玄関を開ければ見える山並みが教えてくれる居を移したことを
梅雨空に煙る山並みはゴトゴトと揺られ行くうちビル陰になる
山並みの裾野に伸びる建物に異国の写真重ねたりして
かぶとやまビルの向こうに見えるとき非日常が暮らしの中に在る
省みても顧みてもこの暮らし想定外と若き我言う
三角形の平らな島に生まれ育った。島を出てからも都会といえる所に住み続けてきた。山を目にするのは常に非日常のことだった。娘の住むアメリカ、イリノイ州もただ広い広い平原という感じだった。山並みの見えるところで暮らすのは初めてだ。どこに住んでいても現代は情報の格差が少なく自分がどこで暮らしているのか時々わからなくなる。まだ、東京で暮らしているような感覚に陥る時もある。そんな日常の中で山並みを見ると生活の場が移ったことを確認させられる。そして、それは新鮮な感じで嬉しい気持ちになるから不思議だ。