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『家をめぐる3つの物語』

2022年01月27日 | 映画(あ行)
『家をめぐる3つの物語』(原題:The House)
監督:エマ・ドゥ・スワーフ,マーク・ジェイムス・ロエルズ,
   ニキ・リンドロス・ヴォン・バー,パロマ・バエザ
声の出演:クローディー・ブレイクリー,マシュー・グード,ミア・ゴス,マーク・ヒープ,
     ジャーヴィス・コッカー,スヴェン・ヴォルテル,イヴォンヌ・ロンバルト,
     スーザン・ウォーコマ,ヘレナ・ボナム=カーター,ポール・ケイ,ウィル・シャープ他
 
1月14日に配信開始となったNetflixオリジナル作品です。
ロンドンのアニメーション制作会社ネクサス・スタジオでNetflix向けに作られたそうな。
なんとも不思議でダークなストップモーションアニメで、好きだったけど、
万人にオススメできそうな作品ではありません。きっとモヤモヤする(笑)。
 
短編3つで構成されていて、同じ家が登場します。
けれどもそのロケーションは異なる。面白い。
 
1つめは“And heard within, a lie is spun”、邦題は「内側で聞こえて紡がれるウソ」。
少女メイベルは両親と乳児の妹イソベルとの4人暮らし。
裕福には程遠い生活ぶりですが、穏やかで幸せな毎日を送っています。
なのにある日、父親の親戚が大勢で押しかけ、この生活を蔑む。
父親はもとは貴族の出らしく、訳あって飛び出してきたのでしょうが、
親戚たちにクソミソに言われてヤケのやんぱち。
ちょうどそのとき、有名な建築家がこの辺りを買い取ったとかで、
一家の新居を建ててタダで住まわせてくれるという申し出があります。
 
2つめは“Then lost is truth that can't be won”、邦題は「敗北の心理にたどり着けない」。
擬人化されたネズミはデベロッパー。ある家を売ろうと策を練っています。
まもなく開催される内覧会のため、洒落た家にリノベーションしたいのですが、
経費削減のために彼自身が作業しなければなりません。
素敵なデザインの家に変身させることができたと思ったのに、
妙な音にキッチンの戸棚を開けてみれば、そこには虫がウヨウヨ。
このままでは困ると、殺虫剤を撒いたり掃除機をかけたり。
なんとか応急処置を施して内覧会に臨みます。
 
3つめは“Listen again and seek the sun”、邦題は「もう一度耳を傾けて太陽を目指して」。
今度は擬人化された雌猫、アパートメントの管理人ローザ。
周囲は洪水ですべて沈み、地上にある建物はこのアパートメントだけ。
居住者は雄猫イライアスと雌猫ジェンのみで、どちらもお金がなくて家賃を滞納。
ローザはなんとか家賃を回収してアパートメントの改修費に当てたい。
しかし壁紙を貼り替えてもこんな湿気ではすぐに剥がれてしまいます。
イライアスとジェンも水道の水が常に濁っていると文句を言います。
 
1つめでは森に囲まれ、2つめでは街路に面し、3つめでは水の上。
最初は人間が住んでいたのに、ネズミになり、猫になり、いろいろと面白い。
しかも、ロケーションが異なればまるで違う家の印象を受けます。 

アニメと言っても子ども向けではなく、難解です。私だってよくわからない。
はたしてどう解釈すればいいのでしょう。
 
タダで豪邸に住めることになったのに、そこに幸せはありません。
変わらないのは子どもたちだけ。
お父さんもお母さんもまるで洗脳されたかのようにおかしくなり、
挙げ句の果てに人間ではなくなってしまう。
 
今度はネズミになったよと思ったら、オシャレなはずの家が昆虫に乗っ取られる。
この2つめの話がいちばん不気味で、虫のダンスも笑うに笑えず。
 
洪水に遭ってこの世はもう終わっているかのようなのに、
家を手放せず、住む人もいないのに改修しようとする猫。
やっと現状と向き合い、家を船にして出航する最後だけは希望があります。
 
理解しがたくとも、この造形物は楽しい。
ストップモーション好きにはお薦めします。

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