評価
連合赤軍関連本7冊目は全670頁に渡る渾身のノンフィクション。1999年講談社ノンフィクション賞受賞。よど号犯リーダー田宮高麿(盛岡市生まれ)と友人だった著者が訪朝を重ね、彼らとその妻によるヨーロッパにおける日本人拉致事件の真相を暴いて行く。
よど号が北朝鮮入りするまでの過程は導入部だけで、犯人たちの主体(チュチェ)思想への転換の過程、日本人妻をむかえることになった理由、日本人妻の暗躍と拉致の具体的な手口にほとんどのページが割かれていて、時間経過に伴う犯人同士の亀裂も克明に記されている。自己批判と総括の構図が2年後(1972年)の連合赤軍による山岳ベース事件に酷似していていることが怖い。
「犯人9人中1人(吉田金太郎)が早くに死亡していた」「日本人妻のうち2人が日本から拉致された女性」との謎の解明もなされ読み応え十分。よど号犯と北朝鮮による日本人拉致事件との関係を詳細かつ体系的に明かした素晴らしい一冊!