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『北朝鮮をロックした日 ライバッハ・デイ』

2018年07月29日 | 映画(か行)
『北朝鮮をロックした日 ライバッハ・デイ』(原題:Liberation Day)
監督:モルテン・トローヴィク,ウギス・オルテ

ナナゲイで3本ハシゴのラストは、またしても北朝鮮の話ですが、
前述の『ワンダーランド北朝鮮』はドイツ/北朝鮮作品、
本作はノルウェー/ラトビア作品です。

2015年8月15日、北朝鮮の祖国解放70周年記念日。
北朝鮮から招待された「初」で「唯一」の海外ミュージシャンは、
スロベニア(旧ユーゴスラビア)のロックバンド“ライバッハ”。

北朝鮮が初めて欧米のロックバンドを招待するということで、
世界中のマスコミが沸き上がったとか。
本作の冒頭でも面白可笑しくニュースを読み上げるキャスターが。

おそらく「初めて呼ばれたオレたち」ということで監督もメンバーも大興奮。
意気揚々と、ちょっぴり(かなり)自慢げなところも見て取れるのですが、
なにせ北朝鮮ですから、勝手なことは何も許されない。
宣伝用写真も選曲もパフォーマンスも背景映像も、すべてチェックされます。
かつ、現地スタッフは照明やマイクなどの舞台装置について知識のない人ばかりで、
ライバッハ側のスタッフは唖然呆然愕然。

それだけ検閲するならなんでこんな過激なバンドを呼んだのか。
ナチスを思わせる見た目に、パフォーマンスだって過激。検閲を通るわけがない。

私が辛かったのは、彼らの音楽そのもの。
日頃好んで聴かない音楽でも、映画を通じて好きになったジャンルが結構あります。
ヘヴィメタをよく聴くきっかけになったのはこれだし、
今でもそんなには聴かないけれど、ヒップホップも悪くないと思ったのも映画の影響。
でも私、ライバッハは無理。
『アイアン・スカイ』(2012)の音楽を担当したのが彼らでしたが、
あれは映画の内容と合っていたから良しとして。
ネオナチ風の見た目についていけないうえに、ボーカルの声が男女とも好きじゃない。
途中で耳をふさぎたくなりました。

『北朝鮮をロックした日』という邦題に、
観客がノリノリで超盛り上がるという話なのかと思ったら、全然。
ごく少数、リズムに合わせて肩を揺らしている人がいるぐらいで、
大半は不思議なものでも見る表情。私のように耳をふさいでいる人もいます。

北朝鮮に呼ばれた初の欧米ロックバンドといっても、
ウリである挑発的パフォーマンスをいっさい見せることができず、
結局、与しやすいバンドと思われて呼ばれたのではと思ったりも。
ロックの殿堂入りを果たしているようなバンド、
たとえばU2とかキッスとかELOとか、
メタリカだったりガンズ・アンド・ローゼズだったりは
呼ばれないというのか呼べないわけで。

聴衆に受け入れられるようにと、北朝鮮の大ヒット曲『行こう白頭山へ』や、
国民的民謡『アリラン』を歌おうとする姿も、迎合しているように思えて、う~ん。
こういうバンドだからこそ、好き勝手やっているところが見たい。
こんなふうに扱われるために行ったわけじゃないでしょうに。
それが北朝鮮という国だから、仕方ないといえば仕方がないか。

それにしても向こうで歌われる曲は、老若男女だれが聴く曲であろうとも、
すべて「元帥様」に捧げる曲。なんなんだ、この歌詞は!

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