言語空間+備忘録

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中国の馬英九に対する敬称変化が意味するもの

2012-11-20 | 日記
産経ニュース」の「台湾・馬英九総統が国民党主席として祝電 習総書記も「馬英九主席」で返礼」( 2012.11.15 20:39 )

【台北=吉村剛史】中国の習近平総書記選出を受け、台湾の馬英九総統は15日、初めて与党・中国国民党の「主席」の立場で習総書記に宛てた祝電を送った。一方、習総書記も「馬英九主席」宛てとする返電を送った。双方がともに良好な中台関係の継続や発展に期待を寄せたものとみられる。

 2009年7月に馬総統が国民党主席に当選した際、胡錦濤国家主席は中国共産党総書記の立場で、一般的な敬称の「馬英九先生」宛てで祝電を送り、馬総統も単に「馬英九」として返電を送っていた。

 馬総統は今回の祝電で、それぞれに解釈を委ねる形で、中台が「1つの中国」を共通認識とした「92年コンセンサス」を挙げ、「(国民党と共産党の)良好な基礎の上で交流を深め、相互に窓口機関の出先事務所を置き、さらに顕著な成果を達成したい」などとし、中台関係の改善に前向きな姿勢を示した。

 一方、福建省長などを歴任し、台湾に詳しいとされる習総書記も「両岸(中台)の平和発展を推し進めて新たな成果をあげ、中華民族の良好な未来をともにつくりたい」などと返電した。




 これは「なんらかの兆候」を表していると思います。

 したがって重要性があるかもしれず、とりあえず、私の推測を書いておきます。



 中国語の「先生」は、日本語の「~さん」「~様」にあたる言葉です。したがって、上記報道によれば、

★2009年7月の馬英九当選の際には、
 中国側は台湾に「馬英九様」宛の祝電を送り、
 台湾側は中国に「馬英九」名義の返電を送ったが、

★今回の習近平選出の際には、
 台湾側は中国に「馬英九主席」名義の祝電を送り、
 中国側は台湾に「馬英九主席」宛の返電を送った、

ということになります。

 中国側が歩み寄り、台湾を尊重する形になっています。



 ここで気になるのは、「なぜ、中国側の態度が後退したのか」です。

 たんに、胡錦濤から習近平に代わったことが原因だとも考えられますが、

 就任早々、習近平が独自色を打ち出したとは考え難いように思います。中国側は基本的に集団指導体制をとっているのですから、やはりここには、「党の総意 (または雰囲気)」のようなものが存在しているのではないかと考えられます。

 軍事的にも、経済的にも、中台関係は中国優位であることは変わりないですし、その傾向は近年ますます強まっているように感じられます。とすれば、本来中国側には、台湾側に「歩み寄る」必要性はないわけです。

 それではなぜ、中国側の態度が後退したのでしょうか?



 一つの可能性は、とくに深い意味はない、というものです。つまり台湾側が「馬英九主席」名義で祝電を送ったので、中国側は「馬英九主席」宛に「そのまま返電した」というものです。

 この見かたをとる場合には、これは台湾側の仕掛けた「かけひき」の一部だということになります。

 今回、台湾の馬英九総統は「総統」名義ではなく、国民党「主席」名義で祝電を送っていますが、これは胡錦濤国家主席が「中国共産党総書記」名義で祝電を送ったことにならったものでしょう。

 つまり馬英九は、前例にならいつつも、両者ともに「国の代表」ではなく「党の代表」であると暗に主張しているわけです。そしてここには、「中台は対等である」という台湾の主張も含まれていると思います。



 しかし、「台湾の意図」はそうであるとしても、中国側には「何の意図もない」のでしょうか?

 そうかもしれませんが、そのような考えかたは不自然ではないかと思います。

 そこで問題になるのは、「中国側の意図は何か」です。



 私が思いますに、

 これはおそらく、日中間の尖閣諸島をめぐる対立が影響しているのではないでしょうか? つまりこれは中国側の「馬英九懐柔策」ではないでしょうか?

 尖閣諸島の領有権は、中国のみならず台湾も主張しています。そして中国は、日本との「話し合い」や「共同管理」を要求しています。

 もし日本側が「話し合い」に応じた場合、おそらく中国側は、「話し合い」の場に台湾も入れてはどうか、と提案してくるのではないでしょうか? 日中の2か国ではなく、日中台の3か国(または地域)で「話し合い」をすれば、1対2で中国(および台湾)側に有利になります。

 つまり中国側の返電は、尖閣諸島をめぐる日中対立を中国側有利にもっていくための「環境づくり」ではないでしょうか?



 もっとも、上記は私の「推測」にすぎませんし、本当のところはわかりません。

 日本は中国側との「話し合い」に応じる必要はないと思いますが、もし応じることを政府が考えているなら、この「1対2」問題に日本はどう対処すべきか、事前に考えておく必要があると思います。



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