銀の砂時計

Elegant~美しい旋律に調和する良質な風景・生活空間を求めて

フランス映画「ヴィオレッタ

2014-05-21 23:00:01 | 映像空間
フランス映画「ヴィオレッタ」

渋谷イメージフォーラムで公開中のフランス映画「ヴィオレッタ」を観てきました。

写真家の母親が自分の娘のヌード写真を撮影して出版した・・・その娘こそがこの映画の監督で、実体験に基づく作品のようです。アート系の記事で映画紹介があって、偶然目にした主役の少女の表情が気になって、久しぶりに映画館へ観に行くことにしました。

渋谷にあるイメージフォーラムはミニサイズの映画館ですが、何となく居心地がいいですね。周囲の観客は「本当に映画が好き」的オーラが出ている人たちばかりで、わたしはすっかり和んでしまいました。女性客もいて安心できる空間ですね。


今回の作品、いまになって調べてみると、「ヌード」「ロリータ」云々といった切り口の紹介が多いようですが、わたしとしては「こころ」に訴えることが多い作品でした。
















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映画の導入部分では、オープニングテーマ曲がなかなかの名曲で、この曲だけでイイタイコトを感じ取ってしまった感がありました。日本で言うところの「ケンケンパ」のカットは、ブラジル CHIQUITITAS でも出てくるもので、何か意味がありそうですね。あの様子を見て、現地の人は何を感じるのでしょう?文化的な背景に興味を感じました。ここはフランス人女性に直接聞いてみたいですね。

若干ありがちな冒頭部分、少し緩慢に思えてしまう中間部の進み具合など「観に来て失敗かな?」と思わせるところがありました。映画としては、まだ粗削りな部分があるような気がします。

しかししかし・・・

娘役のアナマリア・ヴァルトロメイ、母親役のイザベル・ユペールの演技に、映画の中へ引き込まれてしまう思いがしました。ヴィオレッタは母親と一緒に過ごす時間が欲しかったのかなぁ・・・普通の女の子でありたっかたのでしょうね。ヴィオレッタの母親への思いと現実との乖離は、ひとりの少女のこころを破壊するのに充分でした。

そして最終部分。面会に来た母親から走り去るヴィオレッタの後ろ姿は、逃避というところまで行き着くしかなかったヴィオレッタの悲しみがあります。そこに存在する葛藤、孤独、悲しみの描写がオープニングテーマ曲に反映されています。同時にエヴァ監督自身が起こした母親への行動につながる背景を教えてくれたように思えました。監督はこのあたりを一番伝えたかったのかもしれませんね。


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キャスト面では、何と言ってもヴィオレッタ役のアナマリア・ヴァルトロメイが素晴らしい演技をしていますね。母親のモデルを始めたころから母親への信頼を無くした後まで、その表情の変化を見事に演じています。特に目の表情が素晴らしいです。顔立ちもとても美しく、美しさが際立っている分、ストーリーの重さがより強く伝わってきます。

全く関係ないところですが、公園でボートに乗っているシーンがありました。緑の多い公園、大きな池・・・「シベールの日曜日」に出てきたような風景にハッとしました。フランスの公園は、どこもこのような感じなのでしょうか。これも興味ありますね。

後半部分で、ヴィオレッタが「わたしのお婆ちゃんになって」みたいな話をするシーンもシベールを連想してしまいました。母親もお婆ちゃんもいない、とくにヴィオレッタのような境遇ならば、自らを温かく見守ってくれる人、安らぎを与えてくれる人を強く求めるでしょう。作品の中でヴィオレッタには「シベールの日曜日」のようなピエール的存在がありません。このような観点からも、ヴィオレッタが走り去る後ろ姿に彼女の悲しみが強調されて描かれているように思えました。

衣装もスゴイですね!70年代が見事に再現されています。子供たちの服装が70年代そのままで感心しました。あと、ヴィオレッタのクラスメイトでいつも隣に寄り添っている女の子がとても良かったです。モデルの女の子と普通の女の子という対比にもなっていて、脇役ながら味わいのある表情で気に入りました。


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ヴィオレッタ役のアナマリア・ヴァルトロメイの表情が気になり、映画館へ観に行った作品でしたが、監督の思いに考えさせられる作品でした。長く記憶に残ることになるでしょう。