の中にずぶりと落ち入ると、翁の姿は見えなくなった。すると、盥の水は増えて、縁よりこぼれた。縛っていた縄は結ばれたまま水の中にあった。翁は、水になって溶けてしまい消え失せたのである。
人々はこれを見て、驚き怪しんだ。その盥の水は、こぼさないように抱えて運び、池に入れた。それから後は、翁がやって来て顔を撫でるようなことはなくなった。

これは、水の精が人の姿になって現れたのだと人々は言い合った、
となむ語り伝へたるとや。

     ☆   ☆   ☆
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銅器の精霊 ・ 今昔物語 ( 27 - 6 )

2018-10-25 14:43:48 | 今昔物語拾い読み ・ その7
          銅器の精霊 ・ 今昔物語 ( 27 - 6 )

今は昔、
東三条殿に式部卿の宮(醍醐天皇の第四皇子重明親王を指す。)と申される方がお住まいになっていた時のこと、南の山に身の丈三尺(約90cm)ほどの五位(官位のこと。霊鬼などが化身する時は、五位{緋色}六位{浅葱色}の装束で現れることが多い。)の太った男が時々歩いているのを親王がご覧になって、怪しく思っておられたが、五位が歩くのがたび重なったので、権威ある陰陽師を召して、その祟(タタ)りについてお尋ねになると、陰陽師は、「これは物の怪でございます。但し、人に害を与える物ではありません」と占い申し上げた。

「その霊はどこにいるのか。また、何の精なのか」と親王がさらにお尋ねになると、陰陽師は、「これは銅器の精でございます。御殿の辰巳(東南)の角の土の中に居ります」と占い申し上げると、陰陽師の言葉に従って、その辰巳の方角の地を区切って、もう一度占わせて、占いで示された所の地を二、三尺掘ったが何も見つからない。
陰陽師が、「もっと掘るべきです。決してここ以外ではありません」と占い申したので、五、六寸ほど掘り進めると、五斗(約90ℓ)入りほどの銅(アカガネ)の提(ヒサゲ・酒や水を注ぐのに用いられる金属製の容器。)を掘り出した。
それから後、この五位が歩くことはなくなった。
されば、その銅の提が人の姿になって歩いていたのであろう。かわいそうな事である。

これを思うに、これによって、物の精はこのように人の姿になって現れるのであると皆が知った、
となむ語り伝へたるとや。

     ☆   ☆   ☆

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鬼の住む倉 ・ 今昔物語 ( 27 - 7 )

2018-10-25 14:43:09 | 今昔物語拾い読み ・ その7
          鬼の住む倉 ・ 今昔物語 ( 27 - 7 )

今は昔、
右近中将在原業平(アリハラノナリヒラ・好色な人物として知られているが、父は平城天皇の第一皇子であり、母は桓武天皇の皇女という大変な血統の人物である。)という人がいた。世に評判の好色(イロゴノミ・本来は、色恋の道に長けた洗練された風流人、といった意味であるが、ここでは、いわゆる好色、あるいは多情者といった意味と考えられる。)で、「世間で美人だという噂を聞けば、宮仕えの人でも、人の娘でも見逃すことなく、一人残らず契りを結ぼう」と思っていたが、ある人の娘に、「姿形この世にまたとないほどすばらしい」と聞いたので、心を尽くして言い寄ったが、その親たちは、「高貴な方を婿に取るつもりだ」と言って、娘を極めて大切に育てていて相手にしないので、成平の中将は手も足も出せなかったが、どういう手段をとったのか、その女を密かに盗み出したのである。

ところが、とりあえず隠すべき所がなく、思い迷ったすえ、北山科の辺りに荒れ果てて人も住んでいない古い山荘があり、その屋敷内に大きな校倉(アゼクラ・角材などで造った高床の倉。)があったが、片戸は倒れていた。
人が住んでいた家には板敷の板もなく、入れそうもないので、この校倉のうちに畳(板間に敷くござ)一枚を持って行き、その女を連れて行って寝たところ、にわかに稲光がして雷鳴が激しく鳴り出したので、中将は太刀を抜いて、女を後ろに押しやり、立ち上がって太刀を光らせているうちに、雷もようやく鳴りやみ、夜も明けた。

ところが、女の声が全くしないので、中将は不思議に思い振り返って見ると、女は頭だけとなり、着ていた着物だけが残っていた。中将は堪えられないほど怖ろしくなり、自分の着物も取るや取らずで逃げ出したのである。
後になって、この倉は人取りする倉だと知った。つまり、あれは稲光や雷鳴ではなく、倉に住んでいる鬼の仕業であったのだろうか。

されば、事情も分からない所には努々(ユメユメ・決して。断じて。)立ち寄ってはならないのである。いわんや、泊まったりすることはとんでもないことだ、
となむ語り伝へたるとや。

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鬼に誘われる ・ 今昔物語 ( 27 - 8 )

2018-10-25 14:42:31 | 今昔物語拾い読み ・ その7
          鬼に誘われる ・ 今昔物語 ( 27 - 8 )

今は昔、
小松の天皇(光孝天皇)の御代の事である。
武徳殿の松原(大内裏の中)を、若い女が三人連れ立って、内裏の方に歩いていた。八月十七日の夜の事なので、月は大変明るかった。

すると、松の木の下から男が一人出て来た。この通り過ぎようとしている女の中の一人を引き止めて、松の木陰で女の手を取って何か話している。あとの二人の女は、「すぐに話は終わって戻ってくるだろう」と立ち止まっていたが、なかなか戻って来ないで、話す声も聞こえないので、「どうしたのだろう」と怪しく思い、二人の女がその方に行ってみたが、女も男も姿が見えない。
「いったい、どこへ行ったのか」と思って、よく見てみると、ただ女の足と手だけが散らばっていた。二人の女はこれを見て、驚いて走って逃げて、衛門府の陣(詰所)に走り込み、陣にいた人に事の次第を告げると、陣にいた人たちも驚き、その場所に行って見てみると、死骸らしいものは見当たらず、ただ足と手のみが残っていた。
それを聞いて人々が集まってきて大騒ぎとなった。「これは、鬼が人の姿になって現れ、この女を喰ってしまったのだ」と言い合った。

されば、女はこのように人けのない所で、見知らぬ男に呼び止められた場合、無分別について行くようなことがあってはならない。努々(ユメユメ・決して。くれぐれも。)注意すべきことである、
となむ語り伝へたるとや。

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