雲ひとつなく晴れ渡った空から、心地よい風が吹き抜ける。
どこまでも続く紺碧の海は、あくまでも広く穏やかで、わたしの悩み事など取るに足らないものだと優しく慰めてくれているみたいだった。
今日は、久しぶりに休暇を取って、沖縄に来ていた。
念願のスキューバダイビングのライセンスを取得するためだ。
休暇と言っても、もう戻る勤め先はない。
事情があって、この旅に出発する前、退職届を提出してきた。 . . . 本文を読む
「今日はご苦労さん」
店長は上機嫌で生ビールの入ったジョッキを掲げた。
「乾杯っ」
理香がわたしのジョッキにカチンっと合わせてきた。
わたしも、渋々、ジョッキを持ち上げ、形ばかりの乾杯をした。
店長はジョッキに並々と注がれた生ビールを、ごくごくと一気に飲み干した。
「ぷはぁっ。うめえっ」
わたしは、呆気にとられていた。理香もそんな店長の飲みっぷりを横目で怪訝そうに見ている。
「いやぁ。実はね、本日 . . . 本文を読む
その朝、わたしは、どうしても布団の中から起き上がることができなかった。
身体が鉛のように重い。
男のものを扱き続けた右腕はパンパンに張っていたし、太腿には鈍い痛みのような痺れがあった。そして、男たちが執拗に触ってきた胸や股間は、自分のものでないような妙な違和感があった。
これが、風俗で働くということなのかと思った。
時計の針は、午前8時を指していた。今から起きて準備をしたところで、会社の始業には間 . . . 本文を読む
ラブホテルの1室に入ると、彼はわたしを抱き寄せキスをした。彼のキスは、舌を絡める濃厚なディープキスだ。口を抉じ開けられた上に、口唇も舌も思いっ切り吸われた。どんなことでも応じる覚悟はできていたつもりだったが、実際にこうして彼の好きなように扱われると、惨めさが先にたった。
わたは、彼に何を期待していたのだろう。彼はわたしの恋人なんかではない。
彼は、わたしの乳房を服の上から掴んだ。
彼の行動 . . . 本文を読む
わたしは夢を見ていた。
ひどくエロチックな夢だった。
半人半獣の男に犯されている夢だ。
男はペニスを扱き、勃起させると、わたしにそれを見せつけた。
男のペニスは馬のように巨大だった。
わたしは、思わず「ごくり」と息を飲み込んだ。
馬の下半身を持った男は、わたしにのしかかってきた。
男の毛むくじゃらの厚い胸板で、わたしの乳房は押し潰された。
男は、その巨大なものでわたしを貫いた。
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彼の別荘は、郊外の山の中にあった。付近には家もなく、それだけに街中の喧騒とは無縁の静寂漂う場所だった。リビングから一望できる市街地の夜景は、現実離れした美しさだった。
わたしがその夜景に目を奪われていると、彼が背後から近づいて、わたしのレオタードを引き摺り下ろすように脱がし、奪い取ってしまった。衣服とは言えないようなレオタードだったけれど、それさえ脱がされ、こうしてパンスト1枚にされてしまうと . . . 本文を読む
沖縄から戻り、休暇は終わった。明日からは、またあの地獄の日々が始まる。
わたしは、ぼんやりと手首を眺めていた。ここをぐさっと切ったら、赤い血が流れるのだろうな。痛いかな。でも、たくさん血が流れたら死ねる。死んだら、もう、あんな辛いことをしなくていいんだ。死にたいな。
わたしは、正直、そんなことを考えていた。
お金のことなんて、もうどうでもよくなっていた。多分、借金なんて、もうないはずだった。それ . . . 本文を読む
ガタンという音を不審に思ったひとみは、ソファから立ち上がって、ガラス越しに暗い中庭を凝視した。
外部からの侵入者に対しては、日本の住宅は欧米と比べて、驚くほど鷹揚である。この別荘もその例外ではなく、警備会社の警備システムはあるものの、門扉には鍵すらなく、中庭への侵入は容易であった。
中庭から室内に入ろうとして、ガラス戸を無理に開けようとすれば、たちまち警報が作動し、10分以内に警備会社から警備員が . . . 本文を読む
ヒロシは、わたしの中に盛大に射精すると、いったん、わたしの身体から離れた。
わたしが両脚を閉じようとすると、ヒロシが鋭い声で怒鳴った。
「誰が股を閉じてもいいといった。そのまま開いているんだ。」
仕方なく、そのままにしていると、ヒロシの放った大量の精液が溢れ出し、どろりとお尻の方に垂れるのが判った。
「久しぶりだったからな。随分とたくさん溜まっていたもんだ」
ヒロシは、肘掛け椅子に縛り付けられてい . . . 本文を読む
「社長の出張は、いつまでだった?」
わたしは、ひとみに彼のスケジュールを確認した。
「3日後の最終便で帰ってくる予定です。会社には戻らず、多分、空港からここに直接帰ってくるのではないかと思います。空港着が予定では6時20分、空港からここまでが約40分・・・・・・」
「今日が14日の火曜日だから、15、16、17日・・・・・・、タイムリミットは金曜日の午後7時ね。それなら、なんとかなるわ。明日は忙 . . . 本文を読む
その晩、わたしはいつもよりも多く飲んで、確かに少しハイテンションだったことは認める。だけど、だからといって、これほど酷い目に遭うことはないと思うのだ。
あれは、アーリーというショットバーで飲んでいた時のことだった。
その店は女性バーテンが二人で切り盛りしていて、女性客も多く、女一人でも気軽に入れる店だったから、わたしも良く利用していた。女バーテンたちは、女性らしい細やかな気配りで女性客にさりげ . . . 本文を読む
その晩から、3日くらい経った週末のことだ。美幸から携帯に連絡が入った。彼女から連絡が入るなんて、めずらしいことだ。
「美幸? どうしたの。何か用?」
「ええ。これから、お店なンだけど、今日、会社の帰り、寄ってくれない?」
なんだか、声が暗い。
「いいわよ。でも、一体、どうしたの。」
「う・・・ん。来てくれたら、話すわ。」
「判った。じゃあ、食事して、そうね、8時頃、寄るね。」
わたしは、8時 . . . 本文を読む
結局、浩一郎は助からなかった。病院で浩一郎を診た主治医からそう告げられた時、わたしはへなへなと座り込んでしまった。とても立ち上がる気力はなかった。どうしてわたしがこんな目に遭わないといけないのだろう。
簡単な説明の後、彼の両親への連絡を頼まれた。わたしは彼の婚約者・・・救急隊長が主治医にそう報告したらしい・・・であり、肉親ではないので、遺体を引き取ることが出来ない。それにしても、彼のご両親に、 . . . 本文を読む
わたしは、その次の日、銀行を無断欠勤することにした。馬鹿らしくて出勤する気にならないのだ。石本社長のところには、もっと行く気がしない。一体、わたし、どうなっちゃうんだろう。
「ねえさん、大丈夫なの。今日は、銀行、休むの?」
わたしが起きないものだから、妹の由香が心配そうに、寝ているわたしの顔を覗き込んだ。
「いいのっ。ねえさんは、これから少しの間、休暇を取ることにしたの。」
「 . . . 本文を読む
どうしよう。とんでもないことを言ってしまった。その夜は、どきどきして一睡もできなかった。
次の日の朝は、会社を休もうかと思った。しかし、定刻には、社長の専用車がわたしを迎えに来た。わたしは自らの意思ではなく、別の大きな意思に操られる如く、車に乗り、社長を迎えに行った。わたしは、既定のコースを単にトレースしているような感覚にとらわれていた。車はいつもと違う道を通り、閑静な高級住宅街の中に入ってい . . . 本文を読む