言語空間+備忘録

メモ (備忘録) をつけながら、私なりの言論を形成すること (言語空間) を目指しています。

紹介屋・整理屋

2009-06-20 | 日記
門倉貴史 『貧困ビジネス』 (p.56)

「紹介屋」と呼ばれる業者も、多重債務者からお金を搾り取ることを狙っています。
「紹介屋」とは、いったいどのようなビジネスなのでしょうか。「紹介屋」は、貸金業者などが本業で、弁護士の資格を持っていないのに、借金で悩んでいる多重債務者に近づいて弁護士に紹介してやり、その紹介料として法外な料金を多重債務者に要求してくる業者のことです。多重債務者に、「相談は無料」などとうたったDMを送って、自分たちのところに相談してくるように誘導します。そして、多重債務者が相談にくると、「いい弁護士を知っている」といって弁護士に債務整理の仕事を紹介するのです。
「弁護士法」72条は、弁護士資格を持たない人が、報酬目的で法律事務に関わることを「非弁護士活動(非弁活動)」として禁止しています。また、弁護士が弁護士の資格を持っていない人から、法律事務の仕事を斡旋してもらうことも禁止されています。
 ですから、「紹介屋」や「紹介屋」から債務整理の仕事をもらっている弁護士は、弁護士法違反ということになります。
 2006年に大阪で摘発された事例では、「紹介屋」が依頼者から50万円の謝礼を受け取り、そのうち10万円が弁護士の手に渡っていたということです。
 もうひとつ、債務整理に関しては「整理屋」と呼ばれる業者の存在も知られています。「整理屋」は、弁護士の資格を持っていないにもかかわらず、報酬目的で多重債務者の依頼を受け、多重債務者の抱える借金をひとつにまとめるために債権者と交渉をします。債務整理は弁護士資格がないとできないものなので、弁護士資格のない「整理屋」は当然違法です。自分では債務整理の仕事をせずに、「整理屋」に名義だけを貸し出す「提携弁護士」もいます。「提携弁護士」は「整理屋」から顧問料を受け取っています。中には、「整理屋」から毎月100万円もの顧問料をもらっていた弁護士もいます。こうした「提携弁護士」も、弁護士法に違反する行為であることはいうまでもないでしょう。
 1990年代後半以降、「整理屋」に名義を貸す「提携弁護士」の数が増えるようになったといわれています。

(中略)

 しかも、「整理屋」は、債務整理の対価として、多重債務者に通常では考えられないような法外な金額を要求してきます。多額の報酬をもらっておきながら債務整理に手をつけなかったり、あるいは債務整理によって得られた還付金を依頼者に渡さない悪質な「整理屋」もいます。


 紹介屋と整理屋について書かれています。


 どちらも、多重債務者に対して、債務整理に関する 「ビジネス」 によって、利益を得ようとする違法行為です。

 このような業者が蔓延るのは、それだけ、ニーズがあるからです。たしかに、多重債務者にすれば、一刻も早く、借金から逃れたいだろうと考えられます。したがって、ニーズはあって当然だろうと思います。


 紹介屋・整理屋は、(多重債務者にとって) 弁護士へのアクセスが容易でないから、「ビジネス」 として成立しています。弁護士が身近であれば、なにもわざわざ、紹介屋や整理屋に頼む必要はありません。この意味で、弁護士の人数を増やす動きは、社会にとって有益だと思います。人数が増えるほど、弁護士が身近になり、敷居が低くなるからです。

 ところが、当の弁護士のなかに、弁護士増員に反対している人々がいます。おそらく、人数が増えれば、弁護士 1 人あたりの収入が減るから、それを避けようとして反対しているのだろうと思います。これでは、社会正義実現のために弁護士になったのではなく、カネ儲けのために弁護士になったのではないか、と疑われても仕方ないと思います。たしかに、「年収 200 万円以下の弁護士」 がいる現状では、弁護士増員に反対するのもわからなくはありませんが、「どんな職業であれ、年収が少ない人がいるのは当たり前」 であり、弁護士にだけは高収入を保証しろ、と言わんばかりの態度では話になりません。人数を増やす動きは、止めてはならないと思います。


 なお、「紹介屋」 から債務整理の仕事をもらっている弁護士や、「整理屋」 に名義を貸す 「提携弁護士」 は、(違法であり) 論外です。「提携弁護士」 の数が増えるようになったというのは、弁護士のモラルの低さを示しています。「ヤミ金融 (押し貸し)」 において言及した一弁の湯山孝弘弁護士も、モラルを疑われてもやむを得ないと思います。すでに書いた事柄や、お金を振り込まれた後に 「ある事柄」 を要求された、などからです (万一、湯山弁護士において反論があれば、コメントしていただければ対応します) 。

ヤミ金融 (質屋)

2009-06-20 | 日記
門倉貴史 『貧困ビジネス』 (p.51)

 さらには、「出資法」の金利規制を逃れるために、レンタル形式で取り立てを行うヤミ金融業者も出てくるようになりました。このビジネスモデルは法律の隙間をついた非常に巧妙な手口となっています。ビジネスの流れは、図表8に示したようになっています。
 ヤミ金融業者は、まず大阪や東京といった大都市の繁華街に高級時計や貴金属を取り扱うレンタル店を出します。多重債務者がレンタル店を訪れると、1日あたり3000円程度の値段で、カルティエ、ロレックスといった高級時計をレンタルします。レンタルする際には、この時計を質草にして近くの質屋でお金が借りられることを示唆します。実は、この質屋はレンタル店とグルになっています。多重債務者はなぜ一見何の変哲もないレンタル店を訪れるかといえば、レンタル店が新聞の折り込みチラシなどでお金が借りられることを示唆する微妙な文言を入れておくからです。
 多重債務者が質屋を訪れて、高級時計を質入れしてお金の借り入れを申し込むと、レンタル店とグルになっている質屋は10万円程度のお金を貸してやります。
 すると、多重債務者は、レンタル店に対しては毎日3000円のレンタル料を支払っていくことになります。また、質屋からは時計を担保にお金を借りているので、質屋に対しても法外な利息を支払っていかなくてはなりません。つまりは、二重の取り立てに苦しむことになるのです。
 ここで注意する必要があるのは、質屋は貸金業者とは異なるという点です。貸金業者の場合には、「出資法」の上限金利(年利29.2%)が適用されますが、質屋の場合には、「質屋営業法」に基づいて、最大で年利109.5%の利息を合法的にとることができてしまうのです。
 では、仮に多重債務者が利息の返済をすることができなくなって、高級時計が質流れしてしまった場合はどうなるのでしょうか。その場合、レンタル店は、多重債務者に対して高級時計の賠償金の支払いを要求してお金を取り立てます。レンタルする高級時計が安いニセモノの場合もあるのですが、多重債務者に弁償させる場合には、本物の時計の値段を提示します。
 このビジネスモデルは、レンタル店、質屋それぞれが単独に行っているビジネスを見る限り、そこに違法性は存在しません。合法的に多重債務者から暴利をむさぼることができてしまうところに恐ろしさがあります。
 2008年2月には神戸地方裁判所で、このビジネスモデルはレンタル契約ではなく、実質的な金銭消費貸借契約にあたるとして、違法性が認定されました。


 法規制を実質的に破り、暴利を得た事例が説明されています。


 その手口はきわめて巧妙です。貸金業に対する規制は厳しいので、意図的に、質屋を介在させる。「このビジネスモデルはレンタル契約ではなく、実質的な金銭消費貸借契約にあたるとして、違法性が認定され」 たのは当然ではないかと思います。

 もっとも、借りるほうも借りるほうで、相手がヤミ金融業者で、「レンタル店とグルになっている質屋」 から暴利をとられることは、承知のうえ、だとは思うのですが、借りざるを得ない事情 (借りる必要) があるのだと思います。


 ニーズがあるかぎり、このような事例はなくならない気がします。貸金業者に対する法規制が厳しくなりましたが、それは本当に、消費者の利益になっているのでしょうか。消費者金融業者 (サラ金) に対する規制を厳しくすれば、お金を借りざるを得ない人は、この種のヤミ金融業者からお金を借りざるを得なくなります。(法規制強化の意図とは逆に) 消費者の利益に反するような気がします。


 なお、この本に書かれている他の事例と比べ、上記の事例や、「ヤミ金融 (押し貸し)」 は、きわめて悪質です。だから、「ヤミ」 金融と呼ばれるのだと思います。