りなりあ

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約束を抱いて 第四章-5

2008-02-23 22:12:00 | 約束を抱いて 第四章

「私は嬉しいわ。直樹が涼君と仲良しで。これからも直樹を宜しくね。」
「姉さん。そんな話は関係ないでしょう?」
直樹の言葉に奈々江が笑うが、その笑い声を消すように会場に大声が響いた。

「おーい。待て!待て!」
その声に、涼と直樹は顔を見合わせて溜息を出す。
「ったく。相変わらず声の大きなコーチだ。」
直樹の嫌そうな声に涼が同意しようとしたら、また別の声が響く。
「ねぇ、たくちゃん。おはなし、終わった?」
「哲也さんも、早く。ハンバーク、お皿にのせてよ。」
「大輔さん、綺麗な女の人と話してばかり。僕達と遊んで。」
子供達の声に周囲が笑い、哲也と大輔、そして卓也が子供達に手を引かれる。
「面白い事が始まりそうね。」
奈々江の声に彼女の視線の先を追うと、久保が子供達を集めていた。
「よぉし。ゲームをしよう。」
「ゲーム?」
子供達が不思議そうに問う。
「そうだ。みんなが送ってくれた商品が並んでいる。」
久保が言うと会場の奥にあるカーテンが開き、涼は大袈裟な仕組みに思わず目を見開いた。
「な、なんだ?」
「みなさーん。これからゲームを行ないます。どなたでも参加してOKですよ!」
そう言われても、この状況では子供達が最優先だろう。
「テニスボールで商品をゲーットだ!」
久保の声が響き、ラケットが出されボールが用意される。
「こういうゲーム、弟さんは興味があるの?」
喜んで楽しみそうだが、こんな風に優輝よりも年下の後輩たちを差し置いて、目立ちたいと思うとは考えられない。さすがの優輝も、少しは大人になっているだろう。
「良い宣伝ね。」
感心したような奈々江の声に、涼は並べられている商品を見た。全てを確認する事は出来ないが、テニスに関する商品ばかりが目立つ。
「橋元。」
涼は手を上げて近付いて来る姿に、驚く。
「高瀬部長。」
「どうだ?良い企画だと思わないか?」
「これは部長が?」
「子供達が退屈するのは目に見えているからね。何か良い案はないかと相談されて。」
涼は高瀬の視線を追って、優輝を見つけた。
「え?」
「同じマンションに住んでいたんだろ?」
「はい。彼の息子さん達と優輝は年齢が近いので、親しいお付き合いをさせてもらっています。」
「らしいな。彼の会社のスポーツ用品を、この企画の商品にさせてもらったんだよ。挨拶に行くか?」
「はい。」
涼は奈々江と直樹と別れ、高瀬と共に優輝の所へと向かう。
気付いた優輝が笑顔を向けた。
「御無沙汰しています。水野さん。」
「久しぶりだね。涼君。今日は会えるのを楽しみにしていたよ。息子から優輝君の話は聞いていたが、なかなか会えなくてね。涼君が高瀬さんの勤務する会社に就職したとも聞いていたし、今後とも宜しくお願いするよ。」
「はい。宜しくお願いします。」
「この企画会議に橋元も一緒に、と思ったのだが、水野さんから断られてね。」
「え?」
涼は、その言葉に小さなショックを受けた。
「高瀬さん。その言い方だと、あまりにも聞こえが悪い。私は、今回は仕事は抜きで涼君と会いたかったからですよ。それに涼君は御両親の代わりに、よくマンションの会合に来てくれていてね。大人顔負けの弁論をする時があって。正直、そういうのは遠慮したかったんだよ。今日はお目出度いパーティでしょう?涼君とは、今度の仕事でお願いするよ。」
水野の言葉に高瀬が笑う。
「残念だよ君達が引越した事。涼君が出席する日は会合の出席率が高かったからね。奥様達が喜んで参加するから。」
涼は到底そんなつもりはなかったのだが、なんとなく事実を知っていただけに、また恥ずかしくなる。
「なんだよ、にーちゃん。マンションの会合は嫌だって言っていたのに、結構楽しんでたんだ?」
「優輝、おまえなぁ。優輝達がマンションの色んな備品を壊したんだろうが?芝生の上は歩いちゃいけないって、言っただろ?」
「俺だけじゃねーじゃん。卓也も紘(ひろし)も。」
「相変わらず紘が優輝君に迷惑をかけているかもしれないが、宜しく頼むよ。」
水野がむつみに告白さえしなければ、昔と変わらず楽しく遊べたのに、と優輝は思うが、それを水野の父親に話すのを躊躇し、仕方なく頷いた。