藤井聡 『公共事業が日本を救う』 ( p.73 )
今から10年後には約2割、20年後には半数近くの橋が、寿命を迎えようとしている。したがって橋の補修・架け替えには莫大な予算が必要となるにもかかわらず、公共事業関係費は大幅に削減されてきている、と書かれています。
橋の補修費用が数百億円、場合によっては1000億円にもなると書かれており、ここで私は「高すぎる」と思いましたが、例として取り上げられている橋の長さは、
「Wikipedia」の「ブルックリン橋」
「Wikipedia」の「ウィリアムズバーグ橋」
です。「巨大な橋」であれば「巨額の費用」が必要になるのはあきらかですから、数百億円から1000億円もの補修費用も、妥当な金額なのかもしれません。
ここで、(1) 昨日「橋梁点検の必要性と、その実施状況」において引用した
「国土交通省」の「全地方公共団体の進捗一覧」
の表が、「橋長15m」で区切られていることから、(日本における) 橋の平均的な長さが「15m」であると仮定します。
さらに、(2) 橋の補修にかかる費用は、「長い橋」も「短い橋」も、「単位長あたりの補修費用」は橋の長さにかかわらず「ほぼ一定」であると仮定します。この場合、上記ブルックリン橋のデータをもとに計算すれば、300億円÷1834メートル=0・1636億円、ウィリアムズバーグ橋のデータをもとに計算すれば、1000億円÷2227メートル=0・4490億円、となります。どちらの橋も「吊り橋」なので金額が多めになっているはずですから、ここではとりあえず、橋の補修にかかる費用は1メートルあたり0・1億円(=1000万円)である、と考えることにします。
そうすると、(1) 日本の橋の平均的な長さは15メートルで、(2) 1メートルあたりの補修費用は0・1億円ですから、橋を1つ補修するためには1・5億円が必要だという計算になります。
したがって、
20年間でほぼ50兆円、1年あたり約2・5兆円が橋の補修のために必要、という計算です。
この計算は「きわめていいかげんな仮定」に基づいてはいるのですが、「おおよそのイメージ」はつかめると思います。
とすると、橋の補修「だけ」のために莫大な予算が必要になることから、
図9・1の (1) をご覧いただきたい。
これは、アメリカの橋がつくられた年次を示したものである。
この図に示しているように、アメリカの橋がつくられはじめたのは1920年代から1930年代頃であった。そして、アメリカの橋の老朽化が本格的に問題化し、実際に落ちる事故が多数起こりはじめたのが、1970年代から1980年代であった。つまり、橋がつくられてから、おおよそ50年が経った時代に、老朽化による「落橋」がはじまったのである。
この50年という数字は、橋の一般的な「寿命」に相当する。
(中略)
ここで、我が国の状況を見てみよう。図9・1の (2) である。
ご覧のように、日本の橋は戦後、高度成長期の1960年代にたくさんつくられ始めた。
それから50年というと、2010年頃、つまりちょうど "今" ということとなる。
(中略)
こうした日本の橋の危機は、例えば図9・2のように集計しなおしてみると、より分かりやすい。
この図は、50歳以上の "高齢化した橋" が、今後、どれくらい増えていくのかを示したグラフである。
橋の平均的な寿命は、おおよそ50年程度だと指摘したが、このことはつまり、橋は50年を経過すると "高齢化" するということを意味している。老朽化が激しくなると、補修や改修が必要になったり、場合によっては更新(つまり、架け替え)が必要になったりする。そして、そういう補修や更新をしなければ、"いつ落ちてもおかしくない" という「危険な橋」になってしまうのである。
この図は、そうした「放置しておけば、危険な橋になってしまう」という高齢化した橋が、これから20年程度で、実に約50%、全国で7万橋以上にまで上ることになるだろう、ということを示しているのである。
(中略)
例えば、事故が起こったマンハッタン島のブルックリン橋の補修のためには、その後の約20年間で約300億円もの予算がかけられている。ウィリアムズバーグ橋にいたっては、実に約1000億円もの予算がかけられている。
つまり、橋を補修するには、その橋が大規模であれば、数百億円、場合によっては1000億円以上もの予算が必要とされるのである。そして、全米にある何万、何十万という50歳以上の高齢化した橋のそれぞれを補修するためには、莫大な予算が必要とされていたのだった。
それにもかかわらず、当時のアメリカは、橋のメンテナンスのために割かれる予算が年々縮小されてきていた。この状況は、現在の日本と、極めて似た状況である。
(中略)
ここまでの議論を簡単におさらいしておこう。
高度成長期につくられた全国で数万にも及ぶ膨大な数の橋が、ちょうど今、老朽化しつつある。現時点において、推計で全国で約4000もの橋が、何らかの欠陥を抱えた状況にある。
そして、この問題は近い将来、確実に、さらに深刻化する。10年後には約2割、20年後には実に半数近くが、平均的な寿命を迎えようとしている。
(中略)
しかし、現在の日本は、ちょうどその "真逆" の議論をしている。
2008年まで、日本の道路予算は、アメリカと同様に、「ガソリン税」を基調とするものだった。しかし、2009年度以降、ガソリン税は一般財源に組み込まれることとなり、道路予算は、一般財源から捻出されることとなった。
そして、一般財源の予算配分の考え方は、2009年に民主党政権が誕生して以降、「コンクリートから人へ」を基調とするものとなった。そして、2010年度の公共事業関係の予算は、前年度からさらに大きく削られた(31ページの図8を改めてご覧いただきたい)。
こうした国の財政のありようと並行して、地方自治体の公共事業の関係費も大幅に縮減されてきている。
今から10年後には約2割、20年後には半数近くの橋が、寿命を迎えようとしている。したがって橋の補修・架け替えには莫大な予算が必要となるにもかかわらず、公共事業関係費は大幅に削減されてきている、と書かれています。
橋の補修費用が数百億円、場合によっては1000億円にもなると書かれており、ここで私は「高すぎる」と思いましたが、例として取り上げられている橋の長さは、
「Wikipedia」の「ブルックリン橋」
マンハッタン島から南東方向に向かって伸びており、マンハッタン橋と並ぶように位置している。イースト川(East River)の上に架かっており、長さは1,834m、中央径間は486m。もともとの名称は“ニューヨーク-ブルックリン橋”といった。米国でもっとも古い吊り橋の一つであり、同時に鋼鉄のワイヤーを使った世界初の吊橋でもある。
「Wikipedia」の「ウィリアムズバーグ橋」
スパンは約488m。開通当時は世界一長い吊り橋だったが、1924年にベアー・マウンテン・ブリッジに抜かれる。
全長は約2,227m。
自動車と列車の両方を通す。こうした吊り橋は、ニューヨーク市ではこの橋とマンハッタン橋だけ。
です。「巨大な橋」であれば「巨額の費用」が必要になるのはあきらかですから、数百億円から1000億円もの補修費用も、妥当な金額なのかもしれません。
ここで、(1) 昨日「橋梁点検の必要性と、その実施状況」において引用した
「国土交通省」の「全地方公共団体の進捗一覧」
の表が、「橋長15m」で区切られていることから、(日本における) 橋の平均的な長さが「15m」であると仮定します。
さらに、(2) 橋の補修にかかる費用は、「長い橋」も「短い橋」も、「単位長あたりの補修費用」は橋の長さにかかわらず「ほぼ一定」であると仮定します。この場合、上記ブルックリン橋のデータをもとに計算すれば、300億円÷1834メートル=0・1636億円、ウィリアムズバーグ橋のデータをもとに計算すれば、1000億円÷2227メートル=0・4490億円、となります。どちらの橋も「吊り橋」なので金額が多めになっているはずですから、ここではとりあえず、橋の補修にかかる費用は1メートルあたり0・1億円(=1000万円)である、と考えることにします。
そうすると、(1) 日本の橋の平均的な長さは15メートルで、(2) 1メートルあたりの補修費用は0・1億円ですから、橋を1つ補修するためには1・5億円が必要だという計算になります。
したがって、
- 現在、なんらかの欠陥を抱えていると推定される橋の数は4000橋なので、4000橋×1・5億円=6000億円。
- 10年後には約2割の橋が寿命を迎えるので、日本には合計で67万8000橋あることを考えれば、67万8000橋×0・2×1・5億円=20兆3400億円。
- 20年後には半数近くの橋が寿命を迎えるので、67万8000橋×0・5×1・5億円=50兆8500億円。
20年間でほぼ50兆円、1年あたり約2・5兆円が橋の補修のために必要、という計算です。
この計算は「きわめていいかげんな仮定」に基づいてはいるのですが、「おおよそのイメージ」はつかめると思います。
とすると、橋の補修「だけ」のために莫大な予算が必要になることから、
- そのための予算を確保するために、公共事業関係費を増額しなければならない、
- 場合によっては橋の新設は一切行わず、橋梁関係予算はすべて、橋の補修に充てるといった割り切りも必要である
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます