夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

今年観た映画50音順〈は行〉

2018年12月29日 | 映画(は行)
《は》
『犯人は生首に訊け』(英題:Bluebeard)
2017年の韓国作品。
昨夏、シネマートで開催された“反逆の韓国ノワール 2017”にて上映。
医師スンフンは妻子と別れ、新興都市の個人病院に勤務。
漢江の解氷とともに首と手足が切断された女性の死体が浮かび上がり、
15年に渡る未解決連続殺人事件が起きているこの町の住民は不安に。
スンフンの住むマンションの大家は、1階で精肉店を営む老人とその息子。
認知症の老人が診察中に口走った言葉に戦慄を覚えたスンフンは、
息子の嫁が一人目も二人目も行方不明との噂を聞き、
あの親子が連続殺人犯なのではと疑いはじめるのだが……。
巻き込まれたかのようなスンフンが実は精神病。
すべての事件の犯人にされて終わり。
でも本当の連続殺人犯は老人だよという、救いようのない終わりかた。
英語タイトルの“Bluebeard”はおとぎ話に由来、
「妻を何人も替えては殺した男」の意味だそうで、気が利いていますねぇ。

《ひ》
『百日告別』(原題:百日告別)
2015年の台湾作品。
高速道路の多重事故に巻き込まれ、それぞれ最愛の人を失った男女。
ユーウェイ(♂)は妊娠中だったピアノ教師の妻を亡くし、
シンミン(♀)は結婚間近だった料理人の恋人を亡くす。
合同葬儀でお互いの存在を知るわけですが、
このふたりがくっつくとかいう安直な展開ではありません。
あくまでふたり別々、葬儀場で顔を合わす程度で、
それぞれが喪った悲しみを持ちながらどう気持ちの整理をつけてゆくか。
ユーウェイもシンミンも無気力になり、自分で命を絶つことを考える。
そんなときに聞こえてくる、妻の生徒のピアノの音色。
見せられる、幼き日の恋人が担任教師に宛てた手紙。
死ぬな、生きろ。百日経ったら、涙を拭いて。

《ふ》
『フェイク 我は神なり』(英題:The Fake)
2013年の韓国作品。
『ソウル・ステーション/パンデミック』と同じく、
ヨン・サンホ監督によるサスペンスに満ちた社会派アニメーション。
ダム建設のために水没が予定されている村に、
住民の心の寄る辺となるべく教会が建てられ、カリスマ視されている牧師がいる。
そんな村で寄付を募って大儲けを画策する詐欺師。
長らく村を離れていた粗暴な中年男ミンチョルが戻ってきて、
住民が騙されそうになっていることをすぐに見抜くが、
ろくでなしミンチョルの言うことなど誰も聞こうとせず……。
こんなアニメは今まで観たことがない。陰鬱で救いがないけど引き込まれます。

《へ》
『ヘドローバ』
2017年の日本作品。
動画オンデマンド配信サービス“VICE PLUS”の「ケータイで撮る映画シリーズ」第1弾。
不良ばかりが住む団地に暮らすカズヤ(木ノ本嶺浩)と妹ユリ(洪潤梨)。
団地を仕切るのはヤン兄弟(ウメモトジンギ&一ノ瀬ワタル)とその祖母(竜のり子)。
祖母は怪しい宗教の教祖で、信者に団地の部屋と金を貸す段取りをつける。
借金まみれとなった信者が自殺すると、その部屋の後始末をするのがカズヤの役目で……。
相当気持ち悪くて、直視できなかったシーンいっぱい。
カズヤの腕が腐るところなんて、オエーッ。
最後がまた強烈で、「ヘドローバ」とはなんぞやと思ったら、ヘド老婆。
風呂場で脳卒中を起こした婆さんがドロドロのへどろの化け物と化します。
腐乱死体の清掃を仕事とするカズヤは、怪しい博士が開発した掃除道具でヘドローバと対決。
不快なものを集めましたという作品で、ちょっと耐えがたい。すみません。(^^;

《ほ》
『星空』(原題:星空)
「ひ」の『百日告別』と同じ、トム・リン監督による2011年の台湾作品。
台湾の人気絵本作家ジミー・リャオの同名ベストセラー絵本が原作。
2012年の大阪アジアン映画祭で上映され、2017年10月に劇場公開が実現。
13歳のシャオメイの両親はいつも喧嘩ばかり。
いたたまれなくなって、大好きな祖父の家へ向かいかけたこともしばしば。
そのたびに家出を思いとどまり、祖父に電話をかけては安心する。
ある日、シャオジエという転入生がやってくる。
彼が描いた裸体画を見て同級生らは興奮、シャオジエと喧嘩になる。
芸術の才能は認めるが同世代には刺激が強すぎるとして
教師から学校にスケッチブックを持ち込まないようにと言い渡される。
シャオジエに興味を持ったシャオメイは彼のあとをつける。
どうやら彼も家庭に問題を抱えているらしく、ふたりは親しくなるのだが……。
星空のジグソーパズルがキーワードになっています。
発熱したシャオメイをシャオジエが負ぶって走るときに見る星空が想像を超える美しさ。
これはぜひとも劇場で観たかった。
台湾で別れを余儀なくされたふたりが何年も経ってからパリで再会なんて、
そんな偶然あるかいなと思うけれど、瑞々しく切なくて、心に残るシーン。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 今年観た映画50音順〈な行〉 | トップ | 今年観た映画50音順〈ま行〉 »

映画(は行)」カテゴリの最新記事