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最高裁、更新料は有効

2011-07-17 | 日記
 最高裁は更新料の支払いを「有効」と判断したようです。

 「有効」と判断されたところで、物件が余っていることには変わりなく、新たに更新料を設定しようという動きはあまり出ていないのではないかと思います。



 この判決は弁護士にとっては、消費者金融の「過払い金バブル」が終わりつつあるなか、今度は「更新料返還請求」を次々に受任して「儲ける」道が閉ざされる可能性が高くなったことを意味します。つまり「過払い金バブル」の次に「更新料返還バブル」は起こらないだろう、ということです。

 したがって、今後、弁護士さん達の「(弁護士を含む法曹の)増員反対!」「消費者の利益を守るために法曹の質が重要!」といった主張が激しくなることも予想されます (弁護士の収入を減らさないために増員反対だとは言えないので、消費者の利益を守るために弁護士の質が重要であると主張し、増員に反対するだろう、ということです) 。



 なお、「過払い金バブル」とは、過払い金返還請求という「簡単で、儲かる」仕事が急増したことを指しています。「やや不謹慎な感のある言葉」ですが、弁護士さん達が堂々と使っておられる言葉なので、私もそのまま使用しました。



日本経済新聞」の「最高裁判決の要旨 更新料訴訟」( 2011/7/16 2:02 )

 更新料は、期間が満了し賃貸借契約を更新する際に、賃借人と賃貸人との間で授受される。賃料とともに賃貸人の事業収益の一部を構成するのが通常だ。

 更新料の支払いにより賃借人は円満に物件の使用を継続できることからすると、更新料は、賃料の補充や前払い、賃貸借契約を継続するための対価などの趣旨を含む複合的な性質を有する。支払いに経済的合理性がないということはできない。

 一定の地域で期間満了の際、賃借人が賃貸人に対し更新料を支払う例が少なからず存在することは広く知られている。これまで裁判上の和解などでも、更新料条項は公序良俗に反するなどとして当然に無効とする取り扱いはされなかった。

 更新料条項が賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載され、支払いに関する明確な合意が成立している場合に、賃借人と賃貸人との間の情報の質や交渉力に、看過し得ないほどの格差が存在するとみることもできない。

 更新料条項は、額が賃料の額や賃貸借契約が更新される期間などに照らし、高額すぎるなどの特段の事情がない限り、消費者契約法10条にいう「民法に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」には当たらない。

 更新料条項は賃貸借契約書に一義的かつ明確に記載されており、高額すぎるなど特段の事情が存在するとはいえず、消費者契約法により無効とすることはできない。




毎日jp」の「クローズアップ2011:更新料は「有効」 「契約の自由」優先」( 2011年7月16日 )

 首都圏などでマンションの借り主が支払う慣行がある「更新料」を有効とした15日の最高裁判決は「毎年家賃2カ月分」すら容認する、借り主側には厳しい内容となった。最高裁は3月、借り主の退去時に貸主が敷金から無条件に一定金額を取得できる「敷引特約」についても有効と初判断、借り主側は連敗を喫した形だ。賃貸契約を巡る同種訴訟への影響は必至なだけでなく、新たに更新料設定の動きが出てくる懸念もある。【伊藤一郎、和田武士】

 借り主、貸主双方にとって「敷引特約」を巡る訴訟は、今回の更新料訴訟の前哨戦と位置付けられた。両訴訟とも争点は共通し、契約条項が「消費者の利益を一方的に害する場合は無効」と定めた消費者契約法に触れるかどうかだった。

 3月の判決は「敷引金が(月額)賃料に比べて高すぎなければ不合理とは言えない」と述べつつ、貸主が賃料の約3・5倍の敷金を取っても有効とした。

 今回の更新料訴訟の判決も同様に「賃料の額と比べて高額かどうか」との判断の枠組みを示し、1年ごとに賃料の2カ月分を取るケースも有効とした。

 だが、いずれも「庶民感覚」からみて妥当なのか。十分に検討された形跡は見えにくく「借り主(消費者)の保護」より憲法が保障する「契約の自由」の原則を重視したとの指摘も出そうだ。

 借り主側弁護団によると、数十件起こされた敷引特約訴訟は1、2審で無効判決が相次ぎ「勝率9割だった」。更新料訴訟も1、2審判断は無効が有効を圧倒したが、最終的に貸主に軍配が上がった。

 今回、仮に最高裁が無効と判断すれば、消費者契約法が施行された01年4月以降に支払われた更新料は全て無効となり、全国で貸主への返還請求が続発する可能性があった。

 坂東俊矢・京都産業大法科大学院教授(消費者法)は「無効とした場合の混乱を回避したかったのだろうが、業界は間違っても『今まで取ってない所でも取れる』と考えてはならない」とくぎを刺す。これに対し、加藤雅信・上智大法科大学院教授(民法)は「高裁判決のように、更新料を無償として、無効とするのはビジネス界では考えがたい」と指摘する。

 京都では1、2審で無効判決が相次ぎ、貸主側が更新料抜きの契約を設ける動きも出ていた。ある貸主は「現実には借り主がどう思うかが重要。これだけ訴訟が起きること自体、時代遅れになりつつあるのかもしれない」と話した。

 ◇「礼金」訴訟でも攻防続く
 現在1、2審で審理が続いている更新料訴訟は約20件。消費者団体が賃貸会社を相手取り、更新料条項を盛り込まないよう求めた「使用差し止め訴訟」も2件あり、今回の判断が影響するのは必至だ。ただ、「1年ごとに月額賃料3カ月分」を徴収する条項の是非が争われているような訴訟でも同様の判断となるかは不透明だ。

 貸主、借り主を巡っては「礼金」の有効性を争う訴訟もあり、簡裁や地裁段階で判断が割れている。借り主側は消費者契約法に基づいて「消費者の利益を一方的に害している」と無効を主張しているが、08年の京都地裁判決は「賃料の前払いとしての性質があり、有効」と判断。逆に今年2月の東京地裁判決は「借り主側は礼金の支払いで何の対価も受けておらず、無効」としている。借り主側の弁護団は「より本格的に礼金訴訟に取り組んでいきたい」と話しており、敷引特約と更新料に続く第3弾の訴訟で双方の攻防はまだ続く。

 ◇設定に地域間格差 「居座り料」慣習が定着
 ◇首都圏・京都府は9割、北海道・中国・四国は1割未満
 更新料は地域間格差が際立つ。不動産情報サービス会社「ネクスト」(東京都)が運営する「住宅・不動産情報ポータルサイトHOME’S」が09年、賃貸仲介業者1796社を対象に行った調査では、「更新料を取っている」との回答は首都圏(東京都、千葉、埼玉、神奈川各県)で93・2%、京都府で87・0%の一方、北海道や中国、四国は1割に満たなかった。

 また、地域間で設定額に開きがあり、首都圏では月額賃料の1カ月分が9割以上だったが、京都では過半数が2カ月分と回答した。

 更新料問題に詳しい澤野順彦弁護士は「更新料は元々『居座り料』で、貸主が『このままいたいなら払いなさい』と徴収した。関東や京都ではかつて貸主の立場が強かったからこうした慣習が定着した」と解説する。

 首都圏だけで空き物件が50万件という「借り主市場」となった今も更新料の慣習は根強く残る。東京都は04年、転入者や外国人の理解を得られないとして更新料や礼金の廃止運動を始めたが、「市場原理に任せるべきだ」との関係団体の意見などで頓挫した。

 ◇全国一律規則、国に望む声も
 借り主と貸主の無用なトラブルを生まないよう国が全国一律のルールを設けるべきだとの声もある。国土交通省が業界に推奨する「標準契約書」に更新料の欄はないが、当の国交省は「判決を踏まえ、標準契約書に何を反映させるべきなのか検討したい」と述べるにとどまり、主導的に動こうとする姿勢は見られない。

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 ◇更新料訴訟を巡る判断
    判決日時     裁判所      判断

 (1)05.10.26 東京地裁     ○

 (2)06.12.19  〃       ○

 (3)08. 1.30 京都地裁     ○

 (4)09. 3.27 大津地裁     ○

 (5)    7.23 京都地裁     ●

 (6)    9.25* 〃       ●

 (7)  〃     * 〃       ●

 (8)  〃     * 〃       ●

 (9)10. 4.26 東京地裁     ●

(10)    9.10 京都地裁     ○

(11)    9.16  〃       ●

(12)   10.29  〃       ○

(13)   12.22  〃       ●

(14)11. 1.27  〃       ●

(15)    3.24  〃       ●

(16)    3.30* 〃       ●

(17)  〃     * 〃       ●

(18)09. 8.27 大阪高裁     ●((3)の2審)

(19)   10.29  〃       ○((4)の2審)

(20)10. 2.24  〃       ●((6)の2審)

(21)    5.27  〃       ●((7)の2審)

(22)11. 3.18  〃       ○((10)の2審)

(23)    4.27  〃       ●((12)の2審)

(24)    7.15 最高裁第2小法廷 ○((18)(19)(20)の上告審)

 ※○は有効、●は無効。*は同じ地裁で同日に複数事件で判決。京都地裁裁判官の調査と、被告弁護団の把握判例から作成




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