以下は、「ラッファー・カーブ理論」の続きです。
アーサー・B・ラッファー、ステファン・ムーア、ピーター・タナウス 『増税が国を滅ぼす』 ( p.59 )
サプライサイド経済学を実践すると、所得分布の偏りが大きくなる。これは事実である。しかし、(1) これは貧困層がより貧しくなったからではない、すべての人がよりゆたかになったからである。さらに、(2) 最富裕層への減税は最富裕層の納税割合を増やす結果をもたらす、と書かれています。
上の表は、引用文中の「表2・1」です。この表には「所得分布の推移」というタイトルがつけられています。
たしかに、この表を見ると、「すべての人がよりゆたかになった」ということがわかります。
次に、(2) サプライサイド経済学の説く減税によって、最富裕層の納税額に占める割合は増えている、という部分について考えます。
(著者も認めているように) 最富裕層に対する減税によって所得分布が「もっと」偏る以上、最富裕層の納税割合が増えるのは当然だともいえますが、
最富裕層に対する「税率」を下げたとはいえ、最富裕層の税率は「中流、下層」の税率に比べて高いはずですから、
最富裕層に対して減税したほうが
( 最富裕層のみならず )
「中流、下層の人々にとっても」利益になる
ということになります。
したがって著者の主張する (1)・(2) はともに説得的だと考えられます。したがって、富裕層に対する減税は認めてよいのではないかと思います。
■追記
全面的に書き直しました。投稿直後の訂正なので訂正部分を明示していません。
アーサー・B・ラッファー、ステファン・ムーア、ピーター・タナウス 『増税が国を滅ぼす』 ( p.59 )
「おこぼれ経済学」というのは、批判派がサプライサイド経済学に付けた名前である。彼らが解釈するサプライサイド理論の前提は、次のようなものだ――富裕層に優遇税制を適用すれば、その能力と勤勉により莫大な財を成す。社会の底辺にいる貧困層は、ほんの少しばかりそのおこぼれに与る、云々。
さらに彼らは所得格差だの所得分布だのについて論じるのだが、長くなりすぎるので、ここでは過去三〇年間の所得の推移を示す内国歳入庁(IRS、日本の国税庁に相当)のデータを掲げるにとどめたい。……(中略)……表2・1を見ると、納税者の最上位一%の所得が全所得に占める割合は、一九八〇年の九%から二〇〇五年には二一%へ、三〇年間で倍以上に増えたことがわかる。一方、下位五〇%の所得が占める割合は、約一八%から一三%に減少した。つまり所得分布の偏りは、一段と大きくなっている。富裕層はよりゆたかになっており、サプライサイド経済政策、すなわち通貨価値の維持、減税、自由貿易、移民の容認、組合の弱体化、規制緩和等々が実行されてからは、とくにその傾向が顕著に認められる。この事実を否定することはむずかしいし、実際にも私たちは否定したことはない。この現象は、アメリカだけでなく世界各国で起きている。
だがここに、忘れてはならない重要なポイントがある。所得分布の偏りが大きくなったのは、貧困層がより貧しくなったからではない、ということだ。何百万ものアメリカ人の所得は、めざましく増えている。過去二五年間に裕福になった人々の大半は、二五年前には裕福ではなく、中流の下層か貧困層に属していた(*20)。アメリカは、貧しい人々が這い上がるのを邪魔していた障害物が取り除かれ、ゆたかになる機会にあふれた社会になった。起業家精神に富む大勢の人がこのチャンスを利用し、富を築いた。これは、いかにもアメリカらしい。
重要なポイントは、もう一つある。サプライサイド経済政策では最富裕層への減税が実施されたが、その結果、税収総額に占める最富裕層の納税額の割合は、増えたということである。一九七〇年代後半以降について調べてみると、税率が段階的に半分まで引き下げられるのと並行して、最富裕層の占める割合は増えていることがわかる(図2・2)。これは、驚くべきことだ。減税によって、当初予想とは逆に、税制度はより累進的になったのである。
しかし左派は徒党を組み、高い税金によって富裕層から貧困層へ富の再配分をしようともくろんでいる。たとえばコーネル大学の経済学教授ロバート・H・フランクは、ニューヨーク・タイムズ紙の特集面に次のように書いた。
「累進税制は、金持ちに対する嫉妬とは関係がない。最富裕層は過去三〇年にわたり、所得と資産の両方について最も大きな分け前を享受してきた。富はこの層に滞留している。誰もが必要とする公共サービスのために税金を払わなければならないのなら、彼らこそ誰よりも多く負担すべきである」(*21)
でもフランク先生、富裕層はすでに誰よりも多く税金を払っている。所得税に関して言えば、税収の九七%は上位五〇%の所得層が納めているのだ。あとどれくらい増やすことをお考えなのだろうか。一〇〇%を超えるわけにはいかないことを、どうかお忘れなく。
私たちが望むのは、そういう税制ではない。金持ちを羨んだり、引きずり下ろそうとしたりするのではなく、国民の大半がよりゆたかになれるような税制を求める。ケネディ大統領はかつて次のように語った。「アメリカ人は、仲間の足を引っ張って裕福になろうとはしない。一人がゆたかになるとき、全員がゆたかになる。上げ潮はすべての船を浮かばせるのだ」(*22)。私たちはこの言葉に深く同意する。
サプライサイド経済学を実践すると、所得分布の偏りが大きくなる。これは事実である。しかし、(1) これは貧困層がより貧しくなったからではない、すべての人がよりゆたかになったからである。さらに、(2) 最富裕層への減税は最富裕層の納税割合を増やす結果をもたらす、と書かれています。
1980 | 2005 | |
---|---|---|
上位1% | 8・5% | 21・0% |
上位5% | 21・0% | 33・0% |
上位10% | 32・1% | 44・4% |
上位25% | 56・7% | 66・1% |
下位50% | 17・7% | 13・4% |
上の表は、引用文中の「表2・1」です。この表には「所得分布の推移」というタイトルがつけられています。
たしかに、この表を見ると、「すべての人がよりゆたかになった」ということがわかります。
次に、(2) サプライサイド経済学の説く減税によって、最富裕層の納税額に占める割合は増えている、という部分について考えます。
(著者も認めているように) 最富裕層に対する減税によって所得分布が「もっと」偏る以上、最富裕層の納税割合が増えるのは当然だともいえますが、
最富裕層に対する「税率」を下げたとはいえ、最富裕層の税率は「中流、下層」の税率に比べて高いはずですから、
最富裕層に対して減税したほうが
( 最富裕層のみならず )
「中流、下層の人々にとっても」利益になる
ということになります。
したがって著者の主張する (1)・(2) はともに説得的だと考えられます。したがって、富裕層に対する減税は認めてよいのではないかと思います。
■追記
全面的に書き直しました。投稿直後の訂正なので訂正部分を明示していません。
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