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『Summer of 85』

2021年10月11日 | 映画(さ行)
『Summer of 85』(原題:Ete 85)
監督:フランソワ・オゾン
出演:フェリックス・ルフェーヴル,バンジャマン・ヴォワザン,フィリッピーヌ・ヴェルジュ,
   ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ,メルヴィル・プポー,イザベル・ナンティ他
 
シネマート心斎橋にて3本ハシゴの1本目。
目当てはこの後に観た2本目と3本目でしたが、これもかなりよかった。
 
原題が“Summer of 85”の作品が過去にもあったんですね。
1981年のアメリカ作品で、どうもエロいやつらしいです。
だって邦題が『ワイルド・ポルノ/みだりに後ろから』だから(笑)。
と思ってさらに調べたら、原題が“Summer of '72”で、
邦題が『ワイルド・ポルノ/みだらに後ろから』というのもあるよ。
何かの間違いでは。まぁ、どうでもええか。(^^;
 
さて、本作はポルノではありません。
フランソワ・オゾン監督によるボーイズラブものというには重い作品。
英国の児童文学作家エイダン・チェンバーズの『おれの墓で踊れ』の一部が原作ということですが、
たぶん原作には性的な意味合いはないのでしょうね。なんとなく。
と思って、今、原作のあらすじを調べてみたら、ちゃんと同性愛の話のよう。
特別なことじゃなく普通のこととして描かれるのはいいと思う。
 
1985年の夏休み。
16歳の少年アレックスは、友人から借りたヨットでひとり沖へと出る。
うとうと居眠りして目覚めると、遠方に大きな雨雲。
慌てて戻ろうとしたときに操縦を誤って転覆してしまう。
 
絶体絶命かと思われたが、偶然通りかかった18歳の少年ダヴィドに助けられる。
ずぶ濡れのアレックスはダヴィドの家に招じ入れられ、
彼の母親から風呂に着替えに食事にと手厚いもてなしを受ける。
 
すぐに意気投合するふたり。
やがてアレックスはダヴィドの母親が営む店でバイトをし始める。
始終一緒にいるふたりは親密な関係になるのだが……。
 
生気のない顔をしたアレックスを映し出すシーンから始まります。
どうやらダヴィドがすでに亡くなっているらしく、
ダヴィドの墓でアレックスが何かやらかしたこともわかる。
現行犯で捕まった彼がいったい何をしたのか、そしてどうしてそんなことをしたのか、
理由を徐々に明らかにする形で、回想シーンとして物語は進みます。
 
アレックス役のフェリックス・ルフェーヴルとダヴィド役のバンジャマン・ヴォワザンは
共にオーディションで選ばれたそう。
フェリックスは男女どちらからもモテそうな美少年。
一方のバンジャマンはワイルドな感じで、この顎はヴァンサン・カッセルを思い出す。
目つきも何もかもやらしいので、こんな奴にハマるなよアレックスと思わなくもない(笑)。
 
アレックスに文学の才能を見いだしていた教師は、
心を閉ざしたアレックスに気持ちを文章にしてみることを勧めます。
イケメンのメルヴィル・プポーがその教師役なのですが、
頭頂部が薄くなったモジャモジャ頭をしていたので、最初そうだとは思わずビックリ。
イケメンのままじゃ駄目だったのかしら。
 
自分が将来何をしたいのかなんて聞かれてもまだわからない年頃。
「僕に何をしてほしいか」と問う息子に対して、
父親はひたすら「仕事に就け」と言い、母親は「あなたが幸せだと感じることをしてほしい」と言う。
ゲイであることを公表しているフランソワ・オゾンやグザヴィエ・ドランの作品を観ると、
両親共に葛藤があるとしても、息子にとってはやっぱり母親なのかなと思わずにはいられません。
 
重い部分もありますが、クスッと笑えるシーンもあって爽やかな余韻も。
女性向きだと思う。

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