メカニック日記

メカニックです。仕事ネタから感じた事思った事など気まぐれに更新していきます…

ファイター…ミッションO/H。

2022-09-07 23:21:00 | ふそう
3速ギヤ鳴りが酷いという事でミッションO/Hの依頼を受けたファイター。 


今回の作業もメインは昨年入社したメカニックに任せ、私はアドバイスやサポートに徹しております…

その為、写真は端的になります…笑


ミッション降ろしてオーバーホールの準備…


ミッション立てて…


ベアリングを抜いていきます…




3速ギヤ鳴りという事で見積りには3速ギヤも交換する予定で作成しておりましたが、バックオーダーしてあったギヤがまさかの行方不明…
バラした結果、3速ドッグギヤには若干の減りはあるものの軽微だった為にギヤはそのまま再使用でシンクロ関係だけ交換する事に…

とりあえず3速なんで全バラですね…
メインシャフト抜いてシンクロ関係を交換します。




シンクロコーンは摩擦抵抗が減った為に溝の中で踊った時に出来る打痕がありました。


3速ドッグギヤには若干のキズがありますが、再使用には問題ないでしょう。


シンクロナイザーリング、コーン、ハブ、スリーブは交換。




で、ギヤを組み立て…





メインシャフトの組付け完了。




このミッションはギヤの配列上、インプットシャフトとセットでハウジングに入れる必要があります…


5速カウンターギヤはシザースギヤのため、合わせる時に注意が必要です。


更にメインケースの組み付け…



6速ギヤやリバースアイドルギヤの組み付け…



リヤカバーも取り付けて…




電磁リターダも組み付けます。


そこからミッションを横向きに戻して…


コントロール系やインターロックを組み付けます。



更にレリーズフォークなども組み付けたらミッション単体での作業は完了。


クラッチはズルズルのため問答無用で交換。





自分は要所要所でサポートしただけなので写真が少ないですが無事に修理も完了…



今ではこういったオーバーホール作業をする整備工場は本当に減ってきています…

何でもかんでもリビルトや中古や新品に交換と…
その選択、お客様じゃなくて自分達の都合じゃない?と思うこともしばしば…

色々な選択肢がある中でお客様がオーバーホールを望めばその作業を行えるだけの設備と技術は持っておきたいものですよね。





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スーパーグレート…ポンプモジュール修理。

2019-12-06 11:18:00 | ふそう
尿素SCRシステムの基幹部品であるポンプモジュール…
尿素水を吸い上げ加圧してドージングモジュールまで送るための機構です。

今現在、世界中の自動車に搭載されている尿素SCRシステムは全てBOSCHの尿素SCRシステム…
つまり、シェア100%…

初期の頃のシステムはdenoxtronic1なんて言って、コレは尿素SCRシステムを始めて採用したUDのクオンやふそうのスーパーグレートに搭載されています。
見た目はデカイ弁当箱みたいなポンプモジュールなんですが…
この頃のポンプモジュールは尿素水をタンクから吸い上げてドージングモジュールまで圧送し、マフラー内に噴射する時は圧縮エアーを使い噴射しています。
その為、ポンプモジュールには尿素水経路とエアー経路が組み込まれています…
過去にも記事にしましたが、このタイプのポンプモジュールで定番の故障はドライヤーを通り抜けたオイル成分を含んだエアがポンプモジュールに入り込みエアー経路内で酸化劣化する事で経路を閉塞させてしまうトラブルで…(ちなみにコレもエンジンオイルが蒸発する事で起きるトラブル)
尿素水を噴射するためのエア圧が確保出来なくなりチェックランプを点灯させます…


まあこの手のトラブルは少々注意事項はあるもののエアー経路を掃除してやればほとんどのケースで改善されます。

その他のトラブルとしては起こるのはセンサーやアクチュエータのトラブルで、内部のセンサーやアクチュエータ類が機械的な不具合を起こすケース。
実はこれも問題のセンサーやアクチュエータを交換する事により修理する事は可能なんですが…
残念ながらメーカーからはポンプモジュール内部の部品供給がありません。

そのため、ディーラーさんに持ち込めば問答無用でポンプモジュールASSYでの交換となり修理代がとんでもない値段になります…
ちなみに、このdenoxtronic1のポンプモジュールはUDさんの純正新品定価は約56万、ふそうさんのポンプモジュールは約72万となっています。
UDさん内部ではメーカーリビルトがあり値段は知りませんがディーラーにのみリビルト品の供給販売があるようです。
また、BOSCHの指定サービス会社さんに問い合わせるも、契約上の問題でメーカー経由の依頼しか受けられないというなんとも歯がゆい対応。

その結果どういう事が起きているかというと良くも悪くもディーラーさんに修理を依頼するしかなくASSY交換で高額な修理費用が必要になっているわけです…
まあコレもメーカーさんの囲い込みの一種だとは思いますが選択肢が無いというのはユーザーにとって必ずデメリットになります。


実は今回の車両、このブログ経由で修理のご依頼を頂いた車両で…
ディーラーでの修理見積りは80万超え…

メッセージで相談を受け、話を聞いた時点では内部センサーの不具合だろうという判断でした。
それなら何とかなるかな…ということで受け入れたんですが、今回はちょっと特殊なケースだったので記事にしてみることに。

関東より自走で愛知県まで来て頂きました…



症状としてはSCRのチェックランプが点灯したり消灯したり、その後はずっと点灯していたり…という症状がランダムに出る状況でした。
写真撮り忘れましたが最初に診断機で確認した故障コードは…
P1BB1  SCRシステム
P1B86  尿素水温度センサー(P/M内)
P1BA8  CAN通信(SCR ECU)
P1BA3  識別センサー(CAN)

といったようなコード。

P1BB1とCAN系のコードはとりあえず無視…

チェックランプが点いたり消えたり…という事は、同一サイクル中の復帰性があるエラーコードと絞れる訳で、そうなってくると気になるのは温度センサーのコード…

データを点検すると尿素水タンク内の温度に対してポンプモジュール内での尿素水温度がマイナス表示。


更に詳しくデータを注視しているとポンプモジュール内の尿素水温度が目まぐるしく変わり、温度としてはあり得ない変化を起こしていました。



コレは明らかにおかしなデータとなっており、センサーは機能していない事は容易に想像できます。

この時点ではセンサーを交換すれば直るだろうと安易に考えていたんですが…

今回のケースはそう簡単にはいきませんでした…

まずはポンプモジュールの取り外しから…



カバーを外して…



問題の尿素水温度センサーの単体点検をしてみると…



見事にオーバーレンジ。



と、思いきや突然導通しだして抵抗値が目まぐるしく変化…

↓はその時の抵抗値の変化を撮った動画。



とりあえず、原因を確定させる為にウチがストックとして持ってるテスト用のセンサを取り付け…



モジュールを車両に仮付けしてセンサーの数値の変化を見ることに…




このセンサは可変抵抗に5V電源を加え電圧変化から温度を測定するオーソドックスなタイプ…





ちなみに仮に付けてあるセンサはちゃんと生きているモノです…
外気温約21℃で2.3kΩ。



ところが正常なセンサなのに電圧が全く変化せず…
データ上の温度もマイナス固定で変化が無い…
試しに色々と手持ちの抵抗を間に入れて意図的に抵抗値を高くしても5Vのまんま…



⁉︎

センサ交換で直ると思っていたものが中々厄介な状態と判明…

もしかしてDCUがご臨終…⁉︎

その後も色々と検証をした結果コンピュータが悪さをしている可能性があるという事で、今回は初の試みでしたが、特殊な方法で修理してみる事に…





こちらは上手くいきました…



更に分解ついでによく詰まるエア経路のお掃除も行い…



全て組み付けて、フィルターも新品に交換。



で、車両にドッキング…


接続を再度確認して…


診断機を接続して過去コードやメモリをリセット…






故障コードも消え…



エンジン始動…
無事に温度も正常な数値に戻りました。


当然タンク内温度との差も正常値になり…



無事にチェックランプも消灯。



その後システムテストを行い全て正常に機能する事を確認…
作業サポートによる尿素水の添加量もキチンと確認していざ試運転。

トータルで200km以上試運転しましたがチェックランプも点かず、尿素水も正常に減っており問題なし…


あとは各部に漏れや締め忘れがないか最終確認をして…





無事に修理は終わり…
先日、無事に引取りも済んで完了。

今回はイレギュラーな作業の為修理費用も少々かかってしまいましたが、それでも新品交換と比べ修理費用は約半額。
またケースによってはもっと安価に修理する事も可能な事も分かりました…
部品さえ出れば修理可能なモノも部品が出ないからという理由で80万はやっぱり納得出来ませんよね…


今回のトラブルは初のケースで私自身も色々と勉強になり非常に貴重なデータが取れました。


で、今後もこういった特殊な修理に対応するため日本では入手困難な部品を海外の会社と協力して仕入れる準備もしています…
まだまだ100%対応は難しいですが出来る事から少しずつ進めていきます…

この辺りの修理技術や体制を確立出来れば交換する必要のない部品は交換しなくて済む訳で、それはイコール修理コストの削減に繋がります…

修理技術はやっぱり実践していかないと確立出来ませんからね…


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エンジンオイルの重要性。

2019-10-22 23:22:00 | ふそう
題名はさておき、まずは近況です…

先日、振興会の方から連絡があり、ようやく陸運局による現地審査日が決定しました。

申請から審査まで本当に1ヶ月かかりました…

我々民間の業者からするとなかなか理解しがたいですが、色んな業種の方と話してるとお役所はそんなもんらしいです…
知り合いの方も飲食店を開業する時に苦労したと言ってましたが…

1日でも早く営業したい側からすると1ヶ月営業出来ない場合の損失がどれほどのものなるのかは到底理解してもらえないんでしょうかね…
実際には審査に来てから認証が下りるまでにも更に日数がかかりますから…

まあ、とにかくこれで少しは前に進めそうです。

そんなこんなで悶々とした日々が続いておりますが…


まずはFP54スーパーグレート。

たまにエアーが全然たまらない時があるという事でお預かりしたんですが…
車両を引取回送中に見事に症状が発生。

エンジン回転を中速まで上げレーシングさせても4kg/㎤にも満たない状態が続き、走行不能になりました。

話を聞いた時点でおおよそ予想はついてましたが…

点検ハンマーでプロテクションバルブを軽くコンコンしてあげると、シューンという音と共にエアがたまりました。

コレ、どこのメーカーの車両でもこの手の不具合は発生しますが…
原因はマルチプロテクションバルブ内部のバルブ固着や摺動不良。

で、そのバルブ固着や摺動不良の原因となるのがドライヤーの機能低下によるもの。

更にそのドライヤーの機能低下の原因となっているのがエンジンオイルなんですが…

まあこの話は後で詳しく書くとして…


とりあえずマルチプロテクションバルブの交換とエアドライヤーのオーバーホールを行う事に。



プロテクションバルブのリビルトもあるらしいのですが値段的にはあまりメリットを感じないので、プロテクションバルブは新品交換、エアドライヤーはオーバーホールという形をとりました。


ゴソゴソしてドライヤー&プロテクションバルブを取り外し…





取り外したエアドライヤー&プロテクションバルブ。



エアードライヤーはコンプレッサーで圧縮されたエアー中に含まれる水分や油分を除去するための機構で、プロテクションバルブはそのドライヤーから出た乾燥した空気を各機構に分配します…
更にプロテクションという名の通り、万が一、分配先の機構でエアが急激に減るような事態が起きても他の機構(ブレーキ用のエアなど…)に与える影響を最小限に抑える役目を持っています。

つまり、このプロテクションバルブがエアーで制御される各機構への分岐点という事になります。
よくある症状で特定のタンクにだけエアがたまらない…なんてトラブルはプロテクションバルブ不良によるものがほとんどです。


まずはドライヤーのバルブボディーからオーバーホールする事に…
開けてすぐにこのオイルの量ですよ…




更にエアーコンプレッサーからの導入口はスラッジが蓄積しています…



エキゾーストバルブはこんな状態だし…


フィルターはこんな状態…
というより詰まってます。


フィルターが詰まっているためOリングを押しのけてエアーを排出していたようです…
妙な形に変形してます。



エキゾーストバルブを抜き取るとゴテゴテ…





チェックバルブを取り外し…





ガバナーも分解。



ちなみに今回のオーバーホールキットにはガバナーのアジャスターボルトとキャップもキットに入っている為に交換するんですが、元のアジャスターボルトの突き出し量を測定しておいた方がいいです…

画像の赤丸の部分がアジャスターボルト。



このボルトの突き出し量を測定しておきます…


で、測定した数値と同じ寸法になるよう新品のボルトを組む時に調整しておきます。
スプリングは再使用なので取り外す前の突き出し量に合わせておけばパージ圧の調整はまず必要ありません。
もちろん車両取付後の確認は必須ですが…


再使用する部品は洗浄、ゴム関係は交換して…



バルブボディー側の内部も洗浄して…



各部を組み付けていきます。



ガバナーキャップの取付ボルトは1.5Nm…



エキゾーストバルブのフィルターの新旧比較…
詰まっているのがよく分かると思います。



組み付けてバルブボディー側は完了。





今度は乾燥剤側の作業を…



もう中の状態は想像に難くないですね…
フタを開けてみると案の定オイルでベッタリ。






こちらもケースの洗浄やゴム関係の部品を交換して組み付け…



新品の乾燥剤を入れてカバーを取り付け。




カバーのボルトは6.9Nm…



更に新品のプロテクションバルブを取り付けて…



後は車両に取り付けて、パージ圧を確認して作業は完了です。



残ったプロテクションバルブを分解すると、中はオイルやスラッジでゴテゴテの状態…





シートが張り付いて取れなかった箇所もありました。





これではトラブルになるはずですね…

ここから題名のエンジンオイルの重要性の話。

エンジンオイルの重要性なんて分かってるぜ!今更何言ってんだ?…と思うかもしれませんが…
以前どこかの記事にも書いたんですが、今回のエアドライヤーのトラブルに限らずインジェクター、DPF、EGR、ターボなどのトラブルは突き詰めていくとエンジンオイルに原因がある事が分かってきています…
もちろん100%ではありませんが、多くのケースでエンジンオイルに起因しています。

どういう事かと言うと…

エンジンオイルのベースオイルはAPIによって大きく分けて5つのグループに分類されており…
今、国内に出回っているディーゼル用のエンジンオイルのほとんどがグループ1というカテゴリに属するエンジンオイルで…
このグループ1のオイルは鉱物油ベースの精製方法も簡単ないわゆる一番安価でグレードの低いオイルになります。
(ちなみに大型トラック4社の純正指定オイルは全てグループ1のオイルです)

グレードが低いとはいえ、エンジンを保護する為の役割は果たしており、定期的に交換する事で今までのディーゼルエンジンには特に問題はありませんでした。

ところが、排ガス規制がだんだんと厳しくなりEGR、ブローバイガス還元装置、高精度インジェクター、高効率ターボ、DPF、SCRなどの環境対策の為の機構が採用されるようになってからはディーゼルエンジンのトラブルは激増しました。
これは以前にも書きましたが上記のトラブルがディーゼルエンジン全体のトラブルの約7割を占めています。

そのトラブルを起こす原因の中の1つにエンジンオイルがある…という事なんです。

そもそもエンジンオイルには必ず代表性状というものがあり、これはエンジンオイルを精製販売する上で必ず必要になるもので、いわゆるスペック表みたいなもの。

その中の数ある項目の中の1つにNoack(ノアック)と呼ばれる項目があるんですが、これはエンジンオイルの蒸発性を示すもので、ある一定の条件下でエンジンオイルの蒸発量を測定したものです。
で、メーカー純正品も含めグループ1のエンジンオイルのNoackは基準こそ満たしてはいるものの、どれも高い数値でそれは言い換えると蒸発しやすいエンジンオイルと言えます。

この蒸発したエンジンオイルの成分が各機構に入り込みトラブルを起こしているわけです…

蒸発したエンジンオイルがブローバイガスと一緒に吸気側やシリンダーにまわりインジェクターの先端に付着、熱で焼かれる事で固着…
結果インジェクターの噴霧不良に繋がり…

他にもシリンダーで燃えきらなかったエンジンオイルの成分が排気ガスと一緒にEGRクーラー内部やバルブに付着する事でこれまた固着…
オイルとススですから…
どうなるかはディーゼルエンジンを整備してる方ならEGRクーラーやバルブ、更にはインマニ内部がどんな状態なのかは散々見てきているかと思います…笑

DPFしかり…
インジェクターの噴霧状態が悪くなり、EGRの効率が下がれば、もうどうなるかを説明するまでもありませんよね…

もちろんこれらには裏付けがキチンとあり、インジェクター表面、EGRクーラーやバルブの表面、DPFやDOC表面に付着している物質の成分分析をした上で、平均して付着物の約35%がエンジンオイルの成分だという事が分かっています。

もちろん、個体によってはオイル上がりや高効率タービンの副作用というケースもあるので全てのケースが蒸発したエンジンオイルという訳ではないと思いますが、蒸発したエンジンオイルが原因となっているケースは少なくありません。

では何故そんな事が言えるのか…

ディーゼルエンジンを整備している方なら比較的理解しやすいと思いますが、仮にエンジンオイルが蒸発した事によるトラブルと仮定した場合、妙に納得出来る部分が多いと思いませんか?

先ほども言ったように全てのケースで当てはまる訳ではありませんが、少なくとも私は多くの部分で今まで納得出来なかった点が線で繋がるイメージがありました。

実はその情報を元にある検証を行っていたのですが…
その検証というのが今回の車両のようなエアドライヤーにオイルが混入するというケース。
このトラブルはどこのメーカーの車両でも頻繁に起きていますが…
今までどうにも納得いかなかったのはオイル上がりが原因と踏んでコンプレッサーを換えても改善されないケースが少なくなかった事。
仮にオイル上がりが原因ならコンプレッサーを換えれば症状は緩和されるはずですが、それが全然改善されないんです…

その車両が下の車両で今回とは別の車両ですが、以前高年式の車両なのにエアドライヤーにオイルが混入してトラブルを頻繁に起こす症状でした。

一番初めはドライヤーとコンプレッサーをオーバーホールして様子見…
その時のドライヤーの状態がこちら。




酷いでしょ?

ところがその2ヶ月後に車検で入庫した時のエアドライヤーの状態がこちら…
コンプレッサーをオーバーホールしたはずなのに既にオイル汚れがありました。


底の方の写真は探したけどありませんでしたが…
底側約1センチ程はキャビア化していたのを覚えています。

で、この車両今年の3月にディーラーさんで車検をやったんですが、その時にカートリッジのオーバーホールに加え蒸発しないエンジンオイルに交換してもらったんです…

そこから半年後の点検時に検証のため、お客様にワガママ言ってドライヤーの状態を見せてもらえないか⁉︎とお願いしたところ快諾頂きカートリッジを交換してもらい、取り外したカートリッジを回収してきたんです。


その回収してきたドライヤーのカートリッジがコレ。
オイル交換後、半年で約2万キロ走行。









オイルの油分も明らかに少ないのが分かると思います…



で、カバーを開けてビックリ。
にわかに信じられませんでしたよ…
だってコンプレッサーオーバーホール後2ヶ月でオイルが混入していた車両が半年経ってもこの状態なんですから…



底の方も水分は多く付着してますがそれはドライヤーなら当然の事で、驚いたのが油分が殆ど付着していないという事。




もちろんコンプレッサーはレシプロなのでオイル上がりで混入するケースもあるとは思いますが、今回の劇的な差が使用するエンジンオイルのスペックを変えた事によるものだとしたら多くのトラブルを未然に防ぐ事が出来ます。

この信憑性を更に上げるため、実はコレ以外にも複数の車両で検証しており、最終的な結果はもう少し先にはなると思いますが、途中経過は良好です。

他にも以前勉強会に来て頂いた方々から色々と有益な情報もあるので、それらを加味して色んな角度から検証、原因を追求する事で無駄なトラブルを防げるメンテナンスに繋がればと思います。


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スーパーグレート&ギガ、DPFトラブル…

2019-10-02 07:44:00 | ふそう


まず工場の方は先日認証の申請書類を提出してきました…


無事に書類の不備もなく申請は済みました。
あとは陸運局による現地調査を待つのみ…
新規という事もあるので、とにかく早く来てもらい、早いところ認証を取得したいんですが…

そこはなんと言ってもお役所仕事…
現地調査まで1ヶ月位かかる…と言われ、そんなのいくらなんでもヒドすぎるじゃないか!という事で振興会の方に何とか掛け合ってもらうようにお願いして今に至ります。

振興会の人には親身になって対応して頂き本当に感謝です。


当然、認証の必要な作業は全て断るしかない状況で、お客様にはご迷惑をおかけしてしまっています…

現状は相変わらず認証の必要ない作業のみを受け入れおり、その中でも特に多いのがDPF関連のトラブル。


まずはそのうちの1台…
エンジンに力が無い…と感じながら走行していたところチェックランプが点灯したというPJ-FT50スーパーグレート…




現地に出向き診断機を接続して故障コードを確認…



すると…
現在故障でP1475 DPF目詰まりのコード。



過去コードでは差圧センサーのコードも。



この頃のスーパーグレートのDPFは連続再生方式を採用しており、手動再生や自動再生、更には強制再生という概念がありません…

データでDPFの差圧を見てみるとアイドリングで10kPaを超えており、更に1900rpm時には55kPaととんでもない数値…



こんな差圧ではマフラーにフタをしてるようなモノでこれではエンジンに力が無いと感じるのも無理はないですね…

差圧センサーの過去コードもあったので差圧ホースを外してデータの変化を見てみると…


ちゃんと0kPaになるのでセンサーは正常なようです…


という事でお客様に説明してその場でDPFを取り外し、工場に持ち帰り洗浄する事に。
ウチが今行なっている出張整備サービスの最大のメリットはなんと言ってもレスポンスが良い事。
勿論、現地対応可能な作業とそうじゃない作業はありますが、今回のケースでも夕方にお客様の車庫に向かい診断、その結果DPFの洗浄が必要と判断してその場で取り外し、翌朝から洗浄をしてその日のうちに車両に取り付けて完成。
という工程が可能になります。
もちろん部品が無かったり、汚れが酷かったりと全部が全部スケジュール通りに進むケースだけではありませんが、このレスポンスは休車をなるべく避けたいお客様にとっては非常にメリットがあります…


取り外したDPFを翌朝から洗浄…





今回から自社工場で洗浄作業が出来るように洗浄機も導入しました。




まずは予備洗浄…



差圧からも想像はしていましたが…
とにかく内部からは半端ない汚れが出るわ出るわ…



とにかく汚い…
結構な時間を費やし予備洗浄を終え、洗浄機に投入。
しばらく洗浄機に入れて洗浄剤を循環させます…



2〜3時間ほど循環させて仕上げを…



この6M70のDPFはデカいし重いしとても1人では洗えませんね…
ひっくり返したり、洗浄機に入れるのも一苦労です。

で、なんだかんだで洗浄は終了。
出来る限り乾燥させてまたまた現地に取り付けに行きます。

各ガスケットは問答無用で新品に交換…



差圧パイプも固着が酷く取り外す時にネジ山がカジってしまった為に新品に交換。



テールパイプも錆が酷かった為に交換。


それからビックリしたのがマフラー吊り下げ用のバンド…
2本使ってるんですが値段が1本驚愕の17,500円!!
部品商にはゼロ1個間違えてない⁉︎と確認しましたが、値段は間違いないと。
いや、これ完全にボッタクリじゃありません⁇
フラットバーをクルっと曲げただけですよ…?
いくらなんでもこの値段は盛り過ぎでしょう…

まあ文句を言ったところで値段が変わる訳ではありませんが、いくらなんでもヒドくないですかねぇ…

で、なんだかんだで取り付け完了…
エンジンを始動して乾燥させます。
アイドリングでは10kPa以上あった差圧が1kPaまで下がり…



更に2000rpm時には55kPaが7kPaまで下がりました。



新品時の差圧が分からないですが、ビフォーアフターは劇的に良くなりました。

これでこの車両もDPFのトラブルとはしばらく無縁でしょう…

最後に故障コードがない事を確認してスーパーグレートは完了です。








それから他にもDPFトラブルのEXZ52ギガ…
こちらは構内をメインに走行する車両で速度も出さないため、エンジン回転や排気温度含めDPFには過酷なコンディションで使われており…
20万キロしか走行していませんが、再生要求が頻繁にある…という事でDPFの洗浄依頼を頂きました。

こちらも現地に出向きDPFを取り外し、工場に持ち帰り洗浄。



DPFassyを分解して…





洗浄します…



予備洗浄→洗浄機による循環洗浄→仕上げ洗浄といった工程です。

こちらもエンジンオイルの油分やアッシュが出るわ出るわ…





しばらく洗浄機に入れて…






仕上げをして完成。


で、魔法の粉で後処理…
こんなんだった汚染水が…



こんな状態になります…



いや、素晴らしい…笑
で、フロックが流れない出ないようにろ過して水だけを排水。





取り除かれた大量のフロック…



今回のDPF1本から出た不純物…



それにしても大量です…
これ全てDPFに堆積していた物質ですからね…









水切り、乾燥させてから適正に処分します。

DPFのメンテナンスで何より大事なのは予防で、それはインジェクターを良好な状態に保つ事と使用するエンジンオイルの性状に気をつける事が非常に重要なポイントになってきます…

もちろんDPFも洗浄で済めば交換するより遥かに修理コストを抑えられますが、理想を言えばその洗浄のスパンをなるべく長くする事で更にコストの削減に繋がりますからね…


今色々なケースを自分なりに検証中でどうしたら無用なトラブルを減らし運行出来るか…
理想的なメンテナンスがある中で、現実的な問題もあり、どのあたりまで可能なのか…
いわばシーソーみたいな…
一方を優先させるともう一方が犠牲になる…というなんとも歯痒い感じ。

この辺りをもっと突き詰めて現実的で更に理想的なメンテナンス方法が確立出来ればなぁ…とは考えているんですが。

まだまだ答えは出ませんね…笑






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キャンター ヘッドO/H。完

2017-12-28 00:29:02 | ふそう

納期が迫っているキャンターの続きです。


前回はヘッドを載せて締め付けた所で終わってました…

後はどんどん組んでいくだけ。

カムシャフトフレームを洗浄してる間に…


カムシャフトを乗っけて…




キレイになったカムシャフトフレームをセットしていきます…


ロッカーアームも。


これは無条件で交換ですね…笑


バルブクリアランスの調整…


ブリーザーケースやらファンプーリーの取り付け。


ファンプーリーのセンターボルトの締め付けトルクは370Nmと高トルク…


どんどん組んで…




フューエルパイプも新品に交換。


補記類の取り付け…






で、おおかた完成。




冷却水を注入して…


エンジンを始動する前に燃料フィルターの交換…


フィルターケース内はかなり汚れております…


エア抜きを行い…



いざ、始動。





ヘッド修理後の冷却水液面



無事に吹き返しも無くなり水温も安定してます。


しばらくエンジンを回して各部に漏れなどが無いかの確認…






漏れが無い事を確認したらエンジンカバーを取り付けます…


最後にエンジンオイルとオイルエレメントを交換して…



各データを見ながら試運転に出かけます。



後は明日の朝、冷却水の補充と最終確認をして全ての作業が完了です。


とりあえず年内納車には間に合いそうでホッとしております…



ラスト2日は工場の大掃除と…

自分の工具の大掃除です。


2017年もあと少し…

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キャンター ヘッドO/H。2

2017-12-25 21:25:54 | ふそう

いよいよ今年も残すところもあと数日。

急な出張対応とか一般修理が重なりキャンターは放ったらかし状態でした…


そんな訳で…


そろそろケツに火がつき始めます…



加工に出してたシリンダーヘッドは戻って来てます…
0.05mm削ってもらいました。
まずはバルブのラッピングから…




フェースの当たりは特に問題ありません…



シールを入れてバルブの組み付け…




バルブの作動テストなども行い…


マニホールド類を取り付ける前に、ネジ山のカジったエキマニのスタッドボルトの抜き替え。




抜いて修正して新品スタッドを…






マニホールドの取り付け。




劣化した遮熱板も新品に交換…






インマニも…


カムアイドルギヤも取り付けて…


ヘッドを載せる準備を。
ヘッドボルトの洗浄…


ブロック上面をオイルストーンで軽く磨きつつ…


シリンダーヘッドガスケットは1番厚いCサイズを選択。


全部で3種類ありA.B.Cとそれぞれ0.05mmづつ厚みが違います。
もともと付いてた厚みは真ん中のBサイズですが、シリンダーヘッドを0.05mm削ったのでそれに合わせて1サイズ厚いヘッドガスケットに変更です。
ヘッド削ったのにガスケットが前と同じ厚みだと圧縮比や排気量が微妙に変わっちゃいますから…

シリンダーヘッドを載せて145Nmで締め付けたあと、90°の角度で塑性域締め付け。


角度締め時は日野さんのヘッドボルトの締め付け要領が分かりやすいので採用してます。
全ボルトの頭の同じ方向にマーキング、角度締めした後全てのマークが同じ方向に向いてるか確認。




角度締めで更にヘッドボルト締め付け順序で締めてると、アレ…どこまで締めたっけ⁇って思う事があるし…笑
これだと一目瞭然なので。


ヘッドボルトを締め付けた段階で本日は終了。


夜になると冷えが一層厳しくなり集中力も落ちてきます…


さあ、間に合うんでしょうか…笑




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キャンター ヘッドO/H。

2017-12-22 00:06:15 | ふそう

以前の記事で少し書いたディーラーさんからの依頼で入庫していたキャンター…


ラジエータがパンクしてそのまま走行し、オーバーヒートしたらしく…

ラジエータをディーラーさんで交換したところ、吹き返しがあるとの事でヘッドO/H作業を依頼されました。

現状の吹き返し状態

本当は先週から作業を開始する予定でしたが、すったもんだあり本日からようやく開始。

納期は年内中なのでうかうかしてられない状況です…笑

部品は先に注文しておいたので後は作業あるのみ。

まずは補記類の取り外しから。
キャンターの4M50は外す物が多いイメージがあります…





エキゾースト側をバラしにかかった所で出張依頼が…


DRFの再生ボタンが点滅してるのにボタンを押しても再生出来ない…との事でお客様の会社まで出張。

車両はQKG-PK39コンドル…

現地に着いてメーターを確認すると…


堆積モニターは90%…
DPF再生ボタンは点滅しておりますが、お客様の言う通りボタンを押しても一向に燃焼を開始しません。

チェックランプは点いて無いので再生不可制御が働いてる訳でも無さそうですし…

となると恐らくどこかしら手動再生の条件を満たしていない可能性があります…

という事でアクセルセンサーやパーキングブレーキS/W、クラッチS/Wなど関係ありそうな所を調べるも特に問題も無し。
次に水温を通常時の温度まで暖機してからボタンを押すと再生出来ました…


恐らく水温が低いと手動再生が出来ないプログラムなんでしょう…

VOLVO資本が色濃くなってからのUDさんはこの辺の制御に関する情報が全くと言っていいほどありません…というか非開示なんです。
FAINES見ても交換要領だけで修理や故障探求に必要な情報は載ってません…
トラブルシューティングに何より必要なのは『情報』ですが、その最低限の情報すら見れないんですよね…

困ったもんです…

話を戻し…
データで温度を確認。
温度も500度を超えとりあえずは問題なさそうです…


再生も無事終わり燃焼前は全開時に9.7kPaあった差圧も3.7kPaになりました。


堆積モニターもリセットされました…


という事でコンドルは終了。

ちなみにG-SCANでは強制再生には対応してませんでした…
以前、同じ型式でも対応してるタイプと対応してないタイプがあるのは何故か開発元のインターサポートの担当者さんに聞いたところ、ECUのシリアルが未確認の番号だと強制再生は出来ないとの事…
順次テストを行っており徐々に対応車種も増えていってはいるようですが今のところECUの種類が何種類あるのかも不明らしいです…(^_^;)
(ここでもメーカー側は情報非開示…)

強制再生以外にもDPFデータリセットも同時にテストしてるようでうまくいけば近いうちにアップデート出来るんじゃないか…とも仰ってました。

ホント有り難い事ですm(_ _)m

今の時代、我々の仕事は診断機が無いと何も出来ません。
故障コードを消すだけならどの診断機でもさほど大差はありませんが、トラブルシュートとなると話は別。
更には部品交換後のキャリブレーションやリセット作業も診断機が無いとどうにもなりません。
この辺りを汎用診断機メーカーさんが日々開発研究を繰り返し実機にフィードバックしてくれる事で成り立ってる訳ですからね…


会社に戻りキャンターの続きを…



インテーク側も…


結局、その日キャンターはそれ以上進まず…

翌日から続きを…

インジェクターやらヘッドカバーやらを取り外し、ロッカーシャフトやカムシャフトも…




で、シリンダーヘッドの取り外し。






更にマニホールドやバルブ類も取り外し…




カムメタルも…




この車両の走行距離は55万キロですがメタルの状態は全く問題ありません…
オイル管理が良いんでしょうねぇ…

シリンダーの状態も良好です。


メンテナンスに無頓着な運転手さんが多い中、キチンと換える物を換えておけばこれだけ距離を走っても全く問題無いという確かな結果ですね…

特に油脂関係はキチンと管理しましょう。


外れたヘッドは平研と水圧をエンジン屋さんにお願い…



ヘッドが加工に出てる間にその他の作業を…
まずはEGRクーラー。
ウチでは4M50のヘッドO/H作業時には問答無用でEGRクーラーは交換します…

取り外したEGRクーラー。


新品のEGRクーラー。


この4M50のEGRクーラーも縦置きと横置きとがありますが縦置きはやり難いですね…笑

EGRバルブを取り外す時にカジったネジ山を修正。
古くなってくるとこういった追加作業が増えます…


まずはEGRバルブとEGRクーラーを仮付け…
1つのブラケットでバルブとクーラーを固定するのでボルト穴の位置を合わせるまでは仮付けです。


ボルト穴の位置を合わせたら再度取り外してバルブとクーラーを規定トルクで本締め。


で、ブラケットに取り付けて周辺のウォーターホースも交換。


お次はサーモスタットやウォーターポンプの交換…






ウォーターポンプも…





と、本日はここまで…


今年も残すところ数日…


気を抜かずに頑張りますか…
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スーパーグレート…SCR異常。

2017-06-12 23:29:16 | ふそう
またSCR関連のトラブルです。





19年式のBDG-FU50スーパーグレート。

尿素SCRシステムを搭載した初期の型式です…


排ガス規制がBDG-はまだ6M70エンジンを搭載しております…
関係無いけどエンジン廻り汚いな…


この年式のスーパーグレートの尿素SCRは日産ディーゼル(現UDトラックス)の技術供与を受け当時のクオンと同じ尿素SCRシステムを搭載してます。
その後、ダイムラーの資本を受けたふそうはダイムラー製のエンジンである6R10に尿素SCRもブルーテックを採用する様になりました。



お客様曰く、アドブルー異常のランプが点いた…との事でこちらも出張で確認する事に。

現在はチェックランプは消灯してます…


診断機を繋いで確認してみると…


エンジンの過去故障には…


エンジン回転センサーと尿素SCRシステムのコードが…
このP1BB1…SCRシステムのコードは尿素SCRに異常があった場合にエンジン側ECUに同時に記憶されるコードで…
本来ならDCUにもトラブルコードが記憶されるはずなんですが…
問題の尿素SCR側は…


ナシ…⁉︎

整備書ではこのP1BB1が単独で検出されるのはDCU異常となっており処置としてはDCUの交換…
となってますが…
お値段が笑っちゃうほど高額。

初期のUDの尿素SCRシステムでもありましたが、エンジン側でP2042(尿素SCRシステム)と通信系の複数の故障コードを変換してSCR側の故障コードを特定する…なんて方法もありましたが…

まさかその方式じゃないよな…

システム的には同じシステムだけど…

まさかね…





ま、整備書をサラッと読んでもそんな事書いて無いので…

大丈夫でしょ…



多分…笑


データで確認する限りだと添加量のエラーを検知したようです。


今現在はチェックランプも点いて無い事からシステムは正常に作動してるんでしょうが…


なんか最近こんなケースばっかり…


とりあえず、この車も履歴データを消去して様子を見る事に…





データも当然リセットされます。


にしてもエンジンルームが汚いな…←2回目


水漏れもあるようだし…


これまた見積りを出してお客様に相談ですね。



で、見積りを作ってる時に気になったんですが…

UDのポンプモジュールは55万なのに対し、同じモジュールなのにふそうは65万…

逆にUDのドージングモジュールは13万なのにふそうは65,000円と…

ポンプモジュールに関してはコーディングの関係上無理かもしれませんが、ドージングモジュールは交換後の設定は特に必要無いので…

もしかしたら今後はわざわざ高いUDのドージングモジュール買わなくてもふそうで買った方が同じ物が安く買えるんじゃない…⁉︎



なんてセコい考えが…




ちょっと調べてみようかな…笑

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カンカンファイター…。

2017-04-21 12:33:54 | ふそう
エンジンから異音がする…という事で入庫したFK71ファイター。


若干くどいですが、この車両も3月に依頼があった車…

お客様曰くエンジンからカンカンと音がする…との事。


実際に現車を確認…
エンジンは4M50。


入庫時のエンジンの異音


ん〜嫌な音がしますね…笑

サウンドスコープで音の発生源を探っていくとエンジン下部…クランクケース内の2番と3番辺りから発生してるようで…
この時はコンロッドメタルでもいっちまったかな⁉︎…という感じ。


で、お客様にはここから先詳しい原因を調べる為にはオイルパンを外さないと…という事を伝えた結果、3月は忙しいから4月に入ってから予定を空ける…との事でした。





で、本日入庫です。

相変わらず嫌な音がしてます…


早速オイルパンを取り外して異音の原因を調べていきます。
抜いたオイル自体には金属粉は見られず…




まずは疑ってたコンロッドメタルを点検…
が、4気筒ともガタは無さそう…

アレ⁉︎違うのか…

じゃあコンロッドのエンドプレーを…(まだコンロッドを疑ってる…)

ダイヤルゲージで測定…


コンロッドのエンドプレー基準値は0.15mm〜0.45mmで測定の結果、全気筒共に0.20mmから0.25mmに収まっているので問題無し…

コンロッドじゃないのか…⁉︎
その後も諦めの悪い自分はコンロッド周辺を念入りに調べるもイマイチ原因は判明せず…

ただ、気になったのはクランクシャフトのカウンターウェイトに何か擦った様なキズがあり…


実際にクランクシャフトを回転させてみても擦る様なモノは無いし…


ノーマークだったオイルパン底を調べてみると…


何か発見…


何だコレ…⁇

磁石に付くか確認するも付かないので…
そう考えるとアルミ片…⁉︎

その後もオイルパンから出るわ出るわアルミ片が…


エンジン内部のアルミ部品と言えば…

ココでようやくピストンを疑い始める事に。←遅い…



で、ファイバースコープで各ピストンを念入りに調べてみると…




2番のピストンが…



マジっすか。

正直エンジンは普通に回ってたのでピストンは頭にありませんでしたが…

いやいや…ところで破片は⁇
こんなに大きく欠けててあんな少量の破片な訳ないよな…

という事でクランクケース内をくまなく探してみると…














ありました。笑


ピストンのスカート部が見事に欠けてます…

ランド部分は無事だったので圧縮が抜ける事も無く普通にエンジンかかってたんでしょう…


というより、よくこんな状態で1ヶ月近く使ってたな…笑

カンカンという音はピストンが踊ってたんでしょう…

エンジンブローしなくて良かったなぁ…
割れたピストン片の当たりどころが悪かったらクランクやブロックに致命的なダメージがいってたでしょう…


運が良いのか悪いのか分かりませんが…(^_^;)




とにかく、ピストンやライナーは交換必須ですね…


とりあえず直すかどうかも含めて見積りを作成してお客様と相談です。

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スーパーグレート…水漏れ修理。

2017-02-27 20:53:24 | ふそう
23年式のFU54VZスーパーグレート…


仕事を終えて片付け中にお客様から電話があり、車の下に水溜りが出来るほど冷却水が漏れてるので見に来てくれ…との依頼が。


とりあえず現地まで見に行くとアッパーホースのエンジン側接続部に噴き出したような跡があり、またホースの隙間からポタポタと漏れておりました…

リザーバータンクを確認するとちゃんと入ってますが、サージタンクのプレッシャーキャップを取り外すとプシューッと圧が抜ける音がして、それと同時に水漏れも止まりました…

メーター内の水温計を確認するも完全冷間状態…
漏れてくるクーラントを手で触るも冷たいままです…
基本的には冷間時に冷却系統の圧力が高くなる事はあり得ません。
なので何か別の原因で冷却系統に圧力がかかってしまっている状態…

となると疑わしいのはやはりコンプレッサーヘッドから抜けた圧縮エアー…

が、今日はもう遅いので詳しい原因究明は翌日にするとして…
工場に持ち込む為にこのまま走行するのはリスキーなので翌朝にレッカーを手配。





翌日、朝から現状の確認と原因追求を。
エンジンは6R10…



まずラジタン付けて補水してエンジン始動…
するとこんな感じ…
エンジン作動時の冷却水液面



泡だらけ…笑

その後エンジンを停止して泡を除去。

で、これが…

エンジン停止時の冷却水液面

プクプクとエアーが上がってくるのが見えると思います。
エンジン停止状態で吹き返すのはコンプレッサーヘッド不良の代表的な症状…

という事で原因はコンプレッサーヘッドからの抜けで間違いないでしょう。

4トンクラス以上のトラックになるとブレーキやクラッチ、その他の機構に圧縮エアーを利用している事が多くその機構上、圧縮エアーを作る必要があります。
その為エンジンの回転を利用したエアーコンプレッサーが装着されてます…

で、コレもレシプロ式のコンプレッサーが主流…というかトラックで言えばレシプロ式しか見たことありません。
シリンダーとクランクがあってコンロッド、ピストンなど…
バルブ機構こそ簡易的なリードバルブですが、水冷式のシリンダーヘッドも。
シリンダーヘッドがあるという事はヘッドガスケットもある訳で…
ヘッドは水冷式なので当然冷却水も循環してます。

そんなヘッドガスケットが抜けると圧縮されたエアーが冷却系統に混入します…
通常なら冷却系統内の圧力が高くなり、プレッシャーキャップの開弁圧力を超え、リザーバータンク側にポコポコとエアーが抜けるのが普通なんですが…
今回はラジエーターホースから吹き出し…

理由はこれ…


プレッシャーキャップ。

このキャップのゴムパッキン…


新旧比較するとこんな感じ


パッキンがベロベロのデロデロになってます。
その為、キャップ口にパッキンがくい込み、プレッシャーキャップが規定圧力を超えても開けなかった為に、冷却系統全体の圧力が上がり1番弱かったラジエーターホースの接続部が圧力に耐えられず漏れた…という事。

ただ、ホースの接続とはいえホースバンドでちゃんと締まってる訳ですからね…
ホースの劣化具合にもよるとは思いますが、一体どれ位まで圧力が上がると漏れるんでしょうか…

この車両の冷却系統の最高圧はプレッシャーキャップの開弁圧力である70kPa…

今回はそれ以上かかった事は間違いありません…
なのでどこか別の所にダメージがいってる可能性も否定は出来ません。
今回は複合的なトラブルですが、プレッシャーキャップやラジエーターキャップの定期交換はやはり必須ですね…
高い物でもないので車検毎に変えておけば安心です…



で、この車両は3月が車検月という事もあり修理と合わせてこのまま車検も依頼して頂ける事になり、車検整備と並行してコンプレッサーの修理をする事に…
車検整備ではドライヤーの交換も依頼されたんですがドライヤーのドレンはオイルでベタベタ…
そうなるとどうせコンプレッサーヘッドを修理するならコンプレッサーもO/Hしたくなりますが…

問題はこの6R10はコンプレッサーヘッド関係は単品設定があるもののシリンダー側は設定無し。

つまりO/Hは不可でASSY交換になってしまいます。

ただ、今後の事も踏まえお客様には交換を提案。

結果的にコンプレッサーはASSY交換する事に…


車検整備も同時進行なのでとりあえずリフトアップし足廻りを分解…


内容はフルコース。
エンジン、ミッション、デフオイルにエレメント類一式、ベルトやドライヤーにLLCの交換…
下廻りの塗装も。
それに加え、エアコンプレッサー、ラジエーターホース類、サーモスタットも。


まずはオイル関係から
ミッションオイル、デフオイル、エンジンオイルを抜き取りつつ、エレメントの交換。




規定トルクで締め付け。


この6R10はダイムラー製のエンジンなんですが、エレメント類のキャップには締め付けトルクが記載されてます…
ヨーロッパメーカーに多いんですが、これはトルク管理を意識する事に繋がるので非常に良いと思いますね…

オイルパンのドレンボルトの規定トルクは70Nm
ガスケットを新品にして…


締め付け。


締めたらペイントマーキング。


エンジンオイルを入れます…
規定量は35リットル。



続いて燃料フィルターの交換…


プレフィルター、コアレスサーフィルター、ファイナルフィルターと3つの燃料フィルターが付いてます。

取り外した燃料フィルター。




新品のフィルター


ケースに組んで取り付け。






こちらも締め付けたらペイント…


更にアドブルーフィルターの交換も。





ミッション、デフオイルも抜け切った頃なのでドレンを締めてオイル注入…









ベルトも交換。
今回はオートテンショナーにガタがあり異音があった為、同時に交換。


テンショナーロックピンを入れてベルトの取り外し。


テンショナープーリーに合わせアイドルプーリーも交換…


新品のオートテンショナー。


取り付け…




ベルトも付けてこちらも完成。



お次は本題のコンプレッサー交換。
ちなみに今回はASSY交換ですが、6R10は車上でのシリンダーヘッド交換は不可の為、仮にヘッドだけ交換の場合もコンプレッサーASSYでの脱着が必要となります…

すぐ上にサプライポンプがある為スペースが無いんです…


ホースやウォーターパイプを取り外しコンプレッサー本体を止めている4本のボルトを取り外せば降りてきます…


取り外したコンプレッサーASSY。


国産メーカーのコンプレッサーです。
だったら内部部品出してくれてもいいのに…
新品ASSYは約18万しますから…

で、ギヤを新品のコンプレッサーに組み換える為に取り外し。


ちなみにこのナットは逆ネジを使用してます。

ナットを緩めてギヤの抜き取り。


テーパー嵌合なのでテンションかけてセンターボルトを叩いてやると外れます…
外れたギヤ。




新品のコンプレッサーに再利用する部品を取り付けていきます。




ギヤも取り付け…
ナットは新品に交換。




ギヤを固定するクランクシャフトにはキーも何にもありません。


このナットの締め付けは230±20Nm。




エンジン側のハウジングを綺麗に掃除して新品のOリングを入れて組み付け。
コンプレッサーの取り付けボルトは60Nmで締め付け…




ウォーターラインは新品に交換





他にもサーモスタットも交換。
取り外したサーモスタット…




新品サーモスタット。


取り付け…




アッパーホースにロアホースを交換してひと通りの作業は完了…


後は冷却水の注入です。



エンジンを始動する前に冷却系統のプレッシャーテスト…
キャップ不良でシステムの最高圧を超える圧力がかかってますから…
今回交換した箇所以外でまた漏れる再発トラブルを少しでも防ぐ為の確認です。

ラジエーターのアッパーやロアタンクのカシメなどやEGRクーラー、その他のホースからも漏れたりしないか⁉︎…を圧力をかけて点検。
このエンジンでの冷却系統にかかる最高圧でテストします。


20分後…


大丈夫そうですね…^_^

という事でエンジン始動。

コンプレッサー修理後の冷却水液面

泡立つ事も無く吹き返しもナシ…笑


暖機&エア抜きをしつつ、足廻りを組み付けて車検整備も完了。

後は試運転…


そして翌朝リザーバーとサージタンクの水量の確認と補充…
そして検査をして完了。




コレにて車検&修理は終了です。


今度空いた時間に問題のコンプレッサーを分解して詳しく調べてみる事にします…笑



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