N・グレゴリー・マンキュー 『マンキュー入門経済学』 ( p.134 )
価格の下限を規制する最低賃金は、失業者を増やすので、本当に労働者の利益になるのか疑わしい、と書かれています。
引用文中の「図5-5」を次に示します。下図の **** は座標軸を示しており、xxxx は需要曲線・供給曲線を示しています。また、---- は家賃の規制価格を示しています。
★図5-5 最低賃金は労働市場にどのような影響を及ぼすか
(a) 自由労働市場
賃金
* 労働供給
* xx xx
* xx xx
* xx xx
* xx xx
均衡 * xx
賃金 * xx xx
* xx xx
* xx xx
* xx xx
* 労働需要
****************************
0 均衡雇用量 労働量
グラフの交点が(需要と供給が均衡する)均衡賃金と均衡雇用量を示しています。
(b) 拘束力をもつ最低賃金がある労働市場
賃金
* 労働余剰 労働供給
* xx (失業) xx
* xx ▼ xx
最低 *------x########x------------
賃金 * xx xx
* xx
* xx xx
* xx xx
* xx xx
* xx xx
* 労働需要
****************************
0 労働量
最低賃金は(最低賃金規制がない場合に需要と供給によって定まる)均衡賃金よりも高い、と前提されています。
上図の(b)を見ると、たしかに失業が生じています。ここで重要なのは、本来の均衡雇用量よりも雇用が減っていることです。最低賃金規制の導入によって賃金が高まり、その分、増えた労働供給の部分が失業してしまうのであればともかく、最低賃金規制がなければ、あったはずの雇用までが失われていることが、決定的に重要だと思います。
とすると、最低賃金を法で定めることは、「新たに仕事を探そうとする人々(これから大人になる子供たちも含みます)」にとっては、かえって「不利になる」ということです。
とすれば、最低賃金を法律で定めることが、本当に「労働者のためになるのか、疑わしい」といってよいと思います。
著者は(ここでは)自分の意見を述べず、たんに最低賃金規制賛成派と反対派、それぞれの主張を併記しているだけですが、
経済学者である著者は、おそらく最低賃金法には反対なのだろうと思います。
私は以前、「非正規労働者の待遇改善策」なる記事を書いていましたが、マンキューの経済学的主張を踏まえ、私は(前回の)意見を撤回します。つまり私は、最低賃金法(規制)はないほうがよい、と考えます。
最近、経済学の専門家がときどきコメントしてくださるおかげで、このブログもすこしはレベルアップし始めたようです。このところ更新が滞って(とどこおって)いましたが、今度ともよろしくお願いいたします。
■追記
グラフの表示が、環境によっては「歪む」ようです。Opera で確認したところグラフが歪んでいます。回避する方法がわからないので、グラフの形が歪んでいる場合は「おそらくこういう形だろう」と適当に判断してください。
価格の下限の重要な例として最低賃金がある。最低賃金法は、どのような雇用主でも支払わなければならない労働の最低価格を指定するものである。アメリカの議会は、最低限の適切な生活水準を労働者に保証するために、1938年の公正労働基準法ではじめて最低賃金を制定した。2002年において、連邦法では最低賃金は時給5・15ドルであり、一部の州はもっと高い最低賃金を州法で制定している。
最低賃金の効果を調べるには、労働市場を考察しなければならない。図5-5のパネル(a)は自由労働市場を示している。他のすべての市場と同じように、労働市場も需要と供給の作用に従う。労働者は労働の供給を決定し、企業は需要を決定する。政府の介入がなければ、賃金は労働需要と労働供給が釣り合うように調整される。
図5-5のパネル(b)は、最低賃金が存在するときの労働市場を示している。もし最低賃金がこの図で示されているように均衡水準よりも高ければ、労働の供給量は需要量を上回る。その結果、失業が生じる。このように、最低賃金が存在すると、仕事をもっている労働者の所得は増加するが、仕事をみつけることができない労働者の所得は減少する。
最低賃金について十分に理解するために、経済は単一の労働市場からなるのでなく、さまざまなタイプの労働者に対応する多くの労働市場からなることを覚えておこう。最低賃金の影響は労働者の熟練度と経験に依存する。熟練度の高い経験豊富な労働者は、均衡賃金が最低賃金よりもはるかに高いので影響を受けない。こうした労働者に対して、最低賃金は拘束力をもたない。
最低賃金は10代の若者の労働市場に対して最も大きい影響を与える。10代の若者は労働力のなかでも熟練と経験が最も乏しいので、均衡賃金が低くなりやすい。そのうえ、10代の若者は、しばしば実地訓練(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)と引換えに低い賃金を進んで受け入れようとする(実際、10代の若者のなかにはまったく給与を受け取らずに「研修生(インターン)」として進んで働く者もいる。しかしながら、研修生制度(インターンシップ)は無給なので、最低賃金が適用されない。もし彼らに最低賃金が適用されれば、そういう仕事は存在しなくなるだろう)。その結果、最低賃金は10代の若者の多くに対しては拘束力をもつが、その他の労働者に対してはそれほど拘束力をもたない。
多くの経済学者が、最低賃金法は10代の労働市場にどのような影響を与えるかを調べてきた。これらの研究者は、時間の経過に伴う最低賃金の変化と10代の雇用の変化とを比較している。最低賃金が雇用にどのような影響を与えるかについてはいくつかの論争があるが、代表的な研究が明らかにしたところによれば、最低賃金が10%上昇すると10代の雇用は1~3%減少する。この推定結果を解釈する際には、最低賃金の10%の上昇が10代の若者の平均賃金を10%上昇させるわけではないことに注意しよう。最低賃金を十分に上回る賃金をすでに得ている10代の若者には、法律が変わっても直接の影響はない。そのうえ、最低賃金法は完璧に守られるとは限らない。したがって、推定された1~3%の雇用の減少は重要な意味をもつのである。
最低賃金は、労働需要量を変化させるのみならず、労働供給量も変化させる。最低賃金は10代の若者が稼ぐことのできる賃金を上昇させるので、仕事を探そうとする10代の若者の数を増加させる。いくつかの研究から明らかになったところによれば、最低賃金の上昇は、どのような10代の若者が雇用されるかに影響を与える。最低賃金が上昇すると、まだ学校に通っている若者の一部が中退して仕事に就くことを選ぶ。こうした新しい中退者は、すでに学校を中退していた他の若者に取って代わるので、今度は後者が失業者となる。
最低賃金はたびたび政治的論争のトピックとなる。最低賃金に賛成する人たちは、その政策が貧しい労働者の所得を引き上げる一つの方法だと考えている。最低賃金を得ている労働者は貧しい生活水準しか達成できないという彼らの指摘は正しい。たとえば2002年の最低賃金は時給5・15ドルであり、2人の大人が最低賃金で1年間毎週40時間働いても、2万1424ドルの年間総所得しか得られなかったことになる。この額は家族所得(分布)の中位置(メディアン)の半分にも満たない。最低賃金に賛成する多くの人々は、最低賃金には失業を含むいくつかの悪い副作用が存在することを認めている。しかし彼らは、こうした影響は小さく、すべての事柄を考慮しても、最低賃金を引き上げることで貧しい人たちの暮らし向きが改善すると信じている。
最低賃金に反対する人たちは、それが貧困と闘う最善の方法ではないと主張する。彼らによれば、高い最低賃金は失業をもたらし、10代の若者が学校を中退することを促し、一部の未熟練労働者が必要な実地訓練を受けることを妨げるという。さらに最低賃金に反対する人たちは、最低賃金がその対象者のはっきりしない政策であるという点を指摘している。最低賃金労働者のすべてが、家族を貧困から脱出させようと努力している所帯主であるわけではない。実際、最低賃金を稼いでいる人のうち、所得が貧困ラインを下回る家庭の人間は3分の1未満である。彼らの多くは、余分に支出するお金が欲しくてパートタイムの仕事で働いている中流階級の家庭の若者なのである。
価格の下限を規制する最低賃金は、失業者を増やすので、本当に労働者の利益になるのか疑わしい、と書かれています。
引用文中の「図5-5」を次に示します。下図の **** は座標軸を示しており、xxxx は需要曲線・供給曲線を示しています。また、---- は家賃の規制価格を示しています。
★図5-5 最低賃金は労働市場にどのような影響を及ぼすか
(a) 自由労働市場
賃金
* 労働供給
* xx xx
* xx xx
* xx xx
* xx xx
均衡 * xx
賃金 * xx xx
* xx xx
* xx xx
* xx xx
* 労働需要
****************************
0 均衡雇用量 労働量
グラフの交点が(需要と供給が均衡する)均衡賃金と均衡雇用量を示しています。
(b) 拘束力をもつ最低賃金がある労働市場
賃金
* 労働余剰 労働供給
* xx (失業) xx
* xx ▼ xx
最低 *------x########x------------
賃金 * xx xx
* xx
* xx xx
* xx xx
* xx xx
* xx xx
* 労働需要
****************************
0 労働量
最低賃金は(最低賃金規制がない場合に需要と供給によって定まる)均衡賃金よりも高い、と前提されています。
上図の(b)を見ると、たしかに失業が生じています。ここで重要なのは、本来の均衡雇用量よりも雇用が減っていることです。最低賃金規制の導入によって賃金が高まり、その分、増えた労働供給の部分が失業してしまうのであればともかく、最低賃金規制がなければ、あったはずの雇用までが失われていることが、決定的に重要だと思います。
とすると、最低賃金を法で定めることは、「新たに仕事を探そうとする人々(これから大人になる子供たちも含みます)」にとっては、かえって「不利になる」ということです。
とすれば、最低賃金を法律で定めることが、本当に「労働者のためになるのか、疑わしい」といってよいと思います。
著者は(ここでは)自分の意見を述べず、たんに最低賃金規制賛成派と反対派、それぞれの主張を併記しているだけですが、
経済学者である著者は、おそらく最低賃金法には反対なのだろうと思います。
私は以前、「非正規労働者の待遇改善策」なる記事を書いていましたが、マンキューの経済学的主張を踏まえ、私は(前回の)意見を撤回します。つまり私は、最低賃金法(規制)はないほうがよい、と考えます。
最近、経済学の専門家がときどきコメントしてくださるおかげで、このブログもすこしはレベルアップし始めたようです。このところ更新が滞って(とどこおって)いましたが、今度ともよろしくお願いいたします。
■追記
グラフの表示が、環境によっては「歪む」ようです。Opera で確認したところグラフが歪んでいます。回避する方法がわからないので、グラフの形が歪んでいる場合は「おそらくこういう形だろう」と適当に判断してください。