
評価

連合赤軍関連本6冊目。
乗客131人を人質にした赤軍派によるハイジャック事件が起きたのは昭和45年3月31日。日本航空現地対策本部事務局長を務めた著者が謎の金浦空港着陸について語る。
131人の乗客の中に2人のアメリカ人がいた。どうやらそのうちの一人の神父がCIAのエージェントだったらしい。神父を北朝鮮に渡すわけには行かないアメリカはあらゆる手段をつくして、そのままよど号が北朝鮮に行くことを阻止しなければならなかった。そこで、アメリカは福岡・板付空港で時間稼ぎをして金浦空港のピョンヤン空港への偽装工作を進める。板付空港を飛び立ったよど号は「こちらピョンヤンです」という偽誘導に導かれて金浦空港に降り立ったのだった。その後数日に渡る犯人側との交渉の結果、山村運輸政務次官が身代わり人質となり乗客全員が解放され、犯人は北朝鮮入りを果たし、よど号と山村政務次官は後日帰国となる。しかし、解放され日本航空側に引き渡された乗客の中にアメリカ人神父の姿はなく、秘密裏に韓国に入国したと想像されるのだった。
私はこれまで金浦空港に降りたのは日本の公安が企てた策謀かと思っていたが、どうやら米韓の連携プレーだったようでアメリカ追随の腰抜けニッポンは蚊帳の外だったと思われる。腰抜けニッポンの様子は、犯人との交渉過程で随所に登場する。そのさいたるものは、日本のマスコミ感情は「韓国に降ろしたことで話が難しくなっている。北朝鮮も人道的見地から日本に配慮した措置を講ずると言っているのだからただちに乗客を乗せたまま北朝鮮へ向わせるべきである。」というものである。この主張は韓国の猛反対で立ち消えとなって結局は金浦空港での解放につながったのだが、呆れるばかりである。数年後から犯人の妻を使ったヨーロッパにおける日本人拉致事件が始まったことを思うと、100人以上の乗客が北朝鮮の手に渡らなくて良かったと思わざるを得ない。
「人の命は地球より重い」とお題目を唱えるだけでは国際問題は解決しないということだ。あれから日本外交は進歩しているのだろうか!?