言語空間+備忘録

メモ (備忘録) をつけながら、私なりの言論を形成すること (言語空間) を目指しています。

ゼロゼロ物件

2009-06-15 | 日記
門倉貴史 『貧困ビジネス』 (p.27)


 1990年代に入ってからは、賃貸物件の賃貸借契約の形態が多様化しており、首都圏を中心に「敷金」や「礼金」を無料とする、いわゆる「ゼロゼロ物件」も出てくるようになりました。
「ゼロゼロ物件」が登場した当初は、「敷金」や「礼金」をとらない分、家賃が高めに設定されているというケースが多かったのですが、最近では、「敷金」「礼金」が無料である上、家賃も通常のアパートの家賃とそれほど変わらない賃貸物件も増えています。

(中略)

 しかし、「ゼロゼロ物件」をめぐっては、現在、様々なトラブルが起きているというのが実情です。
「ゼロゼロ物件」をめぐるトラブルでとくに多いのは、家賃の支払いがわずか1日遅れただけで、不動産業者から高額の違約金をとられるというものです。

(中略 留守中に鍵を付け替えられたり、夜部屋で寝ているときに業者が入ってきて着の身着のまま部屋を追い出された例が示されています)

家賃を滞納した場合、「消費者契約法」で、遅延損害金にかかる上限金利は年率14.6%と決められていますが、それを超える高額の遅延損害金をとられた人もいます。
 このように、一部の「ゼロゼロ物件」では、家賃の支払いが少し遅れただけで、部屋を閉め出され、後で高額の違約金をとられるというトラブルが増えているのです。
 なかには、家賃が滞納になることを初めから見越したうえ、高額の違約金をとって収益を上げることを狙う悪質な業者もあると聞きます。
 現行の「借地借家法」においては、正当な事由がなければ貸主は賃貸を解約することができないなど、貸主よりも借主を優先的に保護することが規定されています。なぜ貸主よりも借主のほうが優先されるかといえば、それは借主のほうが貸主よりも弱い立場にあるからです。
 しかし、「ゼロゼロ物件」では、契約書が、「借地借家法」の適用される賃貸借契約ではなく、「借地借家法」の適用されない「施設付鍵利用契約書」になっていることが少なくありません。

(中略)

 さらに最近では、家賃保証会社が「ゼロゼロ物件」を紹介する不動産会社と似た手口で部屋の鍵を付け替え、入居者を追い出す事例が増えています。
 一般に、低所得層の人たちは連帯保証人をつけることが難しいため、不動産会社に家賃保証会社を紹介してもらい、家賃保証会社が入居者との間で連帯保証人になる契約を結びます。連帯保証人になった家賃保証会社は、入居者が家賃を滞納した場合、それを肩代わりしてくれます。
 しかし、後になって家賃保証会社が法外な違約金を請求し、それが支払えないと入居者を強引に部屋から追い出してしまうことが問題になっています。家賃保証会社と入居者が結ぶのは保証契約で賃貸借契約ではないため、借地借家法が適用されず、入居者はすぐに部屋を明け渡さなくてはならなくなります。


 消費者の無知につけ込み、不法に高額な遅延損害金を請求する業者の例や、合法ではあるけれども、法の趣旨を知りながら、あえて脱法行為に及ぶ業者の手口が記されています。

 まさに、消費者 ( とくに貧困層 ) を食い物にするビジネスといえます。


 しかし、( 数万円の余裕があれば ) 消費者が不利益を受けるわけではありません。家賃の支払いが 「一日たりとも」 遅れなければ、なんの問題もなく、通常の物件より安く住めるのです。

 したがって、消費者側の対策は簡単です。要は、家賃の支払いが 「一日たりとも」 遅れない工夫をすればよいのです。具体的には、銀行に 「つねに」 数万円 ( 以上 ) を預けておき、家賃を自動引落にしてしまえばよいのです。その数万円を作るのが大変かもしれませんが、月々数万円の家賃が支払えるなら ( その程度の収入があるなら ) 、しばらく切り詰めれば、可能ではないかと思います。


 業者が悪質なのはたしかですが、それはおそらく、業者の側も追い詰められている ( 家賃を安くしないと借り手がいない ) からでしょう。逆にいえば、すこしの工夫と努力で、いままでよりも 「安く住める」 のですから、消費者にとって、これほど有利な話はありません。

貧困層の規模

2009-06-15 | 日記
門倉貴史 『貧困ビジネス』 (p.14)

 「貧困ビジネス」のターゲットとなる貧困層というのは、「ワーキングプア」や「日雇い派遣」、「生活保護受給者」、「ホームレス」、「ネットカフェ難民」、「多重債務者」といった人たちです。「ワーキングプア」であると同時に「ネットカフェ難民」の人もいますし、あるいは「ネットカフェ難民」であると同時に「多重債務者」の人もいるのですが、それぞれがどれぐらいの人数になっているかを確認しておきましょう(図表2)。

図表2 「貧困ビジネス」のターゲットになりやすい人たち
  貧困ビジネスのターゲット  人数(万人)  調査時点
  ワーキングプア(働く貧困層)  1308    07年
  短期派遣労働者(日雇いを含む) 346    07年
  生活保護受給者        157    08年7月
  ホームレス           1.85   07年
  ネットカフェ難民        0.54   07年
  多重債務者(5件以上)      97    08年9月
(出所) 総務省「就業構造基本調査」、厚生労働省資料、金融庁資料に基づき筆者作成
(引用者註: ここでは、ワーキングプアを、年収が200万円に届かないフルタイム労働者と定義しています)

(中略)

 これらすべてを含めると、「貧困ビジネス」のターゲットになる貧困層がかなりの数に上ることが分かるでしょう。

(中略)

 一方、年収が2000万円を超える高所得層は2007年で161万人となっています。

(中略)

 このように「貧困ビジネス」は、市場規模から判断する限り、すでに大きなマーケットを形成しているといえます。


 簡単のため、すべてが重複している、と考えると、1308万人の貧困層が存在している、となります。概算で、国民の 1 割、10 人に 1 人が貧困層になっている計算です。( 通常、すべてが重複していることはありえないので ) 実際には、貧困層の規模はもっと大きいはずです。

 その逆の、高所得層についてですが、年収 2000 万円が高所得なのか、かなり疑問です。けれども、この定義で計算すれば、国民の 1 パーセント、100 人に 1 人が高所得層に含まれます。( 年収 2000 万円で区切ったために ) かなり多くの人が含まれています。


 この本では、「貧困ビジネス」 は、「すでに大きなマーケットを形成している」 としています。


■追記
 引用部分に table タグを入れたところ、おかしな表示になったので、空白で区切って表を示しています。読めれば用は足りますので。