メカニック日記

メカニックです。仕事ネタから感じた事思った事など気まぐれに更新していきます…

最近の作業…22

2018-07-28 20:14:39 | 整備

まずは以前の記事にも書いた車検で入庫していたトレーラーが整備中にフレームの亀裂が発覚した件…

とりあえず応急修理から戻って来たので引き続き継続車検の整備を行なっていきます…


こんな感じに亀裂の入っていたフレームは…





部分的に切り抜き移植されて返って来ました。


コレ補強じゃなく赤線の部分を切り抜いて同じ板厚の材料をはめ込んで溶接してあります。



でも…

メーカーとしては一度亀裂の入ったフレームは基本的には交換するそうで…

その為、今回は応急との事。


まあタンクローリなのでフレームというかドーリーASSYでの交換になるんでしょうね…



そりゃエライこっちゃ…




とりあえず車検整備の続きを…
引きずって溶けてしまっていたABSセンサーやブレーキシューも新品に交換。







無事にチェックランプも消え、過去故障コードも消去して完了。



お次はつい先日エンジンチェックランプが点灯してEGRバルブを交換したプロフィア …



またまたチェックランプが点灯したとの事で入庫…
今現在は点いていませんが…


診断機で故障コードを確認すると尿素SCRシステムでした。


下流側NOxセンサーの故障…
定番ですね…



しかしNOxセンサーってホントよく壊れますね…
その大半がセンサ部への水分付着による故障なんて話もありますが…
NOxセンサに限らず、空燃比センサやO2センサもそうですがセンサ部への水分ってNGですからね…

でもマフラー内と外気温の差で結露により発生する水分は防げませんし、エンジン制御による排気熱でその水分を早期に蒸発させる事もしてるようですが、それが上手くいってないって事なんでしょうか…
尿素SCR触媒で発生した水分は温度からも即蒸発するでしょうし…

水分による故障じゃないとしたら単なる耐久性不足とか…


まあどういう理由か定かではありませんが、とにかくよく壊れます…

イイですよ?それが数千円の物なら…

でも一個5万オーバーですから…
車によってはそれが2個も付いてる訳ですから…

今回のプロフィアは先月にもEGRの故障で15万近い部品代がかかってます…
それに加えて今回のNOxセンサ×2で10万超え…

困ったもんです…


まあ文句を言った所で直る訳では無いので交換するしかないんですけど。





ちなみにセンサーを取り外した穴から内部のDPFやSCR触媒をファイバースコープで確認…
こちらがDPF出口側…






約40万キロ走行していても、まっさらでキレイです…
これが正常な状態なんですよね。

前回書いた尿素水が混入したプロフィアのDPF状態はこんなんでしたからね…


SCR触媒出口側も正常な車両は当然ですが煤の付着はありませんが…


同じく前回のプロフィアのSCR触媒出口側はこんな状態。




それはそれとして…
NOxセンサを取り付けて完成…





その後NOxセンサがキチンと仕事をしてるか確認…
DPRを強制再生させてNOxセンサによるSCR制御に移行させます。
燃焼温度は問題なく昇温…


前後のNOxセンサは正常に機能してます…




という事でプロフィア も完了。




お次もエンジンチェックランプが点灯した…との事で入庫したPA-FK71ファイター。
おまけにエンジンに力が無いような気がするとの事。

こちらも今現在はチェックランプは消えております…


走行距離は8万キロほど…
故障コードを確認すると…


色々と入っておりますが、気になるのはDPF目詰まり…

とりあえずデータを確認するとアイドリング状態にもかかわらず、差圧は8.0kPa…

明らかに高いですね…

更に全開時は…


67kPa…‼︎‼︎⁉︎
最大値は70kPa超え…

コレは異常な差圧です…

次に差圧センサが正常かどうかを確認する為に差圧ホースのマフラー側を取り外し大気圧対大気圧の状態にしてもう一度差圧を測定すると…



差圧は1kPaに…



という事で、差圧センサは正常に反応してるようです。

なので…

これはDPF内部のふん詰まりで間違い無さそうです…

ただ、この車両も微量ながらマフラー出口からは黒煙が出るので…
恐らくフィルターは溶損しているでしょう…
DPF詰まり&溶損による排気抵抗増、その為エンジンに力が無いと感じるんだと思います。

問題は何故DPFが詰まったのか…

燃料フィルターケースからサンプルの燃料を少量抜いてみるも特に問題は無さそうでした。

個人的に気になるのはコレ。




スパレスタ…です。

いまだに多くの石油精製工場や科学薬品工場なんかでは乗入れ車両に取り付けが義務化されてる所もあるようですが…
このスパレスタはマフラーから出る火の粉を防止する為の物で…
もともとはアメリカで発生していた山火事の原因が自動車やバイクなどの内燃機関から発生した火の粉がマフラーを通り抜けた事により、火災が発生したと言われており、その火の粉の飛散を防止する事を目的として普及した…なんて話は聞いた事があります…

まあ昭和の車なら十分あり得る話だと思いますが…(特にアメ車では…)
その時代からはもう30年以上も経つんです…

そういう意味で最近の車にスパレスタが必要かどうか。


私は必要無いと思います。


だって今時の車でマフラーから火の粉が出るなんてあり得ないでしょうに…笑


もっと言えば最近のDPF付き車両のマフラーエンドにスパレスタなんかつけたら間違いなく排気抵抗の増大に繋がりますよね。
そうなると必然的にECUは正確な差圧が分からなくなってきます…
正確な差圧が分からないという事はDPFの再生制御にも関わってきて、差圧を高いと誤判定する事で無駄に再生しようとする訳です。

つまり…

百害あって一利なし…状態。


という事でこちらはDPF交換とスパレスタ撤去の見積りです…



最後は何かの部品?の製作依頼。

整備工場ですが依頼があればこんなも仕事も受けます…笑

アルミ板をレーザーで切り抜きされた板にリブを溶接して欲しいとの依頼です。



リブの位置はツラから10mmの所にという指定なのでその通りに。
リブを仮付けして溶接ビードの長さを均一にする為にマーキング。




で、本溶接。







同じ物を何個も製作…






TIG溶接もトーチを水冷にしないとアルミの連続溶接の場合、熱くてトーチを持ってられない程になります…
まあ軍手で溶接してるのがそもそもいけないんでしょうけど…

しかも最初の1個目よりも最後の方が溶接が明らかにキレイになってる…笑




最初からこのレベルで溶接出来なきゃまだまだ未熟物ですね…


あとは引き取り待ちです…




お盆休みまであと少し…



しかし暑いですねぇ…




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プロフィア …尿素水混入トラブル。2

2018-07-21 21:05:45 | 日野
前回の続きです…

サプライポンプ、DPR、尿素SCR触媒を交換してとりあえずエンジン始動出来るまでになりました…


ここから綺麗な軽油と洗浄剤を入れエンジンを回し、リターンを排出し可能な限り燃料経路の内部を洗浄していきます…


リターン燃料は全て廃棄する事になりますが、この方法が一番早くまた確実に綺麗になります…

エンジンを回しながらとりあえず100リッター程循環させた時の変化がこんな感じ…
左が新品、真ん中がサプライポンプ交換直後のリターン燃料、右が100リッター循環時のリターン燃料。


多少綺麗にはなりましたがまだまだ汚れております…

という事で更に150リッター程給油して内部の循環洗浄…


最終的にこんな感じ…
同じく一番左から新品でそれ以降のリターン燃料の色の変化です。


一番右が最終的なリターン燃料…
まあここまでキレイになればとりあえず安心でしょう…
という事でリターンホースも燃料タンクに接続し内部洗浄は完了…

で、引き続き診断機を繋ぎインジェクターの補正値を確認…


データを見ても分かる通り…

悪くは無いんです…

数値自体は…



ただ、アクセルをグンと開けた時にエンジンからカタカタ音がするんですよ…


しかも結構大きな音で…


これはパイロットやプレ噴射が上手くいってない時に発生する音で…
いわゆるノッキング音…


コモンレールのマルチ噴射は1サイクルに複数回の燃料噴射を行うんですが…
パイロット噴射に始まり、プレ噴射、メイン噴射にアフター噴射、最後にポスト噴射などなど…
これを1サイクルで行います。

メイン噴射の前に行われるパイロット噴射とプレ噴射はどちらも予備燃焼でパイロット噴射はPMをプレ噴射はNOxの発生をそれぞれ抑制する効果があり、それと合わせてディーゼル特有のノッキング音の低減効果があります…


エンジンサイズにもよりますがこのディーゼルノック音はまあまあ大きな音で、結構な騒音になるんですが…

今回はアイドリングでは気になりませんが吹かすと『カタカタカタ…』と不快な音が発生しておりました…

まあよく考えればあれだけ汚い燃料が回っていた訳ですからインジェクター内部も当然汚れているでしょう…


という事でインジェクターも交換する事にしました。




インジェクター交換時は高圧パイプも基本的には同時交換となっており交換するパイプをまとめたパイプキットの設定があります。
日野さんはこういう所が親切ですね…
マフラーのガスケットキットもそうですが、これだと発注漏れも無くなりますし頼む方も頼まれる方もミスなく効率的になります。




リビルトインジェクター…


振り分けて…



インジェクターを取り外し…


車が新しいだけあって見た目もキレイです…
が、左から順に1〜6番ですが2番の先端はリークしてる跡も見られますね…


インジェクターやパイプを取り付け…




ヘッドカバーやEGRパイプを取り付けて…
IDコードも書き換え。


エンジンを始動して確認…

無事にカタカタ音は無くなりました。

これビフォーアフターの動画を撮っておけばよかったと後悔してます…笑

それくらい劇的に静かになりました…


後はサイドバンパーやらデッキパネルやらを取り付けて…


全ての作業が完了です…

後は使っていく段階で燃料ももう少しキレイになるでしょう…




で、以前ちょっと気になっていた事…
燃料に尿素水が混入したのにセジメンタのフローセンサーが反応しなかった事がどうにも気になり…

ちょっと実験…

軽油に尿素水を入れた場合どんな状態になるのか…⁉︎

軽油と尿素水…


混ぜてみると…

尿素水を入れた時に泡が立ち、それがなかなか消えないんですよね…


当然、軽油は上部に溜まりますが下部には泡立った尿素水が…

しばらく放置しておくと泡はパチパチ弾けながら収まってきます…


落ち着くとこんな感じ。
上が軽油で下が尿素水…



もしかしたらこの泡立った状態にフローセンサーが入ると浮かなかったりするのかな…

どうなんだろ…

それはそれで今度時間見つけて試してみる事に…



しかし最近の暑さといったら異常ですね…



こんな日は早く帰りましょう…笑






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プロフィア …尿素水混入トラブル。

2018-07-14 16:49:48 | 日野

前回の記事で少し書いた燃料に尿素水が混入してトラブルとなったプロフィア …



部品も揃ってきたので作業を開始。


症状としてはマフラーから黒煙が出る…との事でしたが、診断結果としては燃料タンクにアドブルーを誤注入した結果、サプライポンプのメカニカルシールがダメージを受け燃料にエンジンオイルが混入、燃料品質が著しく低下した事によるPM過多状態からのDPF内部溶損、結果的にマフラーから黒煙が出る…という判断に行き着きました。


入庫時に採取した燃料はこんな状態…


とんでもない色をしております。

前回時に燃料タンクも新品に交換して綺麗な軽油を給油してリターン経路をタンクに戻さずタンク外に排出する方法でリターン燃料を調べてあり…

給油した燃料がこの色に対し…


リターンしてきた燃料はこんな色…


この色の変化はエンジンオイルが微量ながら混ざる事によって起こったと思われます。

燃料にエンジンオイルが混ざる可能性がある所と言えばサプライポンプ以外にはありませんよね…

という事でまずはサプライポンプから交換する事に。


特に苦労する事無く外す物さえ外せば降りてきます。
取り外す時か取り付ける時どちらでも構いませんが1番の圧縮上死点は出す必要があります…

で、ポンプを外してギヤの組み替え。






こちらはリビルトのサプライポンプ…




ギヤの取り付け…
締め付けトルクは246Nm…





で、ポンプを取り付けていきます。
まずは1番の圧縮上死点を出します…
フライホイールの1/6のマークを合わせた時のギヤケースの切り欠きとタイミングギヤの山が合っているかで1番の圧縮上死点を確認…
ヘッドカバーを取り外しておらず、サプライポンプも外れてる時はココで1番の圧縮上死点が確認出来ます。


見にくいですがハウジングに切り欠きが作ってあります…


ポンプを取り付けてポンプ側のタイミング確認も…
こちらは確認用の穴と確認用SSTがあります…


SSTが無くてもタイミングの確認は可能ですがその場合パワステポンプを取り外す必要があります…
値段も数千円なのでE13Cのポンプ交換する時はあった方がいいSSTですね…


ポンプの確認用の穴にSSTを差し込み…


奥まで入ればタイミングはオッケー。


ちなみにタイミングがズレてると奥まで入りません。


規定トルクで締め付けます。



で、なんだかんだ取り付けてサプライポンプの交換は完了…
ちなみに燃料フィルターケースも新品に交換しました。





ココから少々脱線します…笑

取り外したサプライポンプ…
返却する前にどうしても確認したいので少々分解させて頂きます。

フィードポンプ部のシールを点検します。




サプライポンプのカムシャフト部にはエンジンオイルが供給されており、フィードポンプ側にオイルが侵入しないようにシールされてます。

キレイにしてみるも明らかな損傷は無さそう…


ただ、シールの中間部分は黒ずんでます…


オイルが侵入した跡でしょうか…

更にフィードポンプ側の燃料経路を見比べてみると…


心なしか吐出側の方が黒ずんでるように見えます…


カムシャフトのシール当たり部が爪でなぞると明らかに段付き摩耗しておりました…




この摩耗も本来こんなものなのか、それとも尿素水が混入した事によるものなのか…
どうなんでしょう…
見比べた事無いから分からないな…

とは言え燃料にエンジンオイルが混入する原因となるのはココのシール不良しか無いですからね…

まあ少々納得いかない事もありますがやっぱり尿素水が混入した事によるトラブルと考えるのが自然ですかねぇ…

とりあえずサプライポンプの交換は完了…




お次はDPFの交換に移ります。
サイドバンパーやステップ、デッキパネル等を取り外し…


ややこしく見えますがコレも取り外しに苦労する事はありません…


接続されている温度センサーや差圧ホース、尿素水インジェクター、フランジを切り離し、まずはDPR ASSYを降ろします。





それから尿素SCR触媒ASSYを降ろします…







まずはDPFの分解から…
酸化触媒入口側…




反対のフィルター出口側…
煤が酷いです。


表面に溶けた様子はありませんがフィルター出口側に煤が堆積してる時点でフィルター内部の溶損か破損により煤がフィルターを通過している証拠です。

基本的にはDPFはディーゼルエンジンの規制対象となるPM(粒子状物質)より細かい目のフィルターなので通り抜ける事は物理的にありません…
まあ正確に言うとナノサイズの微粒子であるSPMは通り抜けるようですが、規制の対象とはならない程の量のようですが…
色んな文献を読んでいて興味深いのはこのSPMがフィルター表面にスートレイヤーと呼ばれる層を形成する事で元の性能から更にフィルタリング能力を高めているという事。

つまり新品のフィルターに敢えてナノサイズの煤を堆積させる事で新品時より高いフィルター性能を発揮するという事…

考えた人は天才…いや、変態ですね…笑


下の画像を見ても分かるとおりハニカム状のセルの表面だけでは無く内部にも煤が付着してるセルがいくつかあるのが見えると思いますが…


その部分は煤がフィルターを通り抜けてしまってるという事です。


更にSCR触媒の方も分解して確認すると…


SCR触媒入口側は一部溶損しておりました。



出口側も当然ですが煤で真っ黒け。


これではマフラーから黒煙が出る訳です…
更にこんな状態では触媒の機能は十分に活かせないでしょう…

排ガスの後処理機構では…
エンジンから出た排ガスは酸化触媒を通り、その後DPFでPMが捕集されます…
最初の酸化触媒は煤の燃焼を促進する為の触媒で…
そのDPFでPMを除去された排ガス中に尿素水を噴射する事で加水分解されアンモニアが生成され…
そのアンモニアがSCR触媒でNOxと化学反応を起こし無害な窒素ガスと水に還元します。
更にSCR触媒で反応しなかった余剰分のアンモニアを大気に放出するのを防ぐためにアンモニアを酸化させるアンモニアスリップ触媒が付いてます…
触媒はハニカム状のセルに用途に合わせた物質を数種類コーティングしてありますが、そのコーティングされた表面に煤が堆積すると還元作用は明らかに低下します…
ましてやDPF以降の触媒では煤が堆積する事は想定外ですからね…


こちらが新品のDPR ASSY…


前側に酸化触媒、後側にDPFが組み込まれてます…

更に追加で注文していたSCR触媒も…


こちらも前側にSCR触媒、後側はアンモニアスリップ触媒が内蔵され一体となっております。


余談ですが、この触媒2点でお値段70万超えです…(-_-;)



まずはDPRの組み立て…




ちなみにこのマフラー関係を洗浄や交換する場合に必要となるガスケットやボルト類をまとめたキットがあります…



SCR触媒も組み付けて…




各フランジのボルトは規定トルクで締め付けます…




で、まずはSCR触媒を車両に取り付け…


更にDPRも取り付けます…







と、マフラーを取り付けた所で一旦終了…


長くなるので続きは次回です。






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最近の作業…21

2018-07-03 20:46:58 | 整備

まず、前回の記事について予想を超える反響が色々とあったので誤解を防ぐ為に説明を…

環境を変えようとしているのは事実でそのように行動はしていますが、今のところまだ会社に退職の意思を示した訳ではありません。
あくまで自分の計画の話ではありますが引き継ぎなども含めて年内いっぱいは現在の職場にいる予定です。

沢山の方からコメントやメッセージにて激励や厳しいお言葉を頂き大変嬉しく思います。
ありがとうございます。

また話が進み次第ご報告しますm(_ _)m








という事でブログはまだまだ続きます。


なんだかんだでこの最近の作業シリーズも21回目…

単発でのネタにはちょっと足らないちょいネタを集めたバージョンで、題名に困らないので便利です…笑


まずは車検で入庫した1軸タンクトレーラー。


引取り時にABSのチェックランプが点灯していたのでお客様に説明してそちらも修理する方向に。


今の検査基準ではチェックランプが点灯したままでは車検に受かりませんので修理が必要です…

まあ中には見て見ぬ振りする業者もいますが…


現車はEBS対応トレーラーで、このタイプから自己診断機能が無くなり、専用の診断機が無いと故障コードすら確認出来ないみたいです。
とりあえず診断機を繋ぎ故障コードを確認…




現在故障でホイールセンサーのハーネス断線のコードが…


という事で車検整備と合わせてホイールセンサーを点検する事に。

ピットに入れ足廻りをバラし…




ホイールセンサーを見てみると…


樹脂部が溶け落ちてる…
コレはブレーキが引きずって相当な熱がかかったと思われます…

反対側は大丈夫…


片側だけ引きずったみたい。
問題は何故引きずったのか…

点検するとブレーキシューのアンカー部がガタガタ…


Cリングも摩耗はしてますがそれ以前にシューのホールド部分が広がっちゃってます…


コレ実はBPW軸のブレーキシューにはたま〜にある症状だったりします…
国産と違いシューのアンカー部が半円状になってる為、強度が弱いんでしょう…
国産みたいに固着しないというメリットはありますが円状と半円では強度に差が出るのは間違いないでしょう…

ここが広がっちゃうと残念ながらシューの再使用は不可能な為新品のブレーキシューになっちゃいます。

ベアリング類も念入りに点検…


溶けたABSセンサーは取り外し…


とりあえず部品の手配。
普通は部品商や製造メーカーに問い合わせるのがスタンダードですが…
BPWの場合車軸ナンバーからその車軸に使われてる部品の特定が簡単に出来るのでコーションプレートの確認…


ここは色塗らないで欲しいな…
色剥がすの大変だから…笑

で、My BPWからパーツナンバーを特定…


そのパーツナンバーを部品商に伝えれば部品間違いが無く確実です…

で、部品の手配も終わりシャーシブラックを塗ろうとエアブローしてると衝撃的なモノが…

初めは腐食して表面が浮いてるだけかと思ったフレームが…



よく見ると完全な亀裂…





コレは恐ろしや…
これでは車検に受かりませんので修理が必要です…
補強材を溶接するのが現実的でしょうね…
ドーリーを換える訳にはいかないでしょうし…

どちらにしてもウチでは燃料運搬用タンクローリーの溶接作業は怖くて出来ません…笑

という事でメーカーと相談。
結果が出るまで一旦作業は中止です…





お次もトレーラー。

ABSのチェックランプが点く…という事で入庫しました。

確認するとABS警告ランプとABS未接続を示すランプが同時に点灯しており…


通常ならこのように両方が同時に点灯する事ってあり得ないんです…

ABS警告ランプはABSコンピュータに電源が入る事により異常を検知して点灯しますが、逆に未接続ランプは連結時にABSコンピュータに電源が行ってない事を示すランプなんです…

つまり矛盾してる訳です…

とは言え、実はコレもたまに遭遇するトラブルで…

過去にあったケースでABSコネクタからコンピュータ間のハーネスが中途半端に切断されていた事で両方が同時に点灯してた事もありましたが…

それより更に多いケースとしてよくあるのがABSコンピュータ側コネクタの接触不良。

しかもクノールのKB4TAというタイプのABSに圧倒的に多い事例です…


ABSモジュレータ上部のカバーを外すと…


各ポートにコネクタがささっていますが…

コレ…


コネクタは接続されているように見えますが、実際にはもっと奥まで入るんです…

キチンと接続すると…


ね?笑


理由は恐らくトレーラー側で溶接作業をする時にABSコンピュータへの流電を防ぐ為にコネクタを外して溶接をするんですが…
作業が終わったあと、コネクターを接続する時の挿入が甘いんです。

おまけにこのKB4TAはコネクタが挿しづらいというのも相まってこのようなヒューマンエラーが発生してしまいます…

何らかの理由でコネクタを外した時はキチンとツメが掛かるのを確認する事で防げます。

その後は両方ともチェックランプも消えて正常になり無事終了です。





そして厄介な状態の車両が入庫…


28年式のSHプロフィア…
走行は僅か8万キロほど…

お客様曰く、マフラーから黒煙が出るようになった…との事でディーラーさんに持って行ったらしいのですが…

ディーラーから提示された修理代は驚愕の200万超え…

ビックリした担当者さんがディーラーに『どうなってるんだ⁉︎』と問い詰めたところ…
ディーラーさんからは『コレ…燃料に尿素水が混じっちゃってます…恐らく運転手さん燃料タンクに間違えて尿素水を入れちゃってますよ…』
と言われたそうで…

担当者さんが運転手さんに確認したところ2ヶ月前に燃料タンクに間違えて尿素水を入れてしまった事を認めたらしく…

担当者さんもトーンダウン…笑


ただ、自分側の責任とはいえ200万もかかる修理をすんなり通せる訳もないらしく…

本当に200万もかかるのか⁉︎
もっと安く済む方法は無いのか⁉︎

そこでウチに依頼がきた次第です。

お客様の気持ちも分かります…
いきなり200万オーバーの修理代をOKする訳にもいかないでしょうから…

ただディーラーの担当者さんから話を聞く限りだと状態はあまり芳しくないようです…

まず記録データでは排気温度が1000℃まで上がっていたらしく…
その状態でマフラー出口から黒煙が出る…というのはDPFの溶損を意味します。
通常なら黒煙であるPMはフィルターでほぼ100%捕集されますから。
その上DPFが溶ける程の温度となれば尿素SCR触媒も無事かどうか…

更に異常燃焼を起こすほどPM過多になるという事はインジェクターの噴射状態も含め燃調が良くない事は容易に想像出来ます。

問題は燃料に尿素水が混ざった事によりサプライポンプまでダメージを受けてる可能性が高い事。

基本的に尿素水優勢なら当然エンジンはストールしますが、今回はエンジンが止まるほどの量では無いけど機構に悪影響をもたらすほどの量が混入したと思われます。

運転手さんはネットで燃料タンクに尿素水を間違えて入れた場合の情報を調べた所、問題無いとの趣旨の情報を得たらしく報告しなかったらしいですが…
中には燃料に尿素水が混ざると排ガスがキレイになるなんて馬鹿げた情報もあったらしいです…笑

ネット情報を100%信じないで下さいね…
勿論、真実が書いてある事もありますが素人が適当な見解で情報を載せてる事もあるので…


ただ、個人的に1つ気になる事があり…

ドライバーさんの話だとセジメンタのウォーニングランプは点灯しなかったとの事。

これがどうにも納得いかない事なんですが…

尿素水は水に尿素を溶かした水溶液で67.5%が水で32.5%が尿素です…
つまり、7割水で3割尿素…

そんな7割水の液体が燃料に混入したのにセジメンタのフローセンサーが反応しなかったというのがどうにも腑に落ちない点でもあるんですよね…


実際に燃料を少し抜いてみるとコレですよ…


真っ黒け…
恐らくエンジンオイルが混入してます。

それからディーラーさんから預かった古いフィルターはこんな状態。


混入した尿素水が結晶化してます。

この状態から現状では尿素水が燃料に混ざった事により不具合を起こしたと考えるのが妥当です…

燃料に尿素水が混入→混ざった燃料は潤滑性が低下しサプライポンプのメカニカルシールを損傷→損傷したメカニカルシールからエンジンオイルが燃料に混入→燃料品質が著しく低下しインジェクターの機能低下→噴射状態が悪くなり排ガスが悪化→PM過多になりDPFに堆積→DPF内で異常燃焼を起こしフィルターが溶損→マフラーから黒煙が出た…

順当に考えればこんな感じでしょうか。

ディーラーさんは燃料系統の総交換とマフラーASSYの交換を提示した為200万を超える修理代になったと思われます。

ただ個人的には決して間違った見積りでは無いと思います…
後々のトラブルを考えたらその都度掛かる時間や費用を考えて全交換というのは選択肢としてはアリだと思います…

ただし、今回はお客様の要望で『何とか抑えたい。結果的にその金額になったらその時は諦める』との事なのでウチとしては出来る限り慎重に診断して少しでも費用を抑えれるよう段階的に修理を進めていく事にしました。

まず燃料があんな状態なので今現在内部に溜まってる燃料を抜き、綺麗な燃料を給油、燃料フィルターもディーラーさんでも交換したようですが、もう一度交換します。






新品のフィルター…



プレフィルターや接続されるゴムホース類も交換。




綺麗な燃料を50リッター給油して燃料のリターンホースをタンクに戻さず外部に排出…


そのままエンジンを始動してリターンの燃料の状態を点検します…




リターンしてきた燃料…


色はやはりおかしいですね…

燃料が無くなるまでエンジンを回しリターンしてきた最後の方の燃料を採取。

まずコレが給油した燃料の色。


で、こちらが戻ってきた燃料…



並べてみるとこんな感じ。


ここで綺麗な燃料がリターン側に戻ってこればという淡い期待もありましたが…
この違いからサプライポンプからのオイル混入は現在進行形と思われます。

このサイクルが繰り返され入庫時のようなドス黒い色になったんでしょう。

という事でサプライポンプの交換は必須となります…

更にマフラーから黒煙が出る時点でDPFは内部で溶損してると思われ交換が必要です。

尿素SCR触媒は分解時に内部状況を点検して判断する事に…

インジェクターの補正値は意外にも悪くはありませんでしたが、過度な期待は辞めときます。笑

なので現状サプライポンプとマフラーの交換は決定的になりました。
インジェクターはポンプ交換後洗浄剤を注入して要経過観察、尿素SCR触媒は分解時に点検といった感じ。

とりあえず部品を手配して現在作業待ちです。

今回のような燃料タンクに尿素水を間違えて入れるトラブルは遅かれ早かれ入庫するだろうと想定はしていましたが…
尿素水を間違えて燃料タンクに入れてしまった場エンジンをかけずにその場で燃料を抜き替える事。
これで損失を最小限に抑えれる上、無用なトラブルは防げます。

尿素水タンクに間違えて燃料を入れた場合も同じです。

間違ってもネットのデマ情報を信じないで下さいね…笑


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