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『淪落の人』

2020年04月22日 | 映画(ら行)
『淪落の人』(原題:淪落人)
監督:オリヴァー・チャン
出演:アンソニー・ウォン,クリセル・コンサンジ,サム・リー,セシリア・イップ,ヒミー・ウォン他
 
京都シネマで4本ハシゴの2本目。
大阪の劇場が休業中でなければ、きっとシネ・リーブル梅田で観ていたでしょう。
 
予告編を観たとき、『最強のふたり』(2011)の二番煎じを想像していました。
だって、身体に麻痺があって車椅子に乗る主人公が家政婦を雇うって、
男か女かの違いを除けば、まんまおんなじ気がしましたから。
そう思いつつもいい話だろうと思って観に行ったら、やっぱりいい話。
むしろ本作のほうがより共感できます。おなじアジアということなのかなぁ。
 
不運な事故に遭って半身不随となった男リョン・チョンウィン。
妻は息子を連れてリョンのもとを去り、再婚。
リョンはわずかな賠償金を頼りにつましい一人暮らし。
車椅子生活ではいろいろと不便があり、身の回りの世話をしてくれる人が必要で、
フィリピンから出稼ぎに来た家政婦エヴリンを雇う。
 
エヴリンは英語はできるが広東語はできない。
リョンは英語ができないから、意思の疎通を図るのも大変
しかし、看護師だったエヴリンは下の世話なども嫌がらない。
ほかに家政婦を探すのも面倒になり、エヴリンを雇い続けることにするのだが……。
 
『最強のふたり』の雇い人と雇われ人が同じ国の人間だったのに対し、
本作は香港とフィリピンというまるで違う国の人間。
エヴリンには夫がいて、その夫と別れるべく香港へやってきました。
フィリピンの婚姻事情については私は全然知りませんが、
離婚するのはたいそう難しいらしく、エヴリンも苦労しています。
 
フィリピンから香港へ出稼ぎに来ている女性たちはSNSを通じて繋がり、
情報を共有し合って、たまにストレスを発散すべく女子会なんかも。
道端に段ボールで囲ったスペースを作り、
そこでお菓子を食べながら話している姿は衝撃的でした。
家政婦として務めるときはバカのふりをしたほうがいいというアドバイスも受けます。
 
写真家になりたくて、大学にも合格していたのに、
夢を諦めざるをえなかったエヴリン。
その夢の実現になんとか協力したくてこっそり行動を開始するリョン。
彼が事故に遭った当時の同僚ファイ役をサム・リーが演じていて、非常によかった。
ファイが何故にこれほどまでリョンに手を貸すのかをエヴリンに問われたとき、
自分はよそからやってきて、広東語も下手で、
だけどリョンだけは優しかったと答えます。
国の事情を垣間見ることができて、いろいろと心に刺さりました。終盤は涙の嵐。
 
英訳タイトルは“Still Human”。
そう、どうなろうが、人は人。
車椅子に乗らなければ動けなくても、心持ちは運べる。
 
今のご時世でも、心持ちだけは運びたい、届けたいですね。

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