言語空間+備忘録

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財政改革のプロセス-政府支出の予想外の拡大の場合

2010-01-12 | 日記
井堀利宏 『日本の財政改革』 ( p.125 )

 まず最初に、政府支出の予想外の大幅な拡大を考える。たとえば、石油危機などの予想外の外的なショックに反応して、政府支出が当初の水準Aからより大きな水準Bへと増大するとしよう。もし政府支出を 「外圧」 によって増加したとすると、残された予算編成での決定変数は税率の水準である。では税率の新しい水準はどこになるだろうか。
 与党にとっては、現在より低い水準の税率が最適である。大蔵省にとっては、現在より高い水準の税率が最適である。もし両者の交渉力が同じであれば、新しい均衡での税率は両者の望ましい税率の中間の水準 ( すなわち、当初の水準とほぼ同じ大きさ ) になる。
 当初の予算編成の均衡点と比較すると、新しい予算編成の均衡点では政府支出は上昇しているが、税率はそれほど変化していない。これは、財政赤字の拡大を意味する。言い換えると、政府支出の予想外の拡大により公債が発行され、財政赤字の拡大が生じている。大蔵省にとっては税率の増加が望ましく、与党にとっては税率の減少が望ましい。その結果、両者の交渉で決定される税率はあまり変化せず、財政赤字の拡大が生じる。
 さて、このケースでの財政再建のプロセスをみておこう。もし、政府支出がBという 「外圧」 の制約から自由になり、その削減も予算編成の中で選択できるとすれば、どのように政府支出と税率は変化するだろうか。新しい予算編成の均衡点から、もとの予算編成の均衡点へと動くことになるだろう。なぜなら、大蔵省にとっては、常に政府支出の削減は望ましいし、与党にとっても、当初の均衡点レベルの税率では、政府支出のそれ以上の拡大は望ましくなく、外生的な圧力で拡大した政府支出の削減が望ましいからである。当初の税率がある程度大きいとすると、国民にとって、それほど大きな政府支出は望ましいものではない。したがって、外生的な圧力で大幅に政府支出が拡大すると、税率が軽減されない限り、そのような政府支出の拡大は、国民にとって望ましい変化ではない。可能であれば、もとの水準まで政府支出を削減する方が、国民としても望ましいのである。
 財政再建プロセスでは、政府支出は減少するが、税率はそれほど変化しない。その結果、両者の経済的な満足度=効用は増加している。逆に言うと、当初の予算編成の均衡点から新しい予算編成の均衡点への動きで、両者が損をしている以上、逆の動きでは、両者が得をするのである。財政再建は主に政府支出の削減により達成される。このような財政再建プロセスは、裁量的な増税なき財政再建と理解できるだろう。


 政府支出の予想外の拡大の場合における、財政改革のプロセスが説明されています。



 財政改革が必要とされる場合は、二通りあります。支出が増えた場合と、収入 ( 税収 ) が減った場合です。ここでは、支出が増えた場合について書かれた部分を、引用しています ( 収入が減った場合については、あとで引用します ) 。



 さて、上記説明は、きわめて説得的だと思います。

 予想外の事情によって、支出が増大した後、予想外の事情がなくなった ( 支出を増やす必要がなくなった ) 場合、悪化した財政を再建するために

  1. 増税する、
  2. 支出を減らす ( 元に戻す )

という、2 通りの選択肢がありますが、常識的に考えて、後者、すなわち支出を減らす ( 支出を元のレベルに戻す ) 道が選択されると思います。



 なお、上記引用部分は、収入 ( 税収 ) が減った場合と比較する際に、重要な意味を持ちます。そこで、税収が減った場合について書かれた部分を引用する際に、支出が増えた場合 ( 上記の場合 ) と比較するかたちで、さらに考えたいと思います。

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