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『映画「立候補」』

2013年09月04日 | 映画(ら行)
『映画「立候補」』
監督:藤岡利充
出演:マック赤坂,羽柴誠三秀吉,外山恒一他

前述の『囚われ人 パラワン島観光客21人誘拐事件』に続いて、ナナゲイにて。

当選見込みのない選挙立候補者に密着したドキュメンタリーで、
ナナゲイではすでに上映終了していますが、それなりに話題になっているような。

冒頭、「この作品は、特定の政党や立候補者を応援するものではありません」との注意書きが出ます。
確かにそんな風情は皆無、けれども温かい目線が感じられます。

主にスポットを当てられているのは、
2011年11月の大阪府知事選に出馬したマック赤坂氏。
京都大学農学部を卒業後、伊藤忠商事に入社したインテリで、
レアメタルの輸入販売で財を成した人。

彼は、立候補者全員が供託金として同じ300万円を支払いながら、
新聞等で「主な立候補者」と「その他の立候補者」に分けられるのは不平等だと訴えています。
だけど、こんなド派手な下着同然の姿で歌い踊る人を主な候補者に入れられましょうか。
マトモとおぼしき氏の息子は、父親から「どうすれば選挙に通るか」と尋ねられ、
「真面目にやることでしょ」と答えたそうです。そりゃそうだ。

同じ大阪府知事選の立候補者にも取材をおこなっています。
立候補したけど金がかかるからと一切活動なし、
取材にもキレ気味で、なぜ出馬したのかまったくわからない岸田修一氏。

おじいちゃんと孫娘に見えそうな中村勝氏と小学生のお嬢さん。
奥様は出産後に亡くなり、中村氏がひとりで娘を育てています。
当選するとは思っていないけれど、娘の前で「主な3人」の次が取れたら嬉しいと。
娘も「1万票は入ってほしい」とつぶやきます。

不動産業を営む高橋正明氏は、妻は他界、娘も成人。
街頭に立つものの、演説らしきものはせず、街ゆく人にひたすら挨拶。
ある日の交差点で、中学校の見知った後輩から声をかけられ、
50年ぶりに会えた、300万円を出した甲斐があったと喜びます。

マック赤坂氏の母校学祭に乗り込んだ様子や、
河原町交差点での選挙区外の活動は迷惑もいいところ、
彼のやりかたにはまったく共感できませんが、
彼やほかの演説者を取り囲む人びとの悲喜こもごもに泣けてきます。

ロールスロイスの運転手、破格の時給に釣られてやってきたマック赤坂氏の秘書は、
結局その半額の時給で了承させられ、好き勝手ふるまう雇い主の尻拭い。
けれども意外にもそれを楽しんでいる様子で、チンピラのごとくあっけらかん。
家に帰ればまだ幼い息子と生まれたばかりの娘。けれどもその娘は18トリソミー。
その状況をそのまま受け入れて淡々と話すから、余計に辛い。

藤岡利充監督は立候補者らを決して嘲るふうではなく、
でもおかしくて笑わされ、ときにしんみり。
なんば高島屋前で橋下・松井両氏の演説の邪魔を目論んだマック赤坂氏は玉砕。
後日インタビューされた橋下氏はとっても冷ややかで、
松井氏のほうが可愛げがありましたね。(^^;

2007年の東京都知事選の政見放送で有名になった外山恒一氏曰く、
「選挙では何も変わらないんだよ」。
でも、この映画は、選挙に多大なる興味を湧かせる1本だと思います。

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