言語空間+備忘録

メモ (備忘録) をつけながら、私なりの言論を形成すること (言語空間) を目指しています。

中国共産党の官僚化=エリート集団化

2010-11-13 | 日記
陳惠運・野村旗守 『中国は崩壊しない』 ( p.53 )

 〇八年七月一日、中国共産党成立八七周年の記念日に党中央組織部が発表したデータによれば、〇七年末までの全国共産党員の総数は七四一五万三〇〇〇人。国民の約二〇人に一人が共産党員である計算になる。また、〇七年一年間の新規入党者は二七八万二〇〇〇人であり、そのうち二二二万九〇〇〇人が三五歳以下だった。
 全党員のうち短大卒以上の者は三一・一%を占め、党全体の高学歴化の傾向が窺える。〇二年に五四万九〇〇〇人だった全国の大学生党員は、〇六年になると一九四万七〇〇〇人に激増した。さらに〇七年には一年間に九九万六〇〇〇人の大学生が新たに入党を果たした。
 結党当初、農民と労働者による人民統治を謳った中国共産党はどこかへ消えてしまった。階級闘争とプロレタリア独裁の理念は忘却の彼方に葬り去られ、今後は若いホワイトカラーを中心としたエリート主義集団としての色彩を強めてゆくだろうと見てまず間違いない。
 さらに、この党を下支えする青年組織が一四歳から二八歳までの「中国共産主義青年団 (共青団)」だ。党の助手と予備軍である共青団の起源は、共産党結成以前の一九二〇年八月上海で起こった社会主義青年団にはじまる。二一年の共産党創立と同時に全国展開され、その後何度かの名称変更を経て、五七年に現在の中国共産主義青年団に落ち着いた。共青団幹部を経て共産党の要職に就く者も多い。現在の国家主席・胡錦濤もこの共青団の幹部から党中央に抜擢された一人だし、その胡錦濤を指導したのが共青団総書記から共産党総書記になった胡耀邦だった。
 共産党の人材育成は小学校からはじまっている。共青団の前段階として、中学二年生までの子供たちで組織される「中国少年先鋒隊 (少先隊)」がある。共青団の団員はこの少先隊のなかから選抜される。

(中略)

 現在の中国の学校では、小学校から大学まで週に一、二時間、思想教育の時間があり、共産主義の基礎理論を学習しなければならない。また、すべての小学校では『没有共産党、就没有新中国 (共産党がなければ新しい中国もない)』という毛沢東時代の共産党賛歌が歌われているほか、歌詞の歴史的意義については中学校の歴史教科書でも教えられる。


 中国共産党は、(農民と労働者の代表としての性格を失い) エリート主義集団としての色彩を強めてゆくだろうと見てまず間違いない、と書かれています。



 小平による経済改革 (資本主義化) の結果、中国社会は事実上「共産主義を捨てた」といってよい状況になり、

 それを受けて提出された「江沢民理論=「三つの代表」論」によって、共産党の存在意義は「中国のリーダー (指導者) である」ということになりました。

 共産党の存在意義が「中国のリーダー (指導者) である」点にあるとすれば、もはや農民・労働者の代表である必要はありません。共産党がエリート集団であることこそが、重要であることになります。

 とすれば、著者が予想するとおり、中国共産党は今後、エリート主義集団としての色彩を強めてゆくだろう、と予想されます。



 中国の学校で、小学校から大学まで思想教育を行い、共産党の「素晴らしさ」を教え、かつ、「中国少年先鋒隊 (少先隊)」のなかで特に優れた者を「中国共産主義青年団 (共青団)」のメンバーに選抜し、そのなかで特に優れた者を党中央に抜擢するシステムが構築されていることは、まさにこのエリート主義集団としての中国共産党の性格からみて、理にかなっているといえます。

 もっとも、このシステムは中国共産党が官僚化してきて結果として、できあがったのではないかと思われます。すなわち、エリート主義化を図ろうとしてこのシステムが構築されたのではなく、戦後、共産主義政権が安定化してくる過程でこのシステムが発達した、とみるのが適切でしょう。この意味でも、江沢民理論=「三つの代表」論は新しい理念を提起したものではなく、たんに現状を追認し、肯定する理論 (理由づけ) を提出したものにすぎないと考えられます。



 共産党による思想教育の成果である「国民の約二〇人に一人が共産党員」という現実は、共産党が中国社会の隅々にまで滲透 (しんとう) している現実を示していると考えられます。反政府の動きなどは、ただちに党中央に報告され (て鎮圧され) るでしょう。

 学校における思想教育が行われていることもあり、反政府・反共産党の動きは、あっても小規模なものにとどまり、大規模化することはないと考えられます。

 とすれば、「中国は崩壊しない」と予想されます。

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
それでも日本は崩壊した (井上信三)
2010-11-14 19:33:27
>学校における思想教育が行われていることもあり、反政府・反共産党の動きは、あっても小規模なものにとどまり、大規模化することはないと考えられます。

 とすれば、「中国は崩壊しない」と予想されます。

 敗戦前の大日本帝国

 学校における思想教育が行われていることもあり、反政府・反国体の動きは、あっても小規模なものにとどまり、大規模化することはなかった。

 しかし、大日本帝国は崩壊しました。

 世界の歴史を振り返っても、ある1つのイデオロギーを基にした国家が永久に存在したためしはありません。

 とすれば、「中国は崩壊しない」と予想が外れる事も、当然予想されます。
返信する
Unknown (memo26)
2010-11-15 16:20:45
 その通りです。しかし、大日本帝国の崩壊は「敗戦」があったからこそ、だと思います。

 いまの中国も、戦前の大日本帝国同様、戦争に突き進んでいるとすれば、中国の「敗戦」によって中国が崩壊することはあり得ます。しかし、ここで私が述べているのは、「敗戦」のような「外部の力」によらずに、「内部の力」によっては「中国は崩壊しない」という意味であることは、あきらかだと思います。
返信する

コメントを投稿