夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ブラック・クランズマン』

2019年03月30日 | 映画(は行)
『ブラック・クランズマン』(原題:BlacKkKlansman)
監督:スパイク・リー
出演:ジョン・デヴィッド・ワシントン,アダム・ドライヴァー,ローラ・ハリアー,トファー・グレイス,
   コーリー・ホーキンズ,ライアン・エッゴールド,ヤスペル・ペーコネン,ハリー・ベラフォンテ他
 
ダンナ出張中で毎晩映画三昧できるはずなのに、風邪をひきました。
先週初めから喉が痛くて、これは普通なら鼻に来て熱も出るパターン。
なのに先週は土曜日も出勤予定だったから寝込んではならぬと自らに言い聞かせ、
毎日仕事帰りにとりあえず1本ずつは観ました。
 
金曜日、体調は恐ろしく悪かったけれど、「明日の仕事が終わるまでは倒れちゃ駄目」と、
さらにハードなスケジュールを自分に課し、終業後に2本観ることに。
次年度に繰り越せない有休のうち、時間休が1時間だけ残っていたので、
16:15に上がって、なんばへ向かいました。
 
17:50からTOHOシネマズなんば別館で上映開始だった本作。
16:15に職場を出れば余裕で間に合うと思っていたのに、すでに中環も新御もババ混み。
いつも駐める堺筋沿いのタイムズに入庫したのは17:40でした。ギリギリ。
 
『グリーンブック』のオスカー作品賞受賞を「最悪」と称したスパイク・リー監督。
それを聞いてさぞかし小難しい作品を撮る人なのだろうとお思いになった方。
そんなことはありません。
アメリカで黒人の置かれた状況、そして今も置かれている状況を
ユーモアを織り交ぜつつきっちりと描いている人です。
 
映画のネタになる話がどれだけ転がっているねんと思うほど、実話が基の作品が多い。
そんな中でもこれはぶっ飛び。実際にあったことだなんて。
タイトルの「クランズマン」は白人至上主義団体“KKK(クー・クラックス・クラン)”のメンバーを指します。
「ブラック」だから、「黒人のKKKメンバー」ということですよね。あり得ないけどあったこと。
なお、主演のジョン・デヴィッド・ワシントンはデンゼル・ワシントンの息子。
お父さんとはちょっとちがうコメディ路線で活躍できそうな感じです。
 
1970年代後半のアメリカ・コロラド州
アフリカ系アメリカ人のロンは、コロラドスプリングス警察で人種を問わない求人があると知って応募。
同警察初の黒人刑事となる。
しかし求人は「差別をしません」というポーズだけだったのか、
実際に就職してみると、ロンに与えられた仕事はファイルを探す係。
露骨に差別的な態度を見せる署員もいて、ロンは面白くない。
 
ある日、署長から潜入捜査の任務に就くように命じられて大喜びするが、
それは黒人運動の指導者を迎える集会に参加して情報を収集せよというもの。
つまりは白人の手先になれというものだった。
その後に言い渡されるのもつまらぬ仕事ばかり。
 
そんな折り、ふと目についたKKK地方支部のチラシ。
ロンは白人を装って独断で電話をかけ、「KKKの活動に興味がある」と伝える。
するとそれを信じたKKK支部が有望な新メンバー獲得だと思ったのか、
ロンに会いたいと連絡を寄越す。
 
KKKを叩く絶好のチャンスに、上司たちもロンの潜入捜査を認めるが、
ロン自身がKKKの支部に出向くわけにはいかない。
そこで、ロンの先輩刑事でユダヤ人のフリップがロンのふりをすることに。
 
こうして電話はロン、実際にKKKメンバーと会うのはフリップと役割分担。
無謀とも思える計画が実行に移されるのだが、意外にも上手く潜入捜査は進み……。
 
ロンの代わりに現場へ行くフリップはユダヤ人。
KKKは黒人ばかりかユダヤ人も認めていません。
だからユダヤ人であることがバレてもいけない。
フリップのことをユダヤ人ではと疑うKKKメンバーからパンツ脱がされそうになったりも。
そもそもロンが最初の電話でうっかり本名を名乗っているところからもう可笑しい。
 
フリップ役のアダム・ドライヴァーの顔が私はどうも苦手なのですが、
『パターソン』(2016)と本作の彼は良かった。
フリップと、ヤスペル・ペーコネン演じるもうひとりの先輩刑事フェリックスがごく普通で◯。
新人の黒人刑事を馬鹿にする署員もいるなか、彼らにとっては新人は新人でしかない様子。
上司たちも、世間の黒人に対する偏見に対抗する気はないけれど、
ロンの「やる気」は買って、とりあえずはやりたいようにやらせてくれる。
彼が白人になりすました電話に相手がまんまと騙されるのを
みんなで聞いて笑いをこらえるのが大変というシーンも好きでした。
 
客席からしばしば笑い声が沸き起こるほど面白い作品でしたが、
それと同時にめちゃくちゃ重い。恐ろしい。
観た者が笑っておしまいにはできない力強さがあります。
 
闘いつづける監督、スパイク・リー。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『天国でまた会おう』 | トップ | 『ビリーブ 未来への大逆転』 »

映画(は行)」カテゴリの最新記事